だから売れない。ガソリンスタンドでタイヤが売れない4つの理由

客単価向上

 「油外商品を売らないと給料が出ない」は業界で古くから言われてきた言葉です。ガソリンや軽油といった燃料油は、利益が薄かったり収益が不安定だったりするため、タイヤや洗車といった油外商品から得られる収益を多くのガソリンスタンドが追い求めてきました。

 ですが、油外商品はなかなか思うように販売することができません。そこで経営者は現場を預かる店長に「なぜ売れないのか」と追及したりしますが、その場合の店長が発する常套句は、特殊事情を抱えた店舗でない限り「人がいなくて」「客数が減ってしまって」の2つです。

 では、「人がいれば」「客数が増えれば」その店舗の油外商品は、売れるのでしょうか。私は「否」と考えます。それは、このような回答には、自店の視点はあれども、顧客の視点がないからです。

 売れない理由を売る側の立場から検討するだけでは片手落ちであり、買う側の立場からも検討することが必要です。当コラムではタイヤを例にとって、買わない理由を検証することを通じて、ガソリンスタンドで油外商品が売れない理由を探っていきます。

1.ガソリンスタンドでタイヤが売れない理由

 マーケティングは「売れる仕組みを創ること」と言い換えることができますが、以下の4つの視点から検討されます。

 製品戦略(Product):何を提供するか
 価格戦略(Price):いくらで提供するか
 チャネル戦略(Place):どこで仕入れ、どこで提供するか
 販売促進戦略(Promotion):どのように提供するか

 これら4つの戦略はセットで検討することが必要であり、各戦略の頭文字をとって「マーケティングの4P」と呼ばれますが、この4Pを顧客視点で検討するものが「顧客の4C」です。

 製品戦略(Product)→顧客にとっての価値(Customer Value)
 価格戦略(Price)→顧客にとっての経費(Cost)
 チャネル戦略(Place)→顧客の利便性(Convenience)
 販売促進戦略(Promotion)→顧客と事業者のコミュニケーション(Communication)

 そのガソリンスタンドから油外商品を買うことによって、この4つのCの充足が強く期待できる場合に顧客は購買を決めるでしょう。以下でこの4Cからタイヤの売れない理由を見ていきます。

ガソリンスタンドでタイヤが売れない理由(1)価値を訴求できていない

 まず検討するべきは、タイヤを購入することは、顧客にとって価値(Customer Value)があるかどうか、ということです。

 私は、ガソリンスタンド店長時代に、走行中にパンクし、ボロボロになったタイヤを店頭に展示していました。そして給油中に、摩耗したタイヤの車両を見つけると、顧客に店頭のボロボロタイヤを見せて販売していました。

 これをやりすぎると強引な脅し商法になってしまいますので、その辺のバランスは検討する必要はありますが、とてもよく売れました。これはタイヤが摩耗した現状では、安全に運転するという価値を失うことを訴求しています。つまり、購入することにより「価値を失わない価値」を得ることができる、ということです。

ガソリンスタンドでタイヤが売れない理由 (2)安いといえる根拠がない

 タイヤを購入するために顧客が負担する経費は、顧客にとっては低いに越したことはありません。ですが、あまりに低いとガソリンスタンドの利益が無くなってしまいます。

 私はガソリンスタンドの店長時代に、全国展開をしてテレビコマーシャルを流しているような近所の大手タイヤ量販店の価格よりも微妙に安く設定し、そのことを口頭で訴求していました。そして、4本セットで交換していただくと、端数を切ることにより、さらに安くなることを顧客に説明していました。

 この大手タイヤ量販店が有名であればあるほど、そこよりも安い価格設定は、消費者に与えるインパクトが大きくなります。

ガソリンスタンドでタイヤが売れない理由 (3)利便性を訴求できていない

 タイヤ量販店、ディーラー、整備工場などの競合と比べたガソリンスタンドの強みは、顧客が給油に訪れることです。このことは、タイヤを販売した後のアフターフォローが頻繁にできることを意味しています。

 したがって、タイヤを交換した後でも、給油でご来店いただいた際には、空気圧やホイールナットの緩み点検というアフターサービスの体制が整っていることを訴求すれば、顧客はガソリンスタンドでのタイヤ交換に利便性を感じることができるでしょう。

ガソリンスタンドでタイヤが売れない理由 (4)属人的なコミュニケーションに依存し過ぎ

 価値があって、安くて、利便性が高くても、それらがコミュニケーションを通じて顧客に伝わらなければ、購買には繋がりにくいはずです。コミュニケーションの手法としては、紙媒体、ネット媒体、そしてスタッフを媒体としたものがあります。

 紙媒体の代表はチラシであり、この活用方法として新聞折込、ポスティング、店頭ハンドアウトなどが挙げられます。ただし私の経験上、ポスティングはかけた時間の割に配布数が少なく、費用対効果は高くない印象です。

 ネット媒体は、ホームページ、SNSなどがありますが、今やホームページはネット上の名刺です。あるかないかで店舗の信頼性が違ってきますので、ない場合は作成をお勧めします。また、店舗としてSNSのアカウントを取ったら、取りっぱなしで情報発信がないと却って信頼感が低くなりますので、定期的に情報発信をするようにしましょう。

 多くのガソリンスタンドは、油外商品の販売をスタッフの販売力に依存し過ぎている印象があります。よって、コミュニケーションスキルの高いスタッフが退職や異動をしてしまうと、油外商品の売れ行きが鈍ることとなります。個々のコミュニケーションスキルだけでなく、店舗としてのコミュニケーション力にも目を向け、高めていくことが重要です。

 以上、ガソリンスタンドでタイヤが売れない理由は、(1)価値を訴求できていない、(2)安いといえる根拠がない、(3)利便性を訴求できていない、(4)属人的なコミュニケーションに依存し過ぎ、を挙げました。この4Cの観点は、タイヤだけでなく他の油外商品にも活用できますので、自店で強化したい油外商品に当てはめて、業績拡大に繋げていただければと思います。

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