1.消費者心理を知る必要性
あなたは、タイヤや洗車など油外商品が思うように売れず困っているはずです。この場合に意識したいのは、油外商品を購入するのは人間ですから、人間の心理を理解することです。とはいえ、心理学の勉強を一から始めることは現実的ではありません。油外商品の販売に役立つ心理学さえ押さえれば良いだけです。
そこで、この記事ではガソリンスタンドで顧客に商品やサービスを販売する際に、心理学の理論に基づき、理由を述べることの効果や、述べるべき理由について探っていきます。
この記事は、ガソリンスタンドの経営者やリーダー、現場スタッフの他、販売業界で新たな販売戦略を模索している経営者やマーケティング担当者を対象としています。早速本題に入ってきましょう。
2.理由を述べるセールストークの重要性
私がガソリンスタンドの運営会社に勤務し、現場で店長を務めていた際に、ある大学生のアルバイトスタッフに新人教育のトレーナーを任せていました。これは、私が新人教育に当たるよりも彼に任せた方が、メリットが大きいと判断したためです。詳しくは以下のリンクをご参照ください。
さて、彼がトレーナーを務めてしばらく経ったある日、彼から「なぜエンジンオイルの交換が必要なのか」という質問を受けました。
私は、彼に対して既にオイル交換の必要性について説明していたつもりでしたが、どうやらそうではなかったようです。なぜそのような疑問を抱いたのか尋ねると、新人を教育する過程で、新人スタッフからオイル交換の必要性について質問を受けたがうまく説明できなかったと語りました。
そこで私は、エンジンオイルが持つ5つの機能と、それが劣化するとどうなるのかを説明し、交換の必要性を納得してもらいました。するとその後、彼はエンジンオイルの販売実績を飛躍的に伸ばしました。
その理由は、彼が顧客にエンジンオイル交換を勧める際に、その顧客がエンジンオイルを交換するべき理由を説明できるようになったからです。このように、理由を述べることが、販売に効果をもたらすことは心理学の実証研究で明らかになっています。
3.理由を述べる効果の実証研究
今回ご紹介するカチッサー効果の「カチッサー」は、テープレコーダーの再生ボタンを押すと「カチッ」という音がした後に、砂嵐のような「サー」という音が再生されることから来ています。つまり、再生ボタンを押すと自動的に音が出るように、人間はある働きかけがあると、無意識に反応してしまうという意味があります。
この効果について心理学者のエレン・ランガーが以下の実験を行いました。被験者がコピー機の順番待ちの列の先頭へ行き、以下に示した3種類の言い方で先にコピーをとらせて欲しいと頼みます。
- 「すみません、5枚なのですが、先にコピーをとらせてもらえませんか?」と頼んだ場合の承諾率は60%。
- 「すみません、5枚なのですが、急いでいるので先にコピーをとらせてもらえませんか?」と頼んだ場合の承諾率は94%。
- 「すみません、5枚なのですが、コピーをとらなければいけないので先にコピーをとらせてもらえませんか?」と頼んだ場合の承諾率は93%。
つまり、他人に物事を依頼する場合は、単に依頼するのではなく、理由をを付け加えて依頼した方が承諾してもらいやすいということです。そして、その理由は正当な内容の方が効果が高いと言えます。
このことは、顧客に購買を勧める際に「○○をお勧めします」と述べるよりも「○○という理由があるので、○○をお勧めします」と理由をつけて述べた方が、購買されやすいということです。そして、その理由は正当な内容であることが効果を高めます。では、どのような理由が正当であり、効果を生み出しやすいのでしょうか。
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