戦術と戦略の違い

 以前のコラムで、良い経営理念が満たしている条件の1つとして「戦略&戦術のヒントがあること」を挙げました。では、戦略と戦術はどう違うのでしょう。

「術」のつく言葉

 戦略と戦術。言葉だけを見ると戦略は戦の「略」であり、戦術は戦の「術」です。では、戦術に着目して、「術」の付く言葉を考えてみてください。果たして何個出てくるでしょうか?

 技術、芸術、美術、医術、手術、忍術、柔術、詐術、話術、奇術、魔術、武術、術中、術後、読心術、折衝術、投球術、錬金術、催眠術、護身術、技術士、芸術家・・・

 どうでしょう、「術」のつく多くの言葉が「個人のスキル」に依存している印象がないでしょうか。その人が持っている「術」がなければ、それはできない、といった印象です。

 これに対して戦略は「組織的に対応する」ことを意味します。

戦術志向の店長

 ガソリンスタンドはかつてはガソリンだけで収益が上がっていました。しかし、今やガソリン以外の商品を販売しないことには収益が上がりません。このコラムを読んで下さっている方の中には、ガソリンスタンドに給油に行って、色々とガソリン以外の商品を勧められた経験を持っている方もいらっしゃるかと思います。

 ガソリンスタンドの現場に長年、身を置いていると、様々なアルバイトスタッフが入社し、退社していきますが、たまに、高い販売技「術」を持ったアルバイトスタッフが入社してくることがあります。

 長年、販売の現場にいたわけでもない、車に詳しいわけでもない。しかし、その人が接客するとなぜかタイヤでもエンジンオイルでも洗車でも、販売できてしまうのです。

 このようなスタッフを部下に持った場合、戦「術」志向の店長と、戦「略」志向の店長では、対応が違います。
 
 戦「術」志向の店長は、高い販売技術を持ったスタッフの時給を大幅に上げるとともに、長時間の勤務をお願いします。可能であれば休日出勤も依頼します。シフトに入ってくれればくれるほど販売実績が上がるからです。業績が高い日はそのスタッフがいる日、業績が低い日はそのスタッフがいない日となるのです。

 そして、多くのパターンとして、そのスタッフは、長時間労働に疲れ果て、辞めてしまい、店舗の実績は、以前の販売実績に戻ってしまいます。

戦略志向の店長

 これに対して戦「略」志向の店長は、高い販売技術を持ったスタッフの行動を観察・分析します。

 ガソリンスタンドで働くスタッフの一般的な接客の流れは、以下の通りです。

 ①入店されたドライバーへ「いらっしゃいませー、こちらへどうぞ」と大きな声で挨拶する。
 ②「オーライ、オーライ」と給油場所まで誘導する。
 ③「レギュラー満タンでよろしいですか?」など、オーダーを伺う。
 ④給油ノズルを車両に差し込み、給油を開始する。
 ⑤窓ふき・車内のごみ片付け、ガソリン以外の商品のお勧めなどを行う。
 ⑥給油を終了させる。
 ⑦会計を行い、お礼を言った後に、お見送りをする。

 この一連の流れを、高い販売技術を持ったスタッフはどのように行っているのか観察し、他のスタッフとの違いを分析します。色々な違いがあるはずなのですが、その中で他のスタッフが真似できる部分を探します。

 例えば、顧客と会話をする際の立ち位置、目線の高さ、身振り手振り、クロージングのタイミングが違っていたとして、やはりその人でなければできないことは、当然たくさんあるのですが、立ち位置や目線の高さなどは、高い販売技術を持っていなくても真似はできるわけです。

 このような真似できる部分を全員で真似するように他のスタッフに伝達し、店舗全体の販売力を底上げしていくのが戦「略」志向の店長なのです。

 上記の例は、売れる仕組みを作る際のものですが、そのほかにも、遅刻をしない仕組み、店をきれいにする仕組み、スタッフの定着率を高める仕組み、顧客の再来店を促す仕組み、など各種の仕組みを検討していくことが、戦「略」を構築することと考えても良いでしょう。

戦術と戦略の違い

 つまり、戦「術」とは、個人のスキルに依存し、手と足を使って提供する、スタッフでも対応可能、となりますが、戦「略」とは組織的対応を行うために、頭を使って分析をする、経営者・店長レベルでなければ対応不可、となります。

 個人のスキルを活かした戦「術」を極めていくことも重要ですし、組織的対応を行う戦「略」を充実させていくことも重要です。ただし、経営者としては、店舗のマネジメントを行う現場責任者が戦「略」の観点を持てるように働きかけたいものです。

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