繁盛する居酒屋になるために満たすべき条件とは

 自慢のメニューがあるにもかかわらず、どうも最近客足が伸びず、暇な時間帯が増えてしまった…そんな居酒屋の経営者が検討するべきことのひとつとして、自店はなぜ存在しているのかという経営理念の明確化が挙げられます。

 「なぜ生きているんですか」と問われ、即答出来る人は多くありません。ですが、その問いに即答出来た人は、その内容が何であれ、強さを感じさせます。今回のコラムでは、繁盛している居酒屋の事例を通じて、具体的な経営理念とそれに基づいた店舗運営を見ていきます。

客数の減少に悩む居酒屋

 創業して8年目を迎える居酒屋の経営者が抱える悩みに触れる機会がありました。同店は、創業から順調な実績で推移してきたものの、昨年から客足が途絶え始めました。

 おすすめのメニューは、日替わりで10~20品あります。また、同店の自慢メニューは、お通し3点盛り、ザンギ、鶏白レバー刺、生ささみのとりわさ、炭火焼きの焼き鳥、漁師直送の新鮮魚介類とのことです。

 以上より、メニューには自信を持っているようですが、この経営者は冒頭で示した自店の経営理念が明確になっているのか、疑問を持ちました。では、経営理念があるとどう強くなれるのか、先日訪問した静岡県藤枝市の居酒屋「おもひで横丁 藤枝市場」を取り上げてみたいと思います。

顧客を放っておかない居酒屋

 この居酒屋は、出張でチェックインしたホテルの方から紹介され、入店することにしました。まだ早い時間だったので、私が入店した時の店内に、顧客は誰もいませんでしたが、私はカウンターに陣取り、ビール、お刺身、サラダを注文しました。

 お刺身は、駿河湾に面した地域だけあって、非常に美味しく、ひとり舌鼓を打っていると、カウンターの中にいる経営者と思しき方から「先日までのゴールデンウィークはゆっくり出来たんですか?」と声を掛けられました。

 それをきっかけに会話を楽しみながら、お酒と料理を堪能していたところ、徐々に店内が混雑しはじめ、平日とは思えない賑わいとなりました。料理のオーダーも立て続けに入り、経営者は私とゆっくり会話をするわけにはいかない状況になりました。

 そこで、店内のテレビを眺めていたところ、今度は、ホールを担当している若いスタッフが私に声を掛け、私との会話が始まりました。このように、経営者もスタッフも私を放っておくことがほとんどなく、楽しく食事を楽しむことができました。

 スタッフが私から離れた際に他の顧客を見ていると、やはりスタッフが話しかけて会話をしています。そんな中、お腹もふくれ、酔いも回ってきた頃、ふと何の気なしにカウンター奥の厨房に目をやった時に、この居酒屋がなぜ顧客を放っておかなかったのかが理解できました。

放っておかない理由

 厨房の壁にはこのような貼り紙がありました。

 この居酒屋の経営者やスタッフが、顧客を放っておかなかった理由は、また遭いたくなる居場所になるためです。この居酒屋の経営理念は「また来たいよりまた遭いたい居場所造り」であり、これが明確になっているため、同店の経営者やスタッフにまた遭いたくなるように、顧客に声を掛け、会話を楽しんでもらっていると言えるでしょう。

 「また来たくなる」は即物的な要素も含まれますが、「また遭いたくなる」にはそこで働く人の魅力が必要です。とにかく繁盛すれば良いというわけではなく、自店の経営理念を明確にすることで事業展開に強さが宿り、それに沿った事業展開が店舗を繁盛させることを認識させられました。

 繁盛する居酒屋になるために満たすべき条件として、自店はなぜ存在しているのかという経営理念の明確化が挙げられます。客足が鈍ってからあたふたする前に、明確にするとともに、店内に浸透させるべきでしょう。

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