改装費用がない。老朽化が進む店舗がとるべき2つの販売促進策

経営の視点

売上減少に悩む老舗店舗

 弊社がご支援している創業150年超の雑貨店では、婦人服、寝具、文具、食品、鞄など、ありとあらゆる品揃えで地域密着型の事業展開をしています。店舗は老朽化が進み、昔から同店を利用するご高齢の方々が主要顧客となっています。

 これは、近隣に大型ショッピングセンターが進出したことにより、若年層の顧客が流出してしまったことが背景にあります。それがきっかけで、客数が減少し、売上は前年を割り続けるという逆境の中、今後の事業展開をどうするべきか、という悩みを抱えていました。

 そんなある日、その雑貨店に、ある有名な映画監督のもとで働くスタッフから連絡がありました。

販売促進策1:古さを活かす

 そのスタッフからいただいた連絡の内容は、これから、ある映画を制作する予定であるが、昭和レトロな店舗内で撮影できるところを探している。ついては、貴店の店内が、そのイメージにぴったりである。他にも、そんなイメージを持つ店舗を探しているが、もし撮影に使うとしたら承諾してもらえるか、というものでした。

 ここに同店の強みが見出せます。近隣のショッピングセンター含め、競合店はきれいな内外装の店舗ばかりです。これに対して、同店は潤沢な改装費用もありませんし、あったとしても、改装をしてきれいにしてしまうことで、同店の特長が喪失してしまうことになります。

 特長は活かすべきです。昭和レトロという、同店の特長を訴求することで集客力が向上する可能性が高まります。同店は隔週で特売のチラシを新聞折込みで配布していますが、例えば、以下のようなフレーズをチラシに掲載するとよいでしょう。

 「昭和レトロな雰囲気の店内で、お買い物を楽しみませんか」
 「古き良き時代。あの頃を思い起こさせる当店にいらっしゃいませんか」

 これに絡めて、古くから持っている今では稀少となった在庫を活かすことも可能です。

販売促進策2:稀少な在庫を活かす

 同店では、売れ筋商品の他に、長年の事業の中で仕入れた一般的には他店では扱っていない、稀少な在庫を持っています。具体的には、掃除機のない時代に家庭の主婦が使った畳ぼうきの他、割烹着、ちゃぶ台、ご飯を炊くお釜などです。
 これらは、今のご時世では死に筋商品と捉えられ、多くの店舗で取り扱いをしていません。

 そこで「昭和の家事に奮闘した主婦」というコーナーを店内に作り、これらの在庫を陳列します。その上で、昭和を舞台にした映画などをそのコーナーで放映することで話題作りをすることが可能です。
 そして、その写真を撮っていただき、SNSに投稿していただくというインスタ映えならぬインストア映えを意識した売場作りにより、集客力を向上させることが可能でしょう。

 このような販売促進策で集客力が向上すると人材が必要になってきます。そこで、老舗店舗ならではの人材確保策を考えます。

顧客を人材として活かす

 同店は、昔から勤務する従業員が多く、年齢も比較的高齢化していますが、客層も高齢層が多いことから、顧客を従業員としてスカウトすることも一考です。これにより、年齢の差による従業員同士や顧客との意思疎通が阻害されることも防止できるでしょう。

 同店に来店される顧客は、昔ながらの同店のファンであり、同店を気に入っている方が多いはずです。既存の従業員が顧客と接すると、その顧客の人となりがある程度分かりますので、これは、と思った顧客には、同店で働いていただける人材を募集している旨を伝えてスカウトすることも検討するとよいでしょう。

 ある店舗では、その際に「お仕事紹介パンフレット」を渡しています。また、別のある店舗では「シークレットカード」というスカウト専用の名刺を渡しており、それには、店名、電話番号、渡したスタッフ名、渡した日時が記入されています。渡された顧客はステータスを感じ、同店で働くケースも多いとのことです。

 以上、老朽化が進んでもなかなか改装できない店舗がとるべき販売促進策としては、
 1.古さを活かす
 2.稀少な在庫を活かす
 という2点が挙げられ、併せて顧客を人材として活かすことも検討されるとよいでしょう。ただし、老朽化により、雨漏りが発生するなど、顧客の買い物の妨げになる場合は、最低限の補修は必要であることは言うまでもありません。

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