1.中古トラック販売店の経営革新計画:資金繰りを安定化させるには
一部大手企業の不正により、中古車販売業界は風評被害を受け、業績が厳しくなっていますが、かつて、ある中古トラック販売店は、経営革新計画を作成・実施することで、業績を回復させました。そこで、同社を事例として取り上げ、経営革新計画の作成方法を解説していきます。
今回は、当該計画書に記載した同社の「返済計画」について述べていきます。なお、経営革新計画の制度については以下の記事をご参照ください。
■「返済計画」の必要性
経営革新計画に盛り込む「返済計画」は、経営革新事業を実行するために必要な資金を調達し、その返済をどのように行うのかを明確にするためのものです。
返済計画の必要性は、以下の2つにまとめることができます。
- 経営革新計画の実行に必要な資金を調達するため
- 資金繰りの安定化を図るため
1つ目の「経営革新計画の実行に必要な資金を調達するため」ですが、経営革新計画に基づく事業を実行するためには、設備投資や人材育成など、多額の資金が必要になる場合があります。返済計画を作成することで、必要な資金をどのように調達するのか、その具体的な方法を明確にすることができる、という理由です。
2つ目の「資金繰りの安定化を図るため」ですが、資金繰りが悪化すると、経営の継続が困難になる可能性があり、返済計画を作成することで、資金繰りの安定化を図り、経営の継続性を高めることができる、という理由です。
このように、返済計画は経営革新計画の実行に欠かせない重要なものです。返済計画を作成する際には、以下の点に注意しましょう。
- 「売上・利益計画」と「返済計画」を連動させる
- 万が一のリスクに備えて、資金繰りに余裕を持たせる
返済計画をきちんと作成することで、経営革新計画を実行するための第一歩を踏み出すことができます。次に、具体的な「返済計画」の内容を見ていきます。
■「返済計画」の内容
同社は経営革新事業の計画期間を3年で考えましたので、3年分の資金繰り表を「返済計画」としました。なお、資金繰り表は以下のフォーマットを活用しました。
以下で各項目を解説していきます。
- 前期末現預金:前期の貸借対照表から期末の現預金の額を記載します。
- 営業:営業活動により流入を見込む現預金の額であり、各年の税引後当期利益と減価償却の合計額となります(①)。
- 投資:投資活動により流出入を見込む現預金の額であり、設備投資額と資産売却収入の合計額となります(②)。
- 財務:財務合活動により流出入を見込む現預金の額であり、新規借入額、借入金返済額、増資等の合計額となります(③)。
- 現金預金増減(①+②+③):上記①~③の合計額が各年度の現預金の増減額となります。
- 当期末現預金:前期末現預金に上記①~③の合計額を加えることによって、当期末の現預金残高を算出します。
- 期末借入金残高:上記財務活動で支払う見込の借入金返済額を前期末の借入金残高から差し引いた額となります。
そして、各項目の数値を考える際のポイントを述べていきます。
■「返済計画」のポイント
「返済計画」を立案する際のポイントは、期末現預金の額をマイナスにしないということです。資金がショートすると、仕入れや人件費などの支払いが滞り、事業活動が停止する可能性があります。また、取引先や金融機関からの信用を失い、新たな資金調達が困難になる場合もあります。
その結果、倒産に追い込まれるリスクが発生し、従業員の雇用が失われるだけでなく、会社が保有する資産が売却されるため、経営者や株主に大きな損失をもたらします。
資金ショートを防止するためには、以下の対策が有効です。
- 「売上・利益計画」と「返済計画」を連動させ、資金繰りのバランスを常に確認する
- 必要に応じて資金調達の手段を検討する
- 万が一のリスクに備えて、資金繰りに余裕を持たせる
■まとめ
経営革新計画を実行するためには、必要な資金を調達し、その返済計画を明確にする必要があります。資金繰りは、経営の根幹を成す重要なものです。資金繰りをしっかりと管理し、資金ショートを防止することで、経営の安定化と継続を図ることができます。なお、次回の記事では「行動計画」の策定について述べていきます。
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