低感染リスク型ビジネス枠で【不採択】だったダンス教室の事例③

小規模事業者持続化補助金

 同社は、ダンス教室の運営を主たる事業としていますが、新型コロナウイルスの影響により、対面接触のレッスンを避けたい生徒が退会・休会し、ダンス関連のイベントも中止が相次いだ結果、業績が厳しくなってしまいました。

 そこで、広告宣伝を強化するための費用を小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>で調達するべく、計画書を作成して応募したわけですが、残念ながら不採択となってしまいました。

 その計画書をもとに、不採択という結果を招いた想定理由を検証していきますが、今回のコラムでは、低感染リスク型ビジネス枠で【不採択】だったダンス教室の事例②に引き続き<補助事業計画>「1.補助事業名」からその理由を見ていきます。なお、当コラムの内容は2021年10月7日現在の情報に基づいています。

1.不採択の想定理由「補助事業名」編

 当補助金応募におけるルールブックである公募要領の「審査の観点」には、書面審査の項目として以下が掲載されています。

 これを見た限りでは補助事業名自体が採択・不採択に影響を及ぼすことはないと解釈できます。ですが、やはり補助事業名から不採択の理由は想定できるわけで、それらを以下で見ていきます。

不採択の想定理由「補助事業名」編(1)当補助金の目的を反映していない

 前述の公募要領の1ページには当補助金制度の事業概要として以下の記述があります。

 小規模事業者が経営計画及び補助事業計画を作成して取り組む、感染拡大防止のための対人接触機会の減少と事業継続を両立させるポストコロナを踏まえた新たなビジネスやサービス、生産プロセスの導入等に関する取組を支援するものです。

 この記述のポイントは、マーカー部分「対人接触機会の減少」「新たなビジネスやサービス、生産プロセスの導入等に関する取組」であり、これは「審査の観点」の書面審査においても審査項目として記載があります。

 よって、この2点を意識した補助事業を立案することが重要で、それができれば自ずと補助事業名もこの2点をうかがわせるものになるでしょう。具体的には「オンライン」「非接触」「新たな」「新規事業」といったキーワードが盛り込まれることとなります。ですが、同社の補助事業名はこれらを意識した形跡が一切ありませんでした。

不採択の想定理由「補助事業名」編(2)文字数が少なすぎる

 当補助金では事業名を30文字以内に収めなければならないルールがあります。その範囲内で当補助金の目的を意識したキーワードをできるだけ盛り込もうとすると、それなりの字数が必要になります。

 これに対して同社の補助事業名は20文字に届いていませんでした。確かに30文字以内というルールは守ってはいるものの、キーワードが盛り込まれていないため、補助事業名から補助事業の有効性が期待できるものにはなっていませんでした。

不採択の想定理由「補助事業名」編(3)内容が一般的すぎる

 同社は、当補助金で広告宣伝を強化しようとしたわけですが、仮に「広告宣伝強化による売上向上事業」や「コロナ禍における広告宣伝強化」という補助事業名であれば、これは当たり前のことを補助事業名で述べているに過ぎません。同社の場合、このような当たり前すぎる事業名になっていました。

 採択されると、補助事業名は事業者名などとともに公開されるわけですが、その中には、当たり前すぎるものがあることは事実です。しかし、それは少数派であり、採択された多くの補助事業名は、当補助金の目的を意識したものであることに留意する必要があります。

 今回のコラムでは、小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>で不採択だったダンス教室の計画書を題材に<補助事業計画>「1.補助事業名」から、不採択の想定理由として(1) 当補助金の目的を反映していない、(2)文字数が少なすぎる、(3)内容が一般的すぎる、を挙げました。次回はこれに引き続き「2.補助事業の内容」から想定される不採択理由を見ていきます。

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