1.アルバイトスタッフの正社員化で人手不足を克服するために
私は、ガソリンスタンドの運営会社に21年間勤務し、ガソリンスタンドの現場に身を置いてきました。そのうちの13年間は店長を務めましたが、店長になって10年間ほどは人手不足に本当に悩まされました。
勤務シフトを作成する都度、アルバイトさんに「○日に人がいないので、なんとか少しの時間でも出社できないかな」と調整をし、ようやくシフトが出来上がる有様でした。出社できるスタッフが全くおらず、朝から晩まで1人で1日15時間の勤務が当たり前の時期もありました。
しかし、今回のコラムでご紹介することを通じ、店長として最後の3年間ほどは、人手不足に苦しむことがなくなっただけでなく、私含め全スタッフが定時で退社し、年間休日も完全に消化できるようになり、店舗の業績も向上しました。また、大学生のアルバイトスタッフが就職先として当店を選んでくれるようにもなりました。
多くのガソリンスタンドが人手不足に苦しんでいます。人手不足なので、洗車やエンジンオイル、タイヤなどガソリン以外の商品(油外商品)が売れない、その結果儲からない、儲からないから採用のための広告費用が捻出できない、そしてさらに人手不足が深刻になる、という負のスパイラルに陥ります。
このスパイラルが出来上がるまでには、様々な要因があったはずです。ここで着目しなければいけないのは、自社の組織風土や、その風土から自然発生した様々な慣習・仕組みです。これらは、長年かけて出来上がったものですので、一朝一夕に改善できるものではありません。
しかし、これらを変えていかなければ、上記のスパイラルは断ち切ることができません。よって、時間をかけて、構築するべきものは構築し、改善するべきことは改善します。
短期的な取組みで状況は劇的に変わるものではないことを肝に銘じて取り組みましょう。その上で、とるべき具体的な行動を見ていきます。
(1)人手不足をこれ以上深刻にさせない
物騒な例ですが、大量出血で病院に担ぎ込まれた怪我人には輸血が必要です。よって、その治療は真っ先に輸血だけをするでしょうか。その前に止血をしないと、輸血した血液は単に患者の体を素通りし、洩れるだけになります。
人手不足に喘ぐ職場は、止血の前に、新規採用という輸血に走りがちですが、まずは止血策を講じなければいけません。止血策とは従業員満足を上げ、定着率を向上させることです。
従業員満足は、標準化、能力開発、モチベーションの3つから構成されます。
標準化には、業務マニュアルの整備、経営理念の策定が挙げられます。特に、マニュアルに定められていない対応をする際、従業員の判断基準となる経営理念は定められているか、もし定められているとしたら、現場に浸透しているか、を検討します。
【参考記事】
経営理念が意味するもの
経営理念の浸透が現場にもたらした効果
また、能力開発には、OJT、Off-JT、自己啓発がありますが、OJTを有効なものにしておく必要があります。
【参考記事】
うまくいくOJT、うまくいかないOJT
そして、モチベーションに関しては、ハーズバーグの動機付け=衛生理論に基づいた取組みが有効でしょう。
【参考記事】
ベテラン写真のモチベーション
年上の部下への対応
(2)募集広告と面接内容の充実化
これらを整備した上で、店頭や新聞折込、ネットなどの募集広告を活用しますが、応募者が多い募集広告には、特徴があります。それは、以下の5W3Hが明確になっている、ということです。
When(何時から何時まで働けるのか)
Where(働く場所はどこか)
Who(誰と働くのか)
Why(なぜ募集しているのか→どんなビジョンを達成しようとして募集しているのか)
What(何の仕事をするのか)
How(どのように教育訓練がなされるのか)
How many(どのくらいの期間働いて欲しいのか)
How much(いくらの給与なのか)
誰と働くのか、を告知するためには、働いているスタッフの写真や、働くスタッフの声を広告媒体に掲載します。
なぜ募集しているのか、を告知するためには、自社の経営理念、経営ビジョンを示します。このビジョンを経営理念に基づき達成するために、人材が必要であることを訴求します。生まれも育ちも異なる人と一緒に働くわけですから「当社はこんな理由で存在し、こんな夢を持っています。現在の人材だけでは達成できませんので、同じ志を持った方、是非いらして下さい」といった内容が必要です。
さらに、採用面接の際は、以下の5つの項目のどちらを重視するのか、それが貴店と一致しているかを見極めます。
情を重視/理を重視
行動を重視/思考を重視
協調を重視/競争を重視
伝統を重視/革新を重視
スピードを重視/緻密さを重視
【参考記事】
人材の募集をかけても人が来ないのはなぜか
人材不足の解消策
(3)アルバイトというインターンシップ制度
学生さんがガソリンスタンドでアルバイトすることは、ガソリンスタンドでインターンシップ(職業体験)を行うことに繋がります。
最初は、軽い気持ちでアルバイトしていた学生の従業員満足が高まり、職場に愛着を感じるようになると、そのスタンドが就職先の候補となります。
正社員は、法定福利費の半額を会社が負担するので、アルバイトさんよりも人件費が高くなりますが、長期のインターンシップを経験したアルバイトさんが正社員になるわけですから、まっさらな新人を雇うより教育面などで低コストとなります。
また、正社員という立場で責任を与えられ、即戦力として働いてくれるのですから、油外販売の貢献度が高くなる可能性もあります。
以上のように、人手不足の対応策は、単に募集広告を活用する、というだけではなく、その前にどのような体制を整えるか、といった点が重要なのです。
今回のコラムでは、アルバイトスタッフの正社員化で人手不足を克服するために、(1)人手不足をこれ以上申告にさせない、(2)募集広告と面接内容の充実化、(3)アルバイトというインターンシップ制度、を挙げました。これらを参考に人手不足対策を進めていきましょう。
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