経営革新計画を活用した雑貨店の事例(後編)

経営革新計画

 経営革新計画を活用した雑貨店の事例を3回にわたってお伝えしてきたこのコラムですが、前編で【現状分析】を、中編で【事業領域】を取り上げました。今回の後編では、経営革新計画の【承認取得後の取組み】について見ていきます。

パブリシティの活用

 経営革新計画を活用した雑貨店の事例(中編)で見たように、同店は介護施設への出張販売をテーマに経営革新計画を策定し、県知事から承認を得ましたが、この際に承認書が発行されます。

 そして、同店は経営革新計画の内容を1枚の紙にまとめるとともに、承認書のコピーをとり、その2枚を大手新聞社10社にファックスし、自店の計画が県に認められたことをアピールしました。すると、ある新聞社から取材の申し込みがありました。それに基づいた当該新聞の記事を見た介護業界専門の新聞社から取材の申し込みがありました。

 その新聞にも記事として取り上げられた同店には、各地の介護施設から出張販売の依頼が殺到することとなりました。ただし、ここで胸をなでおろしてはいけないのです。

店頭の活性化

 同店の本質的な課題は、いかにして店頭を活性化させるかということです。それまで顧客の固定化策として実施していたのは、一定金額分のレシートを集めると割引券を発行するというものでしたが、これは顧客属性やプロフィールが分からず、同店からのアプローチができませんでした。

 そこで、経営革新事業である介護施設への出張販売で得た収益をもとにポイントカードシステムを導入し、顧客の氏名、住所、電話番号、購買履歴などを管理することとしました。

 このシステムの導入により、売上の8割を占める2割の顧客を抽出し、ダイレクトメールを発信したことで、上得意客の来店頻度が向上し、12年ぶりに売上が前年を超えることとなりました。そして現在は以下に示すように、さらに自店の強みを発揮した取組みを行っています。

弱みを強みに

 経営革新計画を活用した雑貨店の事例(前編)で見たように、同店の弱みとして「顧客の要望を深く吟味することなく商品を仕入れ続けた結果、需要の少ない在庫が増えてしまい、効率性が低下している」ことが挙げられますが、同店はこれを強みとして活用することとしました。

 需要が少ないのに在庫として持っている商品の一例を挙げると「ハエ取りリボン」「がま口」「雪駄」「洗濯板」「座敷ほうき」などがあります。これらはネット通販で探すと見つけることができるかもしれませんが、リアル店舗では置いているところはなかなかありません。当然のことながら需要が少ないからです。

 そこで、同店では当店にしかないものとして、このような懐かしくも需要の少ない商品の特設コーナーを設置しました。この売場近辺には、昭和のアイドルが歌った曲をBGMとして流しておきます。

 そして新聞折込チラシでこのコーナーを訴求したところ、相当数の集客がありました。とはいえ、需要の少ない商品が飛ぶように売れるわけではなく、顧客は単に興味を持って見に来るだけなのです。

 しかし、見に来たついでに食品や生活必需品を買っていく顧客が増え、売上も増加しました。そのような中で訪れたのが、新型コロナウイルス騒動です。

新型コロナウイルスの影響

 同店ではマスクや除菌グッズも販売しています。新型コロナウイルスの感染者が増加するとともに、これらが売れていくようになり、品切れになる日が増加してきました。しかし、大手のドラッグストアの品切れ頻度よりも、同店の品切れ頻度は非常に低い状況となっています。

 これは、仕入先から小ロットで分けてもらっているからです。つまり、強みである「付き合いの長い仕入先が多数存在し、関係性も構築されている」点を活用しているということです。

 これにより、顧客の来店頻度が増加し、その他の商品の販売も促進されています。さらには、マスク売場を前述の当店にしかないものコーナーと近い位置に配置して、同店の特徴を訴求するようにしています。

 老朽化の進む小規模なロードサイド店舗であっても、きちんと現状を分析し、明確な事業領域に基づく経営革新計画を打ち立て、その後も強みを活かした施策を打ち出すことにより、苦境から抜け出しつつあります。今回の事例紹介が、苦境にあえぐロードサイド店舗のご参考になれば幸甚です。

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