指名の数だけにこだわる美容室経営が失敗する理由

戦略の考え方

 「指名がどれだけ取れたか」という結果だけではなく、「指名をどのように取っているか」というプロセスにも着目しないと、店舗スタッフは育ちませんし、職場のまとまりが悪くなり、退職者が相次ぐ美容室になってしまいます。

 よって、店長は店舗コンセプトを明確にするとともに、現場への興味を絶やしてはいけないと考えます。今回のコラムは、美容室で働く女性スタッフの相談を通じて、美容室経営について見ていきたいと思います。

「いやらしい」指名の取り方

 ある大型美容室で働いて3年になる20代の女性スタッフが発した以下の相談に触れる機会がありました。

 「最近、A子という美容師が入社しました。A子はカットがまだまだ未熟で、時間も掛かり、私や他スタッフの腕前の方が上であることは明らかです。

 ところが、A子が入社後、しばらくしてから、私についていた男性客2人が、電話予約の際にA子を指名するようになりました。もちろん、2人ともA子でなければできない特別なカットや施術をするわけではありません。

 さらに、新規の男性客が何名もA子を指名するようになり、彼女のスケジュールは、ほとんど男性客の予約で埋まるようになりました。予約でスケジュールが埋まっていない私や他のスタッフは、掃除や電話対応などの雑務に追われ、A子は接客が立て込むようになり、立場が逆転してしまった感じです。

 実は、A子はバストが異常に大きく、いつもそれを強調する服を着ているのですが、ある日、A子がお客様のシャンプーをしており、私が隣のシャンプー台を掃除していた時に、お客様が『A子さんオッパイ大きいね』『当たってるよ』などと低い声で言ったのです。驚いてそちらを見ると、A子がお客様の腕に自分の胸を押し付けているのです。

 それからは、A子の接客を見るともなしに見てしまいますが、男性に不自然に擦り寄って胸を当てているのです。会話内容も下ネタが多く、A子の『ヤァ~ダ~!』などという声が店内に大きく響き渡っています。

 閉店後はミーティングがあり、主な議題は、当日の指名客数やクレーム内容となっています。指名客の数はいつもA子がトップです。いつも事務室にいて、店内の状況を知らない店長は『A子さんおめでとう!みんなもがんばって!』と言います。」

 彼女は、A子のような指名の取り方はおかしい。そこで、A子の行為を店長に知らせるべきか、その場合どのように知らせるべきか、という点で悩んでおり、また、退職も視野に入れているようでした。

 このような店舗が抱える問題を考えてみたいと思います。

店舗コンセプトは何か

 この相談から伺える問題のひとつは、店舗コンセプトが不明確であることです。

 仮に店舗コンセプトが「技術力と提案力」だとしたら、スタッフは、それらを磨いて指名を取ることに注力します。スタッフは正々堂々と技術力と提案力で指名獲得の勝負をします。しかし、このコンセプトが明確でなく、とにかく指名が取れればよいとなると、A子のような指名の取り方も出てきます。

 店舗コンセプトが「お色気路線」と明確になっているのであれば、A子の指名の取り方に何ら問題はないでしょう。ですが、そのような店舗コンセプトではない、かといって明確なコンセプトもないから、既存のスタッフはA子の指名の取り方に戸惑い、自分の顧客が取られたことに反発するのでしょう。さらに、次の問題も伺えます。

問題は事務室で起きている

 前述の相談から伺える問題として、店長が現場に興味を持っていないことも挙げられるでしょう。

 かつて大ヒットした映画「踊る大捜査線 THE MOVIE」(1998年)で織田裕二扮する青島刑事は、「事件は『会議室』で起きてるんじゃない!『現場』で起きてるんだ!」と叫びました。

 確かに、この美容室での事件は現場で起きています。ですが、この美容室の問題は事務室にある可能性が高いです。店長が事務室に籠ることで、現場に興味を持てなくなっているのではないでしょうか。

 店長が常に現場に出ている必要はありません。マネジメントをする立場として、事務室でのデスクワークや各種打合せも必要です。しかし、現場があってこその売上ですから、現場に対する興味を失うことは致命的です。

 そもそも、新人スタッフが、業歴3年を超えるスタッフよりも指名を取っているという点に違和感を抱く必要があるわけで、店長として現場を活性化したいなら、新人スタッフの指名増加の要因、既存スタッフの指名低下の要因を探るのは、現場に興味があればごくごく自然に行うことでしょう。

 指名の数だけにこだわる美容室経営が失敗する理由は、結果だけに目を向け、店舗コンセプトが明確ではなかったり、管理職が現場への興味を失ったりしているため、と言えるのではないでしょうか。

 経営者としては、自社のコンセプトである経営理念の明確化とその浸透、そして、部下や現場への興味を失わないことが、上記の問題の解決に繋がる点に留意したいところです。
 参考コラム:経営理念が意味するもの

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