ガソリンスタンドの油外商品、なぜ売れない?3C分析で徹底解剖!

コラム

1.ガソリンスタンドの強みとは? ザイアンス効果の威力

 ガソリンスタンドは、ガソリンや軽油などの燃料油以外にも洗車やタイヤなど様々な油外商品を取り扱っています。しかし、カーディーラーや大手タイヤ量販店に比べて油外商品の売上が厳しいケースが多く見られます。とはいえ、ガソリンスタンドはこれら競合と比べて圧倒的に「ザイアンス効果」が高いという強みがあります。

 ザイアンス効果とは、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンス氏によって提唱された心理学的法則です。別名「単純接触効果」とも呼ばれ、その名の通り、同じ物や人に何度も触れることで、警戒心や初めに抱いていたネガティブな感情が薄れ、好意を抱きやすくなるという心理的効果のことを指します。

 ザイアンス効果の例として以下が挙げられます。

  • よく会う人や、何度も聞いている音楽は、好きになっていく。
  • 最初は苦手だった食べ物も、何度も食べているうちに好きになる。
  • 見慣れない広告も、何度も見るうちに気になってくる。

 ザイアンス効果は、人間の本能レベルで起こる効果であることが実験で証明されており、マーケティングや広告、教育など、様々な分野で活用されています。

「むったど会ってれば、好ぎになってしまうのさ」

 人は、店舗に行く際には何らかの目的を持っていくものです。例えば、カーディーラーに行く際には、車の整備や車検の依頼という目的があるはずですし、大手タイヤ量販店に行く際には、タイヤなどカー用品を購入するという目的があるはずです。

 これに対して、ガソリンスタンドへ行く目的の多くはガソリンを入れるというものですから、カーディーラーや大手タイヤ量販店に比べて来店頻度は高く、ザイアンス効果は発生しやすいと言えます。にもかかわらず、なぜ油外商品の売上は伸び悩んでいるのでしょうか?以降で3C分析の観点から、ガソリンスタンドの油外商品が売れない理由を徹底解剖します。

2.3C分析で徹底解剖! ガソリンスタンドで油外商品の売上が伸びない理由

 3C分析は、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの要素を分析することで、市場環境を把握し、マーケティング戦略や事業計画を策定するためのフレームワークです。

(1)Customer(顧客)の分析

 まず、顧客ニーズや顧客の行動を分析しますが、そもそも重点的にアプローチするべき顧客が明確になっていないケースが散見されます。ここで知っておきたいのは「20対80の法則」です。これは、自店の2割の顧客が売上の8割を占めるというものです。ガソリンスタンドの油外商品が思うように売れていかない理由として、この上得意客の管理ができていないことが挙げられます。

 ある雑貨店は、上得意客に絞ってマーケティングをするべく、ポイントカードシステムを導入しました。カード発行時には顧客の連絡先を登録していただくとともに、一定期間の購買金額で優良顧客を抽出し、ダイレクトメールの送付により成果を出しました。

「ポイントカードで得意客を特定するのさね」

 顧客層の把握方法としてRFM分析があります。これは、Recency(最新購買日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つの指標を用いて顧客を分析し、優良顧客、中核顧客、休眠顧客などに分類する手法です。

  • Recency(最新購買日): 顧客が最後に商品を購入した日。最新購買日が近いほど、顧客は商品に関心を持っている可能性が高いと考えられます。
  • Frequency(購入頻度): 顧客が過去に商品を購入した回数。購入頻度が高いほど、顧客は商品を気に入っている可能性が高いと考えられます。
  • Monetary(購入金額): 顧客が過去に商品を購入した際の一平均購入金額。購入金額が高いほど、顧客は高単価な商品を購入する傾向があると考えられます。

 ポイントカードシステムを導入して、顧客情報を収集するとともに、上記の観点から顧客をランク付けし、それに応じた取組みを行うことが効果を高めるものと考えられます。

(2)Competitor(競合)の分析

 自店の近隣に立地するカーディーラーや大手タイヤ量販店は、どういう点が自店より優れているのか、またどういう点が自店より劣っているのかを分析します。その上で、自店なりの明確な差別化ポイントを打ち出していかないと顧客は競合店で油外商品を購入してしまいます。

 あるセルフサービスのガソリンスタンドでは、一定数量のタイヤ販売ができれば、リベートがもらえる契約を仕入れ先と締結しました。そして、仕入れ先の力を借りて、近隣の大手タイヤ量販店の価格を徹底調査し、タイヤを4本購入するのであれば、自店の方が安価に買える価格設定としました。

 さらには、カーディーラーや大手タイヤ量販店にはない「顧客が給油する時間」を活用して、タイヤ空気圧点検を無料で実施し、すり減ったタイヤを見つけ出し、タイヤの販売成果に繋げていきました。

「給油のついでに空気圧をみでけるはんで便利だっきゃね」

(3)Company(自社)の分析

 自社分析の基本は、強みの洗い出しです。例えば、スタッフのスキル、店舗立地、SNSで発信する情報の質と量などが挙げられます。そのような強みを活かしていく方策を考えます。

 あるセルフサービスのガソリンスタンドでは、タイヤ販売を得意とするスタッフが存在するという強みをもっていました。そこで油外商品をあれもこれも売るのではなく、タイヤ販売に注力する方針を明確に打ち出しました。そして、タイヤの仕入れ先との連携を密にし、他店の販売施策情報、品ぞろえの見直し、効果の高いチラシなどの情報を得て、販売に活かしていきました。

「いっつも親切にしてけるはんで、タイヤ交換もお願いするがな?」

3.ガソリンスタンドの油外商品売上向上に向けた3つの戦略

 ガソリンスタンドは、ザイアンス効果という心理効果を活かせる絶好の場所であるにもかかわらず、なぜ油外商品の売上が伸び悩んでいるのでしょうか?当記事では、3C分析に基づき、その理由と解決策を整理しました。
 
 これらの戦略を実行することで、ガソリンスタンドは油外商品の売上を向上させ、収益拡大を実現することが期待できます。今回紹介した3C分析に基づいた戦略を参考に、ぜひ実践してみてください。
https://www.roadsidekeiei.jp/

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