老舗雑貨店の復活劇!顧客情報と不良在庫の活用で店頭活性化を実現

コラム

1.はじめに

 相次ぐ競合の進出で苦境に陥った老舗雑貨店。そんな中、同店は買い物に行きたくても行けない高齢者が入居する介護施設をターゲットに、出張販売事業に活路を見出したことを以下の記事でご紹介しました。

https://note.com/embed/notes/nf178f39ff657

  この取組みで同店の売上は向上しました。ですが、根本的な課題である店頭の活性化は解決されていませんでした。そこで、同店は顧客情報を収集・分析し、出張販売で得た収益でポイントカードシステムを導入し、既存顧客の来店頻度を高めるとともに、昭和の遺物と化した不良在庫の特売告知で、新規顧客を獲得することに成功しました。

 この記事では、同店が採ったこれらの取組みをご紹介します。

2.20対80の法則とは

 当時の同店は、顧客の固定化策として、一定金額分のレシートを集めると割引券を発行するという取組みを行っていました。ですが、この取組みは顧客のプロフィールが分からず、同店からのアプローチができませんでした。これは、マーケティング上、非常にもったいない取組みであることは、以下で説明ができます。

「素性不明なんやで」

 20対80の法則は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見し提唱しました。この法則は、「2割の要素が事象の8割を生み出している」という考え方であり、例えば2割の顧客が同店の8割の売上高を生み出しているといったことが挙げられます。

 よって、この2割の顧客のプロフィールを把握し、アプローチをして再来店率や再購買率を高めることができれば、業績は維持拡大が可能ということになります。そこで以下の取組みを実施しました。

3.ポイントカードシステムの導入

 同店は、冒頭のリンク記事で紹介した出張販売で得た収益をもとに、ポイントカードシステムを導入しました。これは、一定金額の購買ごとにポイントを差し上げ、それが貯まると割引サービスを実施するものです。

 そしてポイントカードの申し込み用紙に、顧客の氏名や連絡先を記入していただき、購買履歴などを管理することとしました。これによって、多くの売上をもたらす少数の上得意客が誰なのかが分かることになります。

「購買履歴に基づいた対応ができるんやで」

 同店は、ポイントカードシステムでデータを蓄積しはじめてから半年後に、上得意客が特定できたので、その層向けにダイレクトメールを発送しました。これによって、売上高は大きく伸長しました。

 このようにして、既存顧客の囲い込みを図っていきましたが、さらに新規顧客を獲得する手段として以下を実施しました。

4.ノスタルジーマーケティングの展開

 180年もの業歴がある同店には、多くの不良在庫がありました。例えば、ちゃぶ台、畳ほうき、アルミ製おたま、洗濯板、金属製ハエ叩き、ハエ取りリボンなどです。

「今や同店にしか売っていないものがたくさんあったんやで」

 これは、需要を精査しないまま安易に仕入れてしまい、そのままになってしまっているといった背景がありました。需要がないから不良在庫になっているわけですが、見方を変えると、需要のない商品は他店では扱っていない商品、つまり「当店にしかないもの」とも言えます。そこで、これら昭和の遺物を集客に使おうと、これら商品の特売セールを企画し、チラシを配布しました。

 最近では目にも耳にもしないそれら商品は、中高年世代の関心をくすぐることになり、セール当日は、多くの中高年が来店されました。彼らは、同店の売り場の一番奥に設置され、昭和の歌謡曲の流れる特設コーナーへ向かいました。とはいえ、どの顧客も懐かしさに誘われて来店しているわけで、それら商品を買いに来ているわけではありません。

 ですが、売り場で昔を懐かしんだ後に、他の売場で何か買っていく方がほとんどでした。つまり、昭和の遺物となった不良在庫は、集客の道具になったということです。

 このようにして、新規顧客を集客し、店頭が活性化していきました。

5.まとめ

 同店は、高齢者向け出張販売で得た収益でポイントカードシステムを導入し、顧客情報を収集・分析しました。さらに、昭和の遺物と化した不良在庫を特売することで、新規顧客を獲得し、店頭活性化に成功しました。

 この事例から、以下のような学びが得られます。

  • 顧客情報を収集・分析・活用することで、効果的なマーケティング施策を実行できる。
  • 不良在庫であっても、見方を変えればマーケティングに活用できる。
  • 中高年世代向けのノスタルジックな施策は、集客効果が高い。

 これらの知見を参考に、顧客ニーズを満たし、売上向上を目指してきましょう。

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