競争するべき相手を間違えると価格競争に陥ってしまう理由

戦略の考え方

廻らない寿司店で提供する「コト」の品質を上げる

 ある昔ながらの廻らない寿司店で食事をしたときの話です。
 カウンター席に腰掛け、1人で食事をしていたところ、何となく店主と世間話をすることとなりました。聞くと、創業して50年以上が経過し、業績が良いときもあったが、近年は近隣のスーパーが寿司を販売するようになり、業績が厳しいとのことでした。

 スーパーで提供される寿司も、廻らない寿司店で提供される寿司も、「寿司」と呼ばれます。しかし、スーパーの寿司と廻らない寿司の品質が同じであるはずがありません。当然、廻らない寿司の方が美味しいはずです。

 廻らない寿司店からスーパーに顧客が流れたとするならば、その理由は、品質に対する価格であることは自明の理でしょう。スーパーの寿司は、廻らない寿司に比べて品質は劣るものの、それを補って余りある低価格で提供しており、逆に廻らない寿司は、スーパーの寿司に比べて品質は高いものの、それを享受するには高価格なのでしょう。

 ここで検討しなければいけないのは、廻らない寿司店が提供する品質は、寿司だけではない、ということです。
 入店時の挨拶や出迎え、席へのご案内、受注、提供のタイミングの見極め、店舗スタッフとの会話などといった「コト」を提供できるのは、廻らない寿司店であり、それらの品質を磨く必要性があります。

増加するセルフサービスのガソリンスタンド

 これは、セルフサービスのガソリンスタンドに押されるフルサービスのガソリンスタンドにも言えることです。

 ガソリンスタンドの減少に歯止めが掛かっていない中、石油情報センターによると、2017年度末時点のセルフサービスのガソリンスタンドは2016年度末に比べて0.7%多い9928カ所でした。このことは、店舗スタッフが給油や窓ふきを行うフルサービスのガソリンスタンドが減少していることを意味しています。

 セルフサービスのガソリンスタンドもフルサービスのガソリンスタンドも提供するガソリンの品質に差がありません。一般にセルフサービスのガソリンスタンドはフルサービスのガソリンスタンドに比べて販売量が多いため、仕入れ値も安く、安値で販売することが可能です。よって、顧客は同じ品質なら安値で提供している店舗で購入しようとするのは当然のことです。

 しかし、フルサービスのガソリンスタンドで提供しているのは、ガソリンだけではありません。前述の廻らない寿司店同様、出迎え、挨拶、受注、給油といった「コト」を提供できるのはフルサービスのガソリンスタンドのはずです。その品質を磨かない限り、価格競争に陥り、セルフサービスのガソリンスタンドに押されることは間違いないでしょう。

 このような「コト」について、「うざい」、「大きなお世話」と呼ばれることがあります。これは、その「コト」が不要であるくらい、品質が低いからと考えられないでしょうか。「うざい」、「大きなお世話」と捉えさせられる方に問題はなかったのでしょうか。

 自店にしか提供できない「コト」の品質を上げていくことは、スーパーやセルフサービスのガソリンスタンドとの「棲み分け」になります。そして、同じ廻らない寿司店やフルサービスのガソリンスタンドの「差別化」になると言えるでしょう。

 棲み分けするべき相手と戦うと価格競争に陥ってしまいます。棲み分けするべき対象と、差別化するべき対象を見定め、差別化するべき対象が競争相手である、という認識を持つことが重要であると考えます。

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