無料サービスを有料化するために

戦略の考え方

ガソリンスタンドの洗車

 ガソリンを20リットル以上給油した顧客に500円の洗車を無料で提供しているガソリンスタンドの経営者から、「無料サービスの洗車を有料化する方法はないものか」というご相談を受けました。

 多くのガソリンスタンドの店舗はメーカーの所有物です。それを地場の小売業者や商社がメーカーから借りて運営を任されています。当然、ガソリンなどは当該メーカーから仕入れるわけですが、過去には、一定量を販売すると仕入れ値の調整(引き下げ)がありました。
 よって、利益を削って安く売っても、大量に販売できれば、後日仕入れ値の引き下げ額が戻ってくるので、ティッシュ5箱サービスや洗車無料サービスなどで、集客を図っていました。

 しかし、若者の車離れ、低燃費車の普及などで、ガソリンの販売量は減少傾向にあり、メーカーも仕入れ値の調整に応じることが困難になってきました。ガソリンで利益がとれなくなってきたスタンド運営者としては、ガソリン以外の商品で収益を確保しなければならなくなり、顧客にガソリン以外の商品を勧めるようになりました。洗車の有料化もその頃から始まっています。

 しかし、冒頭の店舗は、過去に実施した洗車無料サービスを有料に切り替えるタイミングを逃し、現在に至ったわけですが、それを目当てに来店される顧客も相当数あるとのことで、経営者としては有料化に踏み切るべきかどうか、悩んでいました。

計画的に有料化する

 この場合、顧客の抵抗なしに、もしくは、顧客の抵抗を可能な限り少なくして有料にできればいい、という前提で有料化の計画を検討します。

 例えば次のような計画が考えられます。
 1年目は、20リットル以上給油をしたら500円の商品割引券を差し上げます。これは、ガソリンの代金に使っても良いですし、洗車やオイル交換など、店内でサービスを受けたり、商品を購入したりする際に使っても良いこととします。
 目的は、①これまで洗車の無料サービスを利用してきた顧客に対して、本来洗車は有料であることを訴求すること、②洗車の需要を持たない顧客へも公平感を持たせること、です。
 そして、2年目は、20リットル以上給油をしたら300円の商品割引券、3年目は100円の割引券という形で、割引幅を減少させていき、最終的には割引をなくします。これによって、洗車の有料化を実現させます。

 これまで無料だったものをいきなり有料にするのは、顧客の抵抗が大きく、客離れが予想されます。よって、上記のような激変緩和措置を用いて、少しずつ、有料化を受け入れやすくさせる必要があります。白いものを黒くするには、まず、灰色にすることが必要だということです。

 売上は、客数×客単価で求められます。無料サービスを有料化による客数減少を最小限度にとどめ、客単価を上げて、売上を向上させましょう。それ以外の客単価向上策として、以下のコラムも参考にして下さい。
 買上点数の増加による客単価向上策
 多くの客数が見込めない店舗の客単価向上策
 顧客心理を活用した販売による客単価向上策
 来店はあるものの購買に至らない店舗の客単価向上策

メルマガ会員様募集中

 メルマガ会員様には、リアル店舗の現場経験20年以上、コンサルティング歴10年以上【通算30年以上のノウハウ】を凝縮した【未公開のコラム】や、当サイトに掲載したコラムの【解説動画URL】を優先的に配信しています。
登録はこちらから
↓↓↓

お探しのページが見つかりません。

電子書籍のご案内

 1年で70人のアルバイトに辞められたガソリンスタンド店長が人材に全く困らなくなった理由:育成編~人材が育つ職場と人材に見放される職場の境界線~
2020年3月15日発行 定価1,055円