酒販店の事例から学ぶ小規模事業者持続化補助金申請書の書き方⑤

小規模事業者持続化補助金

 同社は50年以上前に先代が創業し、地方都市でお酒の小売を主たる事業としていますが、時代の流れとともに酒類販売免許が取得しやすくなった結果、競合の進出が相次ぎ、業績は厳しくなってしまいました。

 そこで、他社へ修行に出ていたご子息が家業に戻り、品揃えの選択と集中を行った結果、業績は一旦回復しました。ですが、またもや環境が厳しさを増してきたことから、小規模事業者持続化補助金を活用して、自社オリジナルの化粧箱を作成し、小瓶のお酒を詰め合わせて、ギフト需要を開拓することとしました。 

 そこで弊社が当補助金の応募に使用する計画書作成のご支援を行い、同社は採択されたわけですが、当コラムで、その計画書作成のプロセスをご紹介していきます。下図は応募時に作成する書類ですが、今回のコラムでは赤枠部分、様式2-1 経営計画書兼補助事業計画書① <補助事業計画> Ⅰ.補助事業の内容 「2.販路開拓等(生産性向上)の取組内容」を見ていきます。

1.「販路開拓等(生産性向上)の取組内容」の書き方

(1)ビジュアルに訴求する

 同社の場合、補助金で化粧箱を作成したいので、その化粧箱に関する説明を当欄に記載します。すでに業者との打合せが進んでおり、どのような化粧箱を作成するのか、デザイン案は決定しておりました。そこで、作成する予定である化粧箱の写真を盛り込み、ビジュアルに訴求しました。

 さらに、この化粧箱を用いて2パターンのギフトセットを展開する予定であり、それぞれのセットにどんな商品がどれだけ詰め合わされ、いくらで販売する予定なのか、読みやすさを意識した一覧表を盛り込みました。

(2)新規性・実現性・採算性・社会性を記載する

 同社の場合、補助事業を展開するにあたり、新規性・実現性・採算性・社会性を検討しました。新規性は他社が実施していないことを述べ、事業の独自性が高いものであることを述べました。また、新規性が高いほど実現性が低くなりがちですが、デザイン業者との打合せが進んでいることや、コスト面でも対応可能であることを述べて、実現性の高さも訴求しました。

 採算性は、きちんとした収益を出せるのかということですが。補助事業開始後5ヶ月間の予想売上高を3パターンのギフト毎に記載した月別の売上高一覧表を盛り込みました。そして、採算性が高いほど社会性が低くなりがちですが、お酒の効用を述べて、多くの方がお酒を飲むことによるメリットを示し、社会性の高さも訴求しました。

(3)創意工夫の特徴を記載する

 応募時のルールブックである公募要領内、「審査の観点」というページには「創意工夫の特徴があるか」という一文があります。そこでこれを意識して、下記の内容を盛り込みました。

 【創意工夫の特徴】

  • 瓶の大きさに応じ、○○ミリリットルの瓶が●本入るものと、△△ミリリットルの瓶が▲本入る2パターンの化粧箱とした点。これにより、予算に応じた購入がしやすくなる。
  • 通常は出回らないメーカー主導で作成したグラスもパッケージに含め、商品の希少性を高めた点。
  • 2つ折りのリーフレットを作成し、化粧箱に同封して、商品の特徴を訴求する点。

(4)5W1Hでまとめる

 このようにして補助事業の内容を述べてきたわけですが、前述の公募要領「審査の観点」には具体性に関する記述もありました。そこで、これまで述べてきたことを、いつ(When)・だれが(Who)・なにを(What)・なぜ(Why)・どこで(Where)・どのように(How)という5W1Hで下表のようにまとめました。

 このようにして同社は「2.販路開拓等(生産性向上)の取組内容」を記載しましたが、次回のコラムでは「4.補助事業の効果」をどのように記載したのかを見ていきます。

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