石材店の事例から見る経営革新計画の書き方⑥

経営革新計画

 その石材店は元々墓石の販売を主たる事業としていましたが、駐車場に設置する車両の車輪止めの他、傘立てなどを御影石で作って市場投入するなど、独創的な商品展開を行っていました。そして自社の事業をさらに拡大させるべく、地元の商工会を通じて小規模事業者持続化補助金に応募しました。

 その際に、商工会の経営指導員の方から経営革新計画の策定を勧められ、これに取り組むこととし、弊社がそのご支援をしました。結果として同社は、経営革新計画の承認を取得しましたが、その作成プロセスを見て行きます。なお、経営革新計画承認制度の詳しい内容は以下のリンクをご参照下さい。

経営革新計画の策定支援について 

 下図は経営革新計画の構成ですが、今回のコラムでは下図赤枠部分「返済計画」「行動計画」の記載について述べていきます。

1.返済計画の書き方

 返済計画は、経営革新計画の期間中に事業資金がショートしないことを説明するものです。どんなに利益が出ていたとしても、利益イコール現金ではありませんので、事業資金がマイナスになってしまうと資金繰りが困難となり、事業が立ち行かなくなります。そこで返済計画でそのような状態にはなり得ないことを説明することとなります。

 事業資金は、営業投資財務それぞれの活動で増減しますが、計画期間各年度において、以下の計算式で事業資金の在高を見込みます。

  • 営業活動による事業資金=税引後利益+減価償却費
  • 投資活動による事業資金=設備投資額+資産売却収入
  • 財務活動による事業資金=新規借入額+借入金返済額+増資等

 このうち、投資活動による事業資金の「設備投資額」財務活動による事業資金の「借入金返済額」は出ていく現金ですので値はマイナスとなります。上記3つの活動の結果、算出された事業資金の合計額を前期末の事業資金在高に足すことで当期末の事業資金在高となります。これがマイナスになってしまうと資金繰りが立ち行かなくなりますので、借入金で埋めるなどの対策を盛り込む必要があります。

 同社の場合は、営業活動による事業資金財務活動による事業資金の動きは見込みましたが、投資も資産売却も予定していなかったので投資活動による事業資金の動きは見込みませんでした。

2.行動計画の書き方

 行動計画は、経営革新計画の期間中に「いつ」「誰が」「どのような」具体的行動を起こすのかを示したものです。弊社では行動計画策定について、縦軸に行動を、横軸に時間をとった表の作成をお勧めしています。

 今回の経営革新計画は、マーケティング活動がメインの計画内容となっていますので、それに関する行動の他、人材の雇用もしますので、人事に関する行動も起こす必要があります。よって、それぞれの活動をより具体的にして縦軸に並べました。

 また、今回の経営革新計画は3年計画ですので、横軸に3年の時間軸をとり、各年を3ヶ月毎の四半期に分割し、どの4半期に縦軸の行動を起こすのかを示しました。

 このようにして経営革新計画を策定しましたが、同社は元々製品の独創性に依存した販売をする姿勢が強く、自ら積極的に情報発信をしていないことに気付いていました。ですが、具体的にどのようにして情報発信をするべきかが分からない状況を経営革新計画の策定により、打破できる見通しが立ちました。

 そのような課題を抱えている事業者に対して、経営革新計画の策定をお勧めしますが、当コラムがその参考になれば幸甚です。

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