レジ金の不足分を従業員の自腹で埋めさせる3つのリスク

モチベーション

 あるガソリンスタンドでは、従業員が顧客に釣り銭を多く渡してしまったなど、従業員のミスが原因で本来あるべきレジ金よりも、実際にあるレジ金の方が少ない場合、シフトに入っている従業員が自腹で折半して不足額を埋めています。

 同店で働く従業員から「こういう仕組みって他の店でもやっているんですか」という質問がありました。回答としてはそのような店舗はさほど多くない印象ですが、今回のコラムでは、このような仕組みを取り入れている店舗が抱えるリスクを見ていきたいと思います。

1.レジ金の不足分を従業員の自腹で埋めさせるリスク

レジ金の不足分を従業員の自腹で埋めさせるリスク(1)訴訟対応のリスク

 従業員のミスにより、レジ金があるべき金額よりも不足したということは、会社は損害を被ったことになります。そして、被った損害は賠償を求めるべきであり、従業員が不足したレジ金を折半で埋めるべき、という考え方が正しいのでしょうか。

 かつて、タンクローリーの運転手が業務中に事故を起こしたことで損害を被った雇用主が、運転手に損害賠償を請求し、訴訟になったことがあります。この裁判の最高裁判決は「損害の公平な分担という見地から、信義則上相当と認められる限度において、被用者(ここでいう運転手)に対し損害の賠償または求償を請求することができる」としました。

 そして、労働条件、業務内容、損害が発生した経緯、事前に講じていた予防策、損失のリスク回避策、といったさまざまな事情を考慮した上で、この雇用主は運転手に損害額の25%のみが請求できるとしました。

 これは、従業員の業務上のミスにより雇用主が被った損害は、お互いで公平に分担しようという考えの下、雇用主側の損害賠償額は厳しく制限されるということです。よって、従業員のミスが原因のレジ金不足分の賠償は、状況によっては認められないかもしれません。

 自分のミスならともかく、他人のミスまでも共同責任として自腹を切らされることを不服とした従業員が訴訟を起こした場合に、雇用主側としては敗訴になるリスクの他に、その対応に振り回されるリスクが発生します。

 「訴訟は費用がかかるし、アルバイトがそんなことするわけない」と思った方は、裁判費用の立替などを行う「法律扶助」という制度を知っておく必要があります。訴訟を起こしたいものの費用面で不安がある人は、この制度に基づき、法テラス(日本司法支援センター)という機関から「法律相談」「弁護士や司法書士の紹介」「裁判費用の立替」といった援助を受けることができ、訴訟を起こすハードルが低くなっている点に留意する必要があります。

レジ金の不足分を従業員の自腹で埋めさせるリスク(2)人手不足に陥るリスク

 自分のミスでもないのに、自腹を切らされた従業員は当然不満を抱きます。それは、同じフィールドで働くミスをした従業員に対してよりも、自腹を切らせるという仕組みを設けた上司や会社に不満を抱くでしょう。

 そして、不本意な仕組みがまかり通るような職場に見切りをつけて、他の職場に転職するかもしれません。今やスマートフォンを使ってその場で転職先を探す時代です。このことが、人手不足に拍車をかけるリスクを高めるのではないでしょうか。

レジ金の不足分を従業員の自腹で埋めさせるリスク(3)モチベーションが低下するリスク

 離職まで行かなかったとしても、自腹を切ってレジ金を埋める行為は、従業員のモチベーションを低下させるリスクを発生させてしまいます。

 モチベーション理論のひとつである、ハーズバーグの動機付け=衛生理論では、衛生要因が満たされていないと職務に不満足を覚え、消極的な態度が強化される、としています。この衛生要因には作業条件や労働環境が含まれ、不本意な仕組みの労働環境は、モチベーションを下げ、それが離職に結び付くというリスクを高めてしまいます。以下のコラムを参考にしてください。

 今回のコラムでは、レジ金の不足分を従業員に自腹で埋めさせる3つのリスクとして、(1)訴訟対応のリスク、(2)人手不足に陥るリスク、(3)モチベーションが低下するリスク、を挙げました。とはいえ、レジ金の不足は由々しき事態です。これを防止するためには、以下のコラムを参考にして下さい。

2.当コラムの解説動画

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