人材不足の解消策

コラム

優先するべきは定着率の改善

 ある経営者から、「人材を募集しても応募がない、採用しても辞めてしまう」というご相談を受けました。ロードサイド店舗に限らず、様々な業界でこの傾向は強まっているようですが、人材を豊富に抱え、定着率のよい中小企業や小規模事業者も多数あります。

 人材について考える際は、募集・採用・育成・定着それぞれの段階で改善を検討することが必要ですが、優先度が高いのは、定着率の改善です。言い方を変えると辞めにくい、居心地の良い職場を作る、ということです。
 ところが、時間軸で考えると、募集→採用→育成→定着となりますので、いかに人材を募集するか、を優先的に検討してしまうケースが多くみられます。

 例えば、大量出血をして倒れている怪我人がいたとします。大量に出血していますから、輸血が必要です。では、大量出血中に輸血をするかというと、そんなことはしないはずです。なぜなら、輸血をしてもその分出血してしまうからです。よって、当然、まず止血処置をしてから輸血を行います。

 ところが人材不足にあえぐ店舗は、止血しない状態で輸血を行おうとします。つまり、辞めやすい状態のまま、新規採用を行います。
 新規採用した人材は教育しないと戦力になりませんから、一刻も早く戦力にするべく、教育を行い、やっと戦力になれたかな?あたりで辞められることを繰り返します。これでは、採用と教育の手間と費用がかかっただけということになり、経営者・店長、そして店舗自体の疲弊度が高まるだけなのです。

定着率改善の考え方

 定着率改善を考える際には「ハーズバーグの動機づけ=衛生理論」が参考になります。
 人材は、会社の方針、上司の監督、給与、人間関係、労働条件といった「衛生要因」が充足されていないとモチベーションのマイナス幅が大きくなります。しかし、衛生要因を住職するだけでは、モチベーションのマイナス幅が小さくなるだけで、積極的な態度は引き出せません。
 そこで、承認、責任、達成感、仕事そのもの、昇進といった「動機づけ要因」を充足させ、モチベーションを上げることも検討しなければなりません。

具体的な定着率改善の方法

 衛生要因の整備としては、まず、店舗の方針を定め、賃金制度・評価制度を確立することが挙げられます。

 店舗の方針を定めるには、経営理念の構築から始めます。経営理念は、「うちの店舗は何故存在しているのか」という質問への答えです。その内容が良い・悪いというものではなく、その質問に答えることができるかどうかが重要です。以下のコラムも参考にして、経営理念の構築・見直しを行い、それに基づく店舗運営方針を確立しましょう。
 経営理念が意味するもの
 戦術と戦略の違い

 また、賃金・評価制度の確立は、まず、経営者・店長が理想とするスタッフ像を明確にします。この際、理想のスタッフが行う「社内への対応」と「社外への対応」という切り分けをするとスッキリとまとまりやすくなります。
 「社内への対応」の例として、出勤時の挨拶、仕事をする前の準備作業、報告・連絡・相談の仕方、などが挙げられるでしょう。「社外への対応」の例としては、電話応対、接客時の言葉遣い・表情・身振り手振り、商品知識、精算業務などが挙げられるでしょう。それらを評価項目とします。

 これらの評価項目がどれだけ達成できたのかを評価するわけですが、この際、A評価、B評価、C評価、など奇数個のランクで評価すると大体Bランクをつけてしまいます。このような中央化傾向を避けるために、A評価、B評価、C評価、D評価と偶数個のランクを設定するとよいでしょう。そして、この評価結果と賃金を紐づけることにより、賃金制度が出来上がります。

 まずは、完全ではなくとも止血策を講じているかいないかが重要ですので、これらの制度は、最初は簡単なもので構いません。毎年見直しを重ねて、徐々に精度の高いものにしていくとよいでしょう。

 また、衛生要因の整備とともに、動機づけ要因に働きかけることも重要な止血策となりますので、以下のコラムをご参考にしていただければと思います。
 ベテラン社員のモチベーション
 モチベーションアップの方法
 年上の部下への対応

 繰り返しになりますが、この止血策をとらないと、人材を採用しても、即離職、ということになってしまいます。猫の手も借りたいほど人材が不足している状態だからこそ、重要な点を見落とさず、墓穴を掘ってしまわないようにするのです。

効果的な人材募集の方法

 このような定着率向上の取組みは、従業員の居心地が良くなることを意味しますので、既存の従業員から当店で働きたい方の紹介を得やすくなることを意味します。つまり、定着率向上の取組みは、れっきとした募集活動になります。

 その上で、店舗として外部へ向けて募集活動を行います。ハローワークの求人票、チラシの新聞折込、店頭看板やポスターなど、様々な媒体がありますが、どの媒体が良いかという点よりも、どのような内容が応募者の増加につながるのかをみていきます。

