ガソリンスタンドで顧客から感謝される店舗スタッフの特徴とは

経営の姿勢

ある雪の日の来店客

 私は21年間ガソリンスタンドの現場に身を置きましたが、当時住んでいた都内のアパートからほど近くに、たまたまガソリンスタンドがあったことが、業界入りのきっかけでした。
 アルバイトとしてそのガソリンスタンドで働くようになって4か月目と記憶していますが、その日、都内では結構な量の雪が降りました。

 店舗スタッフ全員で雪かきをする中、ある女性が徒歩でご来店されました。ガソリンスタンドに徒歩でご来店する方は、大体、トイレを借りたい方か道を聞きたい方です。
 ところが、その女性客の来店目的はそのどちらでもありませんでした。「いらっしゃいませ」と声を掛けた私に対するその女性客の第一声は「車が動かないんですけど」でした。

 聞くと、すぐそこの道ばたでエンジンが止まってしまって、どうしたらいいかわからないので、当店まで歩いてきたとのことでした。
 アルバイトとして入社4か月目の私も、どうすれば良いのか分からないので、アルバイトの先輩へこのことを伝えに行ったところ、先輩がまずその車を見に行こうと言って、その女性客、先輩、私の3名で動かなくなった車を見に行きました。
 その車は赤い乗用車でした。エンジンルームを点検した先輩は、バッテリーが劣化していることをすぐに指摘し、店舗から新品のバッテリーを持ってきて、交換しました。

 エンジンがかかり、代金を頂戴して、先輩と私で店舗に戻ろうとしたときに、その女性客が私たちに言いました。

 「ありがとうございました」

 この言葉とともにお辞儀をした女性の長い髪が下に垂れたシーンが印象的でした。この時、私は目から鱗が落ちた気がしたものです。というのも、店舗スタッフが顧客にお礼を言うことはあっても、その逆はないと思っていたからです。
 そしてその女性客からお礼を言われた先輩が羨ましく、先輩と同じユニフォームを着てその場にいた自分もなんだか誇らしかったことを覚えています。

顧客からの感謝の言葉

 その後、私はご縁があって同業他社へ就職することとなるのですが、雪の日に顧客から感謝の言葉をいただいたあの先輩のようになりたいという気持ちはずっと持っていたつもりでした。
 しかし、気が付くとガソリン販売量の確保や、油外商品の販売など売上に追われる日々に陥り、顧客から感謝の言葉をいただくことは少なくなってしまいました。
 そして、店長になると、現場の最前線から徐々に離れていくわけで、余計に顧客からの感謝の言葉から遠ざかることになります。

 初心忘るべからず、と言いますが、私がガソリンスタンドで働こうと思った理由の1つに「雪の日に発せられた女性客の『ありがとう』」があります。ところが日々の仕事に流されて、そのような気持ちが薄れ、売上至上主義に陥っていたのです。

 ある日、そんなことに気付いた私が、自店スタッフの働きぶりを改めて見ていると、顧客から「ありがとう」と言われることの多いスタッフは、自分から「ありがとう」と言う回数が明らかに多いことに気付きました。 
 花が好きな人は自室にたくさんの花を飾り、花に囲まれた生活を送ります。本が好きな人は自室に大量の本があり、本に囲まれた生活を送ります。「ありがとう」と言われる人は「ありがとう」と言う。つまり「ありがとう」に囲まれているのです。

 顧客は店舗スタッフに感謝の念を抱くから購入しますし、リピーターになってくれるはずです。顧客に感謝の念を抱いていただくには、店舗スタッフ自身が感謝の念を抱かなければならないことに気付かなければいけません。
 そして、現場の最前線で働く店舗スタッフに感謝の念を抱く経営者の会社・店長の店舗こそ、顧客から感謝され、支持されるのだと思います。
 【参考記事】油外商品で稼ぐガソリンスタンドが意識しているキーワードとは

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