「誰に」「何を」「どのように」を決める

コラム

自社の事業領域

 昨日のコラムで「お客様の声」の重要性を述べました。「お客様の声」を集めていくと顧客ニーズを把握することが可能となります。

 しかし、顧客ニーズは多様化しており、全ての顧客ニーズに応えていくことは、現実的ではないとも言えます。そこで、ターゲットを絞り、自店のターゲットのニーズに応えることが重要となってきます。

 経営学では、自社の事業領域として「誰に」「何を」「どのように」提供するか、を定めることが重要とされています。ターゲットを絞るということは、「誰に」を決めるということですが、併せて顧客ニーズである「何を」、自店の差別的優位性を活かした「どのように」も定めて事業領域を明確にしていきます。

差別化できない事業領域の例

 弊社が、居酒屋の創業希望者をご支援した際の話です。この方は、居酒屋のチェーン店に長年勤務し、厨房からホール、店舗のマネジメントまで経験されていました。早期退職制度を利用して得た退職金を使って、居酒屋を創業したいというご相談でした。

 そこで、開店したい居酒屋の事業領域を伺うと、

 「誰に」:会社帰りのサラリーマン
 「何を」:美味しい海産物メインの料理とお酒
 「どのように」:純和風の店内で

 というものでした。では、出店候補地に会社帰りのサラリーマンをターゲットとした、美味しい海産物メインの料理とお酒を提供する純和風の居酒屋があるかというと、たくさんあるわけです。これでは、他店との差別化ができず、競争に敗れてしまう可能性が高いのです。

差別化した事業領域の例

 そこで、この創業希望者の強みを検証していったところ、
 ・厨房の仕事、特に海産物をさばくことが得意である
 ・仕入が不安定な海産物であるイカの仕入れ先を多数知っている
 ・それにより、安定的にイカを仕入れることが可能である
 といったことが分かりました。そして、新鮮なイカは、歯が丈夫ではない方でもサクサク食べることができることも分かりました。

 これらを踏まえ、以下の事業領域を定めました。

 「誰に」:歯の衰えた高齢者
 「何を」:新鮮なイカを通じた食の喜び
 「どのように」:水槽からすくったイカを顧客の目の前でさばく

 このような事業領域を設定している店舗は出店候補地にはありませんでした。この事業領域を元に、事業計画を立案し、開店したこの店舗は、創業者である店長とアルバイト2名で初年度に3,000万円を売り上げます。

 通常、ロードサイド店は不特定多数の顧客が来店しますが、全ての顧客のニーズに完全に応えることは困難です。ターゲットを明確にして、特定顧客のニーズに徹底的に応え、客単価を向上させていく戦略は、人口減少社会において有用な戦略と言えるでしょう。

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