1.高齢者の暴走事故を防ぐためにガソリンスタンドが取り組みべき施策とは?
■池袋暴走事故の賠償命令
東京・池袋で2019年に起きた乗用車の暴走事故によって、母子を亡くした遺族が損害賠償を求めた裁判で、車を運転していた飯塚幸三受刑者に約1億4千万円の支払いを命じる判決が下りました。
この事故は高齢ドライバーの事故に対する社会の関心を高めるきっかけとなりました。高齢者の運転免許証の自主返納が増加したとされるほか、政府や警察も高齢ドライバーの適性検査や制限付き免許などの導入を検討しています。また、自動ブレーキや衝突回避システムなどの安全装備の普及や、自動運転技術の開発も期待されています。
ガソリンスタンドには、多くの顧客が車で来店されます。その中には高齢のドライバーが運転するケースもあるでしょう。今回の記事では、同じような事故を防ぐためにガソリンスタンドが行うべき取組みについて紹介します。
なお、ガソリンスタンド以外の業種・業態であっても郊外に立地しており、駐車場を持っているような店舗は、多くの顧客が車で来店されます。そのようなロードサイド店舗も参考にできる内容となっています。
■父親が免許を返納したエピソード
ご高齢になっても運転免許を手放せない方は相当な数に上るのではないでしょうか。それは運転ミスによる交通事故発生の確率が高まることを意味しています。そして、そのことが他人事ではないことを私は、数年前に痛感させられました。
私の実家では、現在80歳を超えた両親が2人で暮らしていますが、私がその年に帰省した際、父親が車で駅に迎えに来てくれました。私が、父親の運転する車に乗り込み、父親の運転で駅から実家に向かう途中のことです。
前方の交差点の信号は赤でした。交差点が迫ります。しかし、父親はスピードを緩めようとしません。交差点がさらに迫ります。しかし、父親は平然と運転しており、スピードを緩めようとしないのです。
「ちょっとちょっと、信号が赤だよ!」と叫んだ私。慌ててブレーキを踏む父親、鳴り響く急ブレーキのタイヤ音。
事故がなかったのが幸いでした。聞くと信号が見えていなかったとのこと。私は免許の返納を強く勧めました。しかし、その後も父親は車を乗り続けていたそうです。
その数ヶ月後に、またしても赤信号を見落としかけたとのことで、父親はとうとう免許の返納を決意しました。それも免許の更新期限がもうすぐという後押しがあって、返納が決意できたとのことでした。
このように、なかなか免許返納に至らないのが実情なのでしょう。これを踏まえた上で、多くの方が車で来店されるガソリンスタンドが行うべき取組みを述べてみます。
■顧客に有益な情報を提供する
地域の高齢者が免許を返納するということは、ガソリンスタンドにとっては、顧客が減少する可能性をはらみます。
ですが、そのような目先の利益よりも、高齢者の運転ミスによる交通事故で絶望をもたらさないという社会的な利益を追っている店舗であることを訴求すれば、却って自店のファンが増える可能性が高まります。
具体的な例として、以下の内容を調べた上で、その情報を掲載したチラシを作成し、給油時や会計時に配布します。
- 昨今発生した交通事故の報道内容
- 高齢者の免許返納制度について
- 免許を返納するべき高齢者とそうでない高齢者
このチラシは高齢者に限らず、全ての顧客に渡すことがポイントです。その顧客から両親や祖父母にチラシが渡す可能性があるからです。
また、高齢者の運転免許返納は個人の判断や状況によって異なるものであり、一概に返納を勧めるような姿勢は慎むべきです。また、高齢者の自尊心を傷つけることにもなりかねないことを意識してチラシを作成する必要があります。その上で、実際に返納した方向けに以下の特典を提供してみてはいかがでしょうか。
■顧客が増える特典を提供する
免許を返納した高齢者に対して、ガソリンスタンドはどのような特典を提供するべきなのでしょうか。
例えば、免許を返納した高齢者に、有効期限を切ってガソリンの割引カードを発行します。ポイントは、有効期限内であれば、本人以外も使えるようにすることです。これによって、その高齢者の家族や知人にそのカードが渡れば、新規顧客が増加する可能性が高まります。
また、高齢者運転免許自主返納サポートサービス協議会や各自治体が提供しているサービスをお知らせすることも有効でしょう。
■まとめ
今回は、高齢ドライバーの事故対策について、ガソリンスタンドやロードサイド店舗が行うべき取組みを紹介しました。
高齢者の運転免許返納は、社会的な問題だけでなく、自店の顧客層にも影響を与えることです。そのため、以下の2つの方法で高齢者に対応することが重要です。
- 顧客に有益な情報を提供する
- 顧客を増やす特典を提供する
これらの方法を実践することで、高齢者の安全運転を促すとともに、自店のファンを増やすことが期待できます。ぜひ、高齢ドライバーの事故対策に取り組んでみてください。
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