人材不足に悩むガソリンスタンドがとるべき3つの対策

モチベーション

 人材不足に悩むガソリンスタンドは、募集をして新規人材の補充をしようとします。つまり、大量出血している怪我人に輸血をしようとしますが、その前に必要なことは止血であるはずです。当コラムでは、その止血策を「従業員満足の向上」と考え、そのための対策を述べていきます。

1. 従業員満足を高める3つの対策

(1)モチベーション向上の対策

 アメリカの臨床心理学者であるハーズバーグ氏が提唱した動機づけ=衛生理論は、人間は仕事をして高い満足感を得るとモチベーションが上がり、積極的態度が引き出され、不満足感を得るとモチベーションが下がり、消極的態度が引き出されてしまう、というものです。

 そして、前者を「動機づけ要因が満たされている状態」、後者を「衛生要因が満たされていない状態」としました。

 動機づけ要因の例としては、承認、責任、達成感、仕事そのもの、昇進、などが挙げられます。また、衛生要因の例としては、会社の方針、上司の監督、給与、人間関係、労働条件などが挙げられます。

 この理論が興味深いのは、衛生要因を満たしても、モチベーションの向上は一定の範囲に留まり、積極的な態度は引き出せないことを実証研究で明らかにしたことです。これは、衛生要因には天井感があり、動機づけ要因はそれがないことが影響を及ぼしています。

 よって、モチベーションを上げて積極的な態度を引き出すためには、動機付け要因を満たす必要があり、これが従業員満足を向上させる可能性を高めます。

 動機づけ要因の「承認」を満たすことを例にとると、店長がスタッフに「今日は午前中に30台のお客様へ声を掛けていたね」、「3人のお客様にありがとうといわれていたね」といった声掛けをすることです。事実を認めるには、事実を把握しなければなりません。よって、店長はスタッフの働きぶりに興味を持たなければなりません。

 これが出来ない店長は「良くやったね」「頑張ってるね」といった、見ていなくても発することのできる言葉を投げかけがちです。そして、スタッフがその言葉を「自身をコントロールする手段」と受け取った場合は、モチベーションが低下してしまう点に注意が必要です。これに対して、承認は事実を述べますのでスタッフの解釈が入り込む余地がないため、モチベーションが上昇しやすくなります。

(2)能力開発の対策

 OJTはオンザジョブトレーニングの略で、仕事をしながらスタッフを訓練するというものです。これに対して、Off-JTはオフザジョブトレーニングの略で、仕事から離れて集合研修を行ったり、勉強会を開いたりする取組みです。

 下図、産業能率大学の「経済危機下の人材開発に関する実態調査」によると、OJT中心で人材育成をする企業は9割近くに上っています。ですが、それが機能していると答えた企業は1割強にすぎません。

 この結果は「OJTという名のほったらかし」「OJTという名のぶっつけ本番」が発生しているからと弊社では考えています。

 例えば、店長がトレーナーとなって、新人スタッフを一生懸命教育している最中にオイル交換や本社からの電話で呼ばれ、そうこうしているうちに店内が混雑してきたりすることがあります。

 こうなるとOJTどころではなくなり、新人スタッフはほったらかしになります。そのような新人は顧客の絶好のターゲットとなります。顧客から「早く給油してよ」「空気圧見て」などと声を掛けられ、新人は先輩スタッフに助けを求めます。しかし、先輩スタッフも忙しい。新人スタッフは途方に暮れてしまいます。

 また、店内が混雑してきた場合にトレーナーが「実践で学んでいこう」などという暴論でOJTを打ち切ってしまい、いきなり接客させられるケースもあります。結果としてガソリンを燃料とする軽自動車に謝って軽油を給油してしまうようなミスが発生し、新人は入社早々先輩方に迷惑をかけてしまい、心苦しい思いをしてしまいます。

 このような辛い思いをした新人スタッフは翌日から出社しなくなる可能性が高まります。そこで、OJTのトレーナーの業務を新人の苦労をより鮮明に覚えているアルバイトスタッフに担っていただき、現場の最前線で常に新人に寄り添うOJTをさせることで、従業員満足が向上する可能性が高まります。

(3)業務標準化の対策

 「あなたは何のために生きていますか?」と問いかけられて、即答出来る人は少ないはずです。しかし、仮に「発展途上国の貧困に苦しむ児童を救うために生きています」と即答した人がいたとします。これを受け「そんなの無理」「何、大きなこと言ってんの」と言う人もいるでしょう。ですが、即答出来たところに強さがあるわけです。

 「あなたの会社は何のためにあるのですか?」という問いに対する答えが経営理念であり、これがある会社は強いですし、現場まで浸透していれば、現場で働くスタッフの判断基準となります。

 マニュアルにない行動が必要になった時に、現場のスタッフが判断の拠り所とする考え方、それが経営理念です。よって、経営理念を現場に浸透させることは、従業員共通の判断基準ができ、仕事が標準化されていきます。

 なお、弊社が考える良い経営理念とは、以下の条件を満たしているものです。

  • 社会貢献の視点がある(世の中のお役に立とうとしていることが分かる)
  • 戦略・戦術のヒントがある(どのようにお役に立とうとしているかが分かる)
  • 成長性が伺える(お役に立ち続けようとしているかが分かる)

 今回のコラムでは、人材不足を解消するために、従業員満足を高める取組みとして、(1)モチベーション向上の対策、(2)能力開発の対策、(3)業務標準化の対策、を述べました。

 まずは、経営者が店長を「承認」すること、OJTのトレーナーをアルバイトにさせてみること、そして経営理念を定め、現場に浸透させることを検討してみてはいかがでしょうか。

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