閉鎖が噂されている店舗への異動を発令する際の注意点

経営の姿勢

PPMの留意点

 かつて「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」という考え方をご紹介しました。
 【参考記事】自社の方向性を決めるための考え方

 PPMは、縦軸に市場成長率の高低、横軸に相対的市場占有率の高低をとって4つの象限を作成し、自社が展開する事業を当てはめていき、今後の全社的な事業展開を検討するための考え方です。この4つの象限の中で、市場成長率が低く、相対的市場占有率も低い象限を「負け犬」と呼び、この象限に分類された事業は、基本的に撤退・売却・縮小を検討します。

 この「負け犬」に分類された事業に携わる従業者は、モラールが低下する可能性があります。しかし、「負け犬」に分類された事業は、競争が激しくないことから、多額の広告宣伝費の必要性は高くなく、残存者利益を得る可能性もあります。

自分を鼓舞するのは自分しかいない

 私が、首都圏に約40のガソリンスタンドを展開する企業に勤務していた頃、私はこの「負け犬」に分類された店舗に配属されたことがありました。この店舗は老朽化が進んでおり、過去4年以上、どんな店長が配属されても黒字になることがなかった店舗でした。

 私がその店舗に配属された理由が明確に示されなかったことも相まって、私のモラールは大きく低下し、毎日ため息をつきながら、会社を辞めることばかり考えて仕事をしていました。

 そんな中、今でも覚えていますが、2001年3月30日、その日は偶然に給油客が重なる時間帯が長引き、店舗は珍しく混雑していました。やる気のない私も、店頭で忙しく立ち働いていました。
 そのような状況で、店頭のレジに準備していた釣り銭のうち10円玉が切れたため、私は事務所内の金庫にストックされている10円玉を取りに行きました。

 金庫の鍵を開けようとしゃがんだ時のことです。その日はずっと忙しく店内を走り回っていた私は、しゃがんだ瞬間、いつにも増して大きなため息が出ました。そしてふと、「自分は、いつまでため息をついて働くのだろう」と思いました。

 その後、閉店時刻を迎え、自家用車で帰途についた私は、「いつまでため息をついて働くのだろう」と改めて思いました。
 そして、ため息をつきながら働くのはもう嫌なので会社を辞めよう、と思いました。しかし、それと同時に、今、会社を辞めたら経営陣は大喜びするだろうな、とも思いました。

 よし、会社は辞める。ただし、辞める際に経営陣から「三上、辞めないでくれ」と言わせたい。これまで培ったガソリンスタンド人生の全てをかけて、業績を向上させて、ギャフンと言わせてやる。

 このように考えた私は、翌日からそれこそ、死ぬ気で働きました。
 客数減少に悩むガソリンスタンドが利益を出すにはガソリン以外の商品である油外商品を販売することが得策です。当時、私が勤務していた店舗は、私を除くと、ほぼ全員が新人のアルバイトさんでしたので、彼らに油外商品の販売は期待できません。給油作業すらおぼつかない方がほとんどでした。私が売るしかないのです。

 そこで、出迎え~受注~給油開始の役割を担当するスタッフ、給油中に窓ふきと車内のゴミ片付けを申し出る役割を担当するスタッフ、給油終了~会計~お見送りの役割を担当するスタッフに分けました。
 その上で、私が店舗の状況を見て、どの車両にどのスタッフがどのタイミングで駆け寄って役割を果たすべきか、都度指示を出しつつ、給油作業から離れ、油外販売に集中しました。
 当時の私は、ガソリンスタンドでの業歴は約13年でしたが、13年間で培った全ての知識・技術を総動員して、ひとり油外商品を売り続けました。

 この結果、私が配属されたこの店舗は約4年ぶりの黒字となり、それは私がこの店舗を離れるまで続きました。

鼓舞することを支援する

 「死ぬ気で働け」と従業員を鼓舞する経営者がいます。もし、当時の私がそのようなことを言われていたとしても、死ぬ気で働かなかった、というか、働けなかったと思います。自分を鼓舞できるのは自分自身だからです。

 ただし、経営者は、店長を鼓舞する支援はできるはずです。今回の事例で言えば、PPM上の「負け犬」に分類された店舗へ異動となった理由は何なのか、その上で、会社としてその店長に何を期待するのか、を懇切丁寧に説明することです。

 人間は、期待に応えようとする生き物です。よって、期待が示されない、もしくは期待されていないと解釈してしまうと、モラールはどんどん下がっていきます。
 複数店舗を展開していると、業績が低迷している店舗や小規模な店舗の店長を誰かがやらなければなりません。業績が低迷している店舗へ人事異動を発令する際には、その人事異動の理由と期待を示すことが注意点と言えるでしょう。

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