ガソリンスタンドにおけるノルマと目標3つの違い

経営の姿勢

 郵便局のかんぽ生命保険の販売において、保険の乗り換えで不利益を被ったり、認知症を患う高齢者にいくつもの保険を販売したり、新旧契約の保険料を二重に徴収したりなど、不適切な販売があったということで、マスコミを騒がせています。

 その背景には過大なノルマがあったということですが、割と混同されがちなこの「ノルマ」と「目標」について、今回のコラムでは、ガソリンスタンドを題材にその違いを見ていきたいと思います。これを通じて適正な店舗運営の一助になればと思います。

ノルマと目標の違い1:入手方法

 インターネットの辞書を引くと「ノルマ」の定義は「一定時間内に果たすよう個人や集団に割り当てられる標準作業量」「各人に課せられる仕事などの量」となっています。

 これに対して「目標」の定義は「行動を進めるにあたって、実現・達成をめざす水準」となっており、ノルマはスタッフが受動的に入手するもの、目標はスタッフが能動的に入手するもの、と捉えることが可能です。

 私は、複数のガソリンスタンドを運営する会社に勤務していた頃に、かつて4年間誰が店長をやっても黒字にならなかった店舗へ異動になったことがあります。その際に会社から「黒字にせよ」というノルマが与えられましたが、数カ月間赤字が続きました。店長会議で叱られても怒鳴られても赤字が続きました。

 ところが、ちょっとしたきっかけで心持ちが変わり「これまでの自分のガソリンスタンド人生を賭けて燃え尽きるまで販売する」と意を決したことがあります。「燃え尽きる」という目標を持った私は、結果としてこの店舗をひと月で黒字に転換させました。

 このように、ノルマは与えられたものであり、目標は打ち立てたもの、であると言えるでしょう。よって、言葉遊び的なものになってしまうかもしれませんが、私が考える「ノルマ」と「目標」の定義は以下になります。
 「与えられたノルマ」→ノルマ
 「打ち立てたノルマ」→目標
 「与えられた目標」→ノルマ
 「打ち立てた目標」→目標

ノルマと目標の違い2:行動の原動力

 ノルマは与えられたものであるため、その達成の原動力は多くの場合、上司からの叱責、降格の可能性といった、恐怖やリスク回避になります。よって、スタッフは自分自身を守るために行動を起こします。

 これに対し、目標は自分で打ち立てたものであるため、その達成の原動力は多くの場合、自己実現をしたいという欲求になります。よって、スタッフは自分自身をさらに充実させるために行動を起こします。どちらの方が生き生きとした行動になるのかは、自明の理です。

 本社スタッフが予め達成させたいノルマを準備しておき、現場の店長と話し合いで目標設定をするケースがあります。しかし、本社スタッフの誘導尋問によって、準備したノルマが目標になってしまうと、それは、店長が自分で打ち立てた目標ではありませんので、実質的にはノルマになり、その原動力はやはり、恐怖やリスク回避といったネガティブなものになりがちです。

ノルマと目標の違い3:達成手段

 ノルマのゴールは売上や利益といった数値で示されるものであるケースが多いのですが、ここで「売上さえ上げれば」「利益さえとれれば」という考えに陥りがちとなり、手段を選ばない販売となる可能性が高まります。

 ガソリンスタンドで、ウォッシャー液無料補充を口実にボンネットを開けて、各種商品を売り込んだり、タイヤ点検と称してタイヤに穴を開けてパンク修理代を請求したり、交換していないエンジンオイルを交換したことにして代金を請求したり…といった詐欺と呼んでもよい行為は、主にノルマが背景にあります。

 これに対して、目標の場合、その先には目的というゴールがあります。よって、目標を達成してもゴールにはたどり着いていないことになります。目的は公明正大なものであればあるほど、その手段も問われることになります。

 「ノルマと目標の違い1」で述べたようにかつての私が打ち立てた「燃え尽きる」という目標の先には、充実感を得たいという目的がありました。よって顧客を騙すような販売で燃え尽きることができたとしても、充実感を得ることはできませんので、まっとうな販売をするという手段を選ぶことになります。この目的・目標・手段の違いについては以下のコラムをご参考にしてください。
 ロードサイド店舗に目的・目標・手段がなければならない理由

 今回のコラムでは、ガソリンスタンドにおけるノルマと目標3つの違いとして、1.入手方法、2.行動の原動力、3.達成手段、を挙げ、その内容を見てきました。
 経営者・管理職としては、部下にノルマを与えることや、その達成を管理することよりも、部下の目標設定を援助する方が、中長期的に強い店舗が出来上がるはずですので、是非、取組んでいただきたいと思っています。

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