 昨年の1月に株式会社ESSPRIDEが全国の中小企業(従業員数300名未満)に勤務している20~49歳の正社員を対象に次のアンケート結果の公表を行いました。
 「就職や転職をする場合を想定して、会社のホームページやパンフレットに経営者の顔写真がある会社とない会社を比較して、どちらの会社の面接を受けたいと思うか」

 この質問に対して、69%の方が「顔写真がある会社」「どちらかと言えば顔写真がある会社」の面接を受けたいと答えました。

 また、過去に弊社がご支援したタクシー会社は、慢性的な運転手不足でしたが、求人サイトに、経営者とドライバー数名が休憩室で談笑している写真を掲載したところ、応募者が急増しました。

 これらのことは、求人募集を見て、仕事の内容や給与といった部分はもちろんですが、どんな人と働くか、という点も応募のポイントとなることを示唆しています。経営者がハンサムだとかスタイルがいいなどということにこだわる必要はありません。情報開示に積極的な会社なのかどうか、という点が重要なのです。

社長の写真を撮影する

 過去に弊社がご支援したあるロードサイド店は、スマホで8年前に撮った経営者の写真をホームページに掲載していました。実際の経営者と写真の経営者はずいぶん雰囲気が違っています。8年も経過すると顔つきにせよ雰囲気にせよ、場合によっては体型もだいぶ変わってきます。応募者に「写真と違う」と思われないように、写真は2年をめどに撮り直すようにしましょう。

 また、スマホのカメラ機能もかなり進化していますが、撮影はプロにご依頼することをお勧めします。表情の切り取り方や構図などはやはりプロは違います。弊社で調べたところ、一番安い料金で撮影してくれるプロの料金は5,000円でした(ちなみに上はキリがありません)。なお、弊社のホームページに使用している写真も全てプロが撮影したものですが、料金は35,000円でした。

アルバイト「さん」の募集看板

 あるロードサイド店舗は、店頭に「アルバイト募集」と募集看板を掲げていましたが、応募者が少ないという悩みを抱えていました。そこでこれまでご紹介した仕組みを構築した上で、募集看板の表記を「アルバイト募集」から「アルバイト『さん』募集」に変更していただいたところ、応募者が増加しました。

 このように、そのロードサイド店が、人材をどのように見ているのかという点もポイントになります。ただし、「アルバイト」を「アルバイトさん」へ言葉を変えただけでは、仏作って魂入れず、になってしまいます。実際に人材ではなく「人財」として大事にする必要があります。

 応募者は誰と働くのか、そして、応募者を店舗はどのように見ているのか、といった点を意識して、応募者を増やしていきましょう。

採用面接のポイント

 ■採用面接のポイント
 このようにして、応募者を集めたら採用活動として面接を行います。面接で重視するのは、自社と応募者の相性ですが、以下の5点を見極めることを重視します。

 情を重視/理を重視
 行動を重視/思考を重視
 協調を重視/競争を重視
 伝統を重視/革新を重視
 スピードを重視/緻密さを重視

 まず、自店舗がどちらを重視しているのかを明確にします。そして、自店が重視する項目と応募者が重視する項目が全て一致していれば言うことはありません。反面、真逆でありながら、とにかく人が欲しいという理由で採用してしまうと、高いスキルがあったとしても、長続きはしないでしょう。こちらのコラムも参考にしてみてください。
 応募者と面接する際の質問事項

中小企業における従業員育成のコツ

 大企業に比べると経営資源の質・量に劣る中小企業の場合、従業員の育成はOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング:仕事をしながら能力開発を図る方法)に頼らざるを得ないはずです。

 しかし、ただでさえ忙しいプレーイングマネージャーである現場の責任者がOJTのトレーナーを勤めることは「OJTという名のほったらかし」が発生しやすく、入社したばかりの方が短期離職してしまうリスクが高いことを意識しておく必要があります。
 できれば現場のスタッフにトレーナーを任せたいものです。指導することにより、現場スタッフのスキル向上にもつながりますし、常に現場にいるスタッフは、OJT後も新人に手厚いフォローをすることができます。こちらのコラムも参考にしてみてください。
 うまくいくOJT、うまくいかないOJT

 労働人口自体が減少する中、人材不足問題は一朝一夕で解決できるものではなくなりつつあります。しかし、閑古鳥が鳴く店舗と行列ができる店舗があるように、人材に恵まれる店舗とそうでない店舗もあります。
 なんとなく取り組むのではなく、明確な理由をもって一つ一つに取り組んで、豊富な人材に恵まれる店舗にしていきましょう。

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