「ムカつく客」への対応は器を大きくするチャンス

自己分析

ムカつく時はどんな時?

 日々、ロードサイド店舗で不特定多数の顧客と接していると、様々な方と出会います。その中には、本日のタイトルのようにムカつく顧客もいるわけです。

 私がガソリンスタンドで働いていた時に接した「ムカつく客」を挙げるとざっと以下の事例が思い浮かびます。
 ・「満タンでよろしいですか?」と聞いたら「当たり前だろ」とキレられた。
 ・給油中にトイレに行って車に戻ってきた顧客が「車内にあったはずの財布がない、スタンドの誰かが盗った」と騒ぎ立てたが、結局車の中にあった。
 ・パンクの原因がタイヤのサイド部の亀裂であったため、修理不能と伝えたら蹴られた。
 ・接客が遅いと殴られた。
 ・エンジンオイルの交換をして、車両を引き渡そうとしたら「本当にエンジンオイルの交換をしたの?」と疑われた。
 ・「今、購買を決めていただけたら値引きします」と言ったら「何で今買うと商品の価値が下がるの?」といちゃもんに近い質問を受けた。
 ・「車内の吸い殻、ゴミがありましたらお片付けします」と言ったら、家庭用のゴミを平然と出された。

 挙げていればキリが無いのですが、このような言動をされると、人は感情を害します。余談ですが、私の先輩は、一般社員時代に、その場で辞表を店長に提出し、顧客を殴りに行ったという逸話(?)を持っています。

ムカつくことが意味するもの

 藤子・F・不二雄氏原作のドラえもんは、お腹の四次元ポケットから様々なツールをのび太君達に提供しますが、その中に「ヘソリンガス」というものがありました。
 このガスをおへそから体内へ注入すると、心身の痛みが30分間なくなるというものです。大きな怪我をして治療が必要であっても、痛みを感じないので、治療の必要性を本人は感じません。
 しかし、30分を経過すると、ヘソリンガスの効果が切れ、激痛が襲いますので、またヘソリンガスが必要になるという、薬物依存の恐ろしさを描いたものでした。

 さて、私たちの体が傷つくと、痛みとともに赤い血が流れたり、青く腫れ上がったりなど色・形が変わります。目に見える変化があるので、治療の必要性を認識しやすいわけです。つまり体の治療が必要であるというサインが出されているのです。

 これに対し、ムカついたという事実は、心の治療が必要だというサインです。それをしっかり受け止めて対処することが必要なのです。

なぜムカつくのか

 私たちは、人によって異なる多種多様な「べき論」を持っています。例えば「店舗スタッフの丁寧な言葉には丁寧な言葉で返答するべき」「店舗スタッフを信じるべき」「混雑時は多少の待ち時間に耐えるべき」「値引きしたら喜ぶべき」「家庭用のゴミはしかるべきところで処分するべき」などです。

 この「べき論」に相手の言動が刺さると「何でそんなことを言うのですか」「その態度はないでしょう」とムカつきます。そして、重要なことは、この「べき論」は長年持ち続けてきたものであるため、どのような「べき論」を持っているのか気付きにくく、そしてなかなか手放せないということです。

ムカついた時の対処

 これを踏まえると、ムカついた時というのは、自分の「べき論」に気付くチャンスと言えます。自分が持っている多種多様な「べき論」の一つに気付くことができれば、手放すことが可能です。
 手放すものが何かわからなければ、手放しようがありません。その「べき論」を持っていることでムカつくのであれば、その「べき論」が無くなればムカつかなくなります。

 ただし、前述の通り、その「べき論」は長年お付き合いしてきたものですから、簡単には手放せません。しかし、自分をムカつかせているのは、顧客ではなく、自分が持つその「べき論」だということを認識していれば、少しずつ手放すことができてきます。

 経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏は、創業前の勤め人だった頃、同僚の不正が許せず、勤務先を辞めたことがありました。その後、会社を経営するようになり、多くの従業員を雇うようになった頃に、社内の不正がありました。松下氏は、その不正をとがめますが、解雇はしなかったと言います。清濁併せのむ器になったことを示すエピソードです。

 「べき論」を手放すことにより、些細なことにムカつかなくなり、器が大きくなるはずです。「ムカつく客」への対応は、実は自身への対応であり、そして自分の器を大きくするチャンスなのです。
 そして、ロードサイド店舗の経営者としては、ご自身の器だけでなく、働くスタッフの器も大きくするべく、これらを現場スタッフへ周知し、店舗の器も大きくしていただくことで、人材の定着率向上にも寄与することでしょう。

 なお、自分が持っている「べき論」に相手の言動が刺さっても、ムカつかないのであれば(そもそも刺さらないのですが)、手放すことは不要であること、「法律は守るべき」という「べき論」は持っておかなければいけないことを申し添えておきます。

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