経営理念の浸透が現場にもたらした効果

「笑顔」を経営理念に盛り込んだ例


 昨日のコラムで笑顔について述べました。この笑顔を経営理念に盛り込む例はとても多く、「キビキビ、ニコニコ、ハキハキ」を経営理念としているのは、カレーハウスCoCo壱番屋を展開する株式会社壱番屋です。また、弊社が現在ご支援している、あるロードサイド店の経営理念は「健康第一、笑顔が一番」です。

震災に見舞われたあるホームセンター


 経営理念の重要性に関してはこちらのコラムで述べましたが、今回は、それに関連して、宮城県に本社を置き、経営理念を「ユーザーイン」としているアイリスオーヤマ株式会社の事例を見ていきたいと思います。

 平成23年3月11日、東北地方を中心に東日本は大きな震災に見舞われました。アイリスオーヤマも被災したわけですが、子会社にダイシンというホームセンターを展開する株式会社アイリスプラザ・ダイシンカンパニーがあります。

 このホームセンターダイシン気仙沼店の話です。この店舗も被災し、店内は津波の影響で水浸しとなり、停電も発生したため、営業ができなくなりました。しかし、被災者が毛布や乾電池などを求めて店舗に殺到したため、翌日から営業を再開させました。

店長の判断


 しかし、店内は水浸しの状況で、顧客は入店できません。そこで店舗スタッフは店頭で顧客が求めに来たものを伺い、店内からそれを探しだし、店頭でお渡しすることにしました。とはいうものの、顧客は全て被災者なので、財布が手元にない方もおりました。

 そこで、当時の店長は、ノートに名前を書いてもらって商品をお渡しすることにしました。なお、ノートに名前を書いた方は、後日、全員が全額を支払いに来ました。

 また、3月の宮城はまだまだ寒く、被災者は石油ストーブに使う灯油が必要でした。そこで、店長の判断で10リットルの灯油を無償で配布することにしました。
 その取組みを目にしたテレビ局のスタッフが店長にインタビューをしました。そのインタビューに答えた店長。

 「クビになるかもしれません。それでもいいんです」

経営理念の浸透


 アイリスオーヤマの経営理念は「ユーザーイン」です。ユーザーサイドではなく、ユーザーとして商売をする。その理念に基づいたこの店長の行動を聞いた社長の大山氏は、クビにするのではなく、「誇りに思う」と語っています。

 どんなに訓練をして、マニュアルを整備しても、最終的にとる行動がスタッフの判断に委ねられるのは非常時に限った話ではありません。アイリスオーヤマの経営理念がいかに現場に浸透しているかを示す事例です。

 過去に弊社がご支援した業績に苦しむあるロードサイド店には、立派な社長室がありました。そして、社長の椅子の後ろには大きく経営理念が掲げられていました。社長とのご面談を終え、店舗スタッフにヒアリングをしたところ、全員が「当社には経営理念がない」と答えたという笑えない話があります。

 経営理念を掲げたら、日々、経営理念を浸透させるために、唱和するだけでなく、なぜその経営理念なのか、なぜその経営理念が必要なのか、といったことを経営者・店長はスタッフに伝え続けていく必要があります。経営理念が浸透している組織とは、経営理念が浸透するまで諦めなかった組織なのです。

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