「暇すぎる…」と呟くだけの美容室が繁盛しない理由

経営の姿勢

1.ピンチをチャンスの材料にするために

 店舗には来客の波があります。顧客が連なるようにして来店するラッシュタイムもあれば、顧客数が少なくなって店舗に静けさが訪れるアイドルタイム。これらが相互に訪れ、1日が暮れていくわけですが、アイドルタイムの占める割合が大きくなってくると、売上も店舗の士気も下がっていきます。

 「このままじゃ食っていけない」「当店は世の中から必要とされていないのではないか」こんな思いを抱えながら、経営者は何とか客数を増やそうと手を打ちます。この場合、打ち手は少ないよりも多い方が、より効果的なものを選択できる可能性が高まります。

 今回のコラムでは、ある水族館と美容室の事例を見ながら、美容室が客数を増加させるための打ち手としてどのようなことが考えられるのかを見ていきます。

(1)その水族館の武器は…

 「なめんな。閑古鳥飼ってんだよ こっちは」

 高知県の桂浜水族館が、あるツイッターユーザーに対してこのように呟きました。これは「桂浜水族館のツイッターが『いいね』をつけてくるタイミングがやたら早い」という呟きへのリツイートです。

 さらには「誰かの『桂浜水族館 閑古鳥ってるのか』ってツイートを見た瞬間から声に出して読みたい新しい日本語『閑古鳥る』が頭の中に巣を作って居座りだしたから責任とってほしい」と呟き、くちばしがドリル状になった鳥のイラストをツイッターに公開しました。

 これがツイッターユーザーに受け、リツイートは2,000を超え、いいねは4,000を超えました(2019年5月28日10:45現在)。「なめんな。閑古鳥飼ってんだよ こっちは」というツイートは、怒っているのではなく「これがいつもの返しです」とのこと。「いいね」をつけてくるタイミングが早いのは、「常にエゴサーチしてるから」とのことです。

 桂浜水族館の素晴らしい点は、客数が少ないことを武器にしている点、エゴサーチによってその武器を使う機会を探り続けている点です。ちなみにエゴサーチとは、ネット上で自社の評価を確認するために、自社名、自社ブログ、そのURLなどで検索をすることです。そして、この情報に触れた私は、ある美容院の経営者を思い出しました。

(2)武器を手放した経営者

 ある美容室の経営者は、集客に苦しんでいました。とにかく、頭が真っ白になるくらい予約表が真っ白なわけですが、このことはご来店いただければすぐに対応できる時間帯が多いことを告知できるので、ホームページで予約情報を公開してみてはどうか、というご提案をしたことがあります。

 これに対して「わざわざガラガラな予約状況を晒し、暇な店だということを告知する必要はないでしょう」という経営者の発言がありました。桂浜水族館は、暇で暇で閑古鳥が鳴いている水族館であることを前面に出し、この美容室はそれを隠そうとしたわけです。

 この結果、前者はネット上で話題になりましたので、これから集客が見込めるかもしれませんが、後者は閑古鳥が鳴き続けることが想定されます。スマートフォンでいつでもどこでも予約ができる世の中であるにもかかわらず、暇な状況を隠すべく、ネットで予約ができないようにしてしまうと、自店のせっかくの武器を失うことになってしまいます。

(3)顧客ニーズの多様性

 重要なことは、顧客ニーズには様々なものがあるということです。急に髪を整えなければならなくなり、「そうだ、美容院に行こう!」と思い立ち、すぐに対応できる店舗に行きたいというニーズもあるはずです。予約が埋まらない美容室はそのニーズを取り込むことができるという強みがあることに留意したいところです。

 よって、集客の打ち手としては、①自店の予約状況をネットでオープンにする、②予約が埋まっていないからこそ迅速に対応できることを告知する、③予約が埋まっていなくても暇ではない(店舗の清掃、技術力の磨き上げ、情報発信などに取り組んでいる)ことを訴求する、④エゴサーチで自店の評判を掴み改善点を探る、ことが挙げられます。

 「暇すぎる…」と呟いてばかりの美容室が繁盛しない理由は、その状況を強みに転じようとせず、情報の受発信に消極的であるため、という点が挙げられます。桂浜水族館の呟きを含めた取組みは、多くの示唆に富んでいると言えるでしょう。同じように暇であっても発信する情報の内容とその活かし方によって注目度が変わるのです。

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