ガソリンスタンドで軽自動車に軽油を給油するミス防止の方策

 軽自動車に軽油を給油するミスを防止するには、軽自動車に軽油を給油できなくすればよいのです。当たり前と言えば当たり前なのですが、それを行っているガソリンスタンドは非常に少ない印象があります。

 少し古いデータになりますが、JAF(日本自動車連盟)は、ドライバーから寄せられた救援要請のうち「給油する燃料を間違えた」という理由が、2015年12月の1ヶ月間に全国で269件であったことを公表しています。JAFに対する救援要請をしなかったドライバーもいるでしょうから、ひと月に269件以上の誤給油が発生しているでしょう。

 当コラムでは、誤給油するとどうなるか、なぜ誤給油するのか、どうすれば誤給油を防ぐことができるのか、つまり、トラブルの想定、トラブルの原因、トラブルの防止法という観点から、誤給油防止策を見ていきます。

誤給油するとどうなるか

 ガソリンスタンドでは、ハイオク、レギュラーといったガソリンの他に軽油を扱っています。そして車は、ガソリンで動く車と軽油で動く車があります。
 誤給油の内容としては、軽油で動く車にガソリンを給油するケースは多くありませんが、ガソリンで動く軽自動車に軽油を給油するケースは非常に多く、これをやるとどうなるのかを新人スタッフや顧客に伝達しておく必要があります。

 ガソリンを燃料とする軽自動車に軽油を給油しても、エンジンはかかります。エンジン内にはガソリンがいくらか残っているからです。そのガソリンを使って車は走りますが、それがなくなると軽油がエンジンに送り込まれます。
 エンジンの構造上、そしてガソリンと軽油の成分の違いから、ここでエンジンが止まります。高速道路上では、後ろから来た車が迫り、危険が伴います。道幅の狭い一般道路では、渋滞の原因となります。

 そこで、前述のJAF(日本自動車連盟)や近所の整備工場、ガソリンスタンドに救援要請をして、レッカー車やけん引ロープなどを用いて車両を整備できる場所まで移動し、燃料を全て抜きます。その上で正規の燃料であるガソリンを入れます。

 よって、レッカー車などを用いた移動の費用、抜き替えの工賃、新たに給油したガソリン代がかかります。ガソリンスタンドの従業員が誤給油した場合は、これをスタンド側が負担します。

 セルフサービスのガソリンスタンドで顧客自身が誤給油したとしても、ガソリンスタンドのスタッフは顧客を監視する義務があり、監視義務違反を巡り顧客とトラブルになる可能性もあります。また、金銭面だけではなく、店側・顧客側双方に精神的な負担も発生し、顧客満足の低下にも繋がります。

 そのような誤給油はなぜ発生してしまうのでしょうか。

なぜ誤給油するのか

 「軽」自動車と「軽」油という名称の共通点が誤給油の大きな原因であることは間違いないはずです。「恋は盲目」と言いますが、「この車にはこの燃料」と思い込んでしまったら、その時点でアウトです。オレオレ詐欺も思い込みが背景にあります。

 余談めいた話になりますが、私はかつて取引先から「自宅で食べて」と松坂牛数百グラムの包みをいただいたことがありました。これを自宅へ持って帰ったところ、妻がすき焼きを作ってくれました。

 そのすき焼きの鍋に入っている肉。溶き卵に絡めて口に運んだところ、口の中でホロホロと溶けていくのです。さすが松坂牛は違う、と妻に述べたところ、今、私が食べた肉は、冷蔵庫内にあったスーパーから買ってきた残り物の肉であり、松坂牛はその肉を食べ切ってから入れるつもりだった、と言われました。

 スーパーの肉も松坂牛だと思い込んで食べると、口の中で溶ける(笑)。これが思い込みの力です。よって、思い込みを修正する前に思い込まないようにすることが重要です。

誤給油の防止策

 誤給油防止策として、顧客に対してもスタッフに対しても、以下の認識をさせる必要があります。

 1.その車が軽自動車であること
 2.ガソリンと軽油は別の燃料であること
 3.軽自動車はガソリンで動くこと
 4.軽自動車に軽油を給油すると走行中にエンジンが停止すること

 軽油や軽自動車の名称を変えたり、ガソリンと軽油の給油ノズルの色を変えたり、スタッフへ教育しても、思い込んでしまったらそれまでです。
 よって、軽自動車に軽油を給油できなくすればよいわけですが、上記4つの認識させるべきことをほとんど網羅しているのが下記の給油カバーです。

 市販品なのかオーダーメイドなのか、確認はとれていませんが、これにより、多くの誤給油が防止されることとなります。

 このような考え方をフールプルーフと呼びます。作業中のエクセルやワードなどを閉じる時に保存しないまま閉じようとすると「保存しますか」というメッセージが出ます。これは、ユーザーがミスをしても、そのミスをカバーするシステムを設計しようというアプローチです。
 上述の給油カバーも同様の発想で、軽自動車に軽油を入れようというミスをカバーし、その発生を防止します。

 ガソリンスタンドで軽自動車に軽油を給油するミス防止の方策として、今回は、給油カバーの設置を取り上げました。ベテランスタッフにとっては、軽自動車にガソリンを給油することは当たり前すぎるほど当たり前です。
 しかし、顧客満足を考えた場合、上述の給油カバーの導入は非常に効果的であるはずです。一事が万事と言います、このような取組みのできるガソリンスタンドは、あらゆる面で気が利いた顧客満足醸成の取組みが出来ているのではないでしょうか。

誤給油に関するコラム

 ■ガソリンスタンド事業者が人材不足を回避するための退職防止策
 ■セルフのガソリンスタンドは誤給油防止が油外商品販売の第一歩

メルマガ会員様募集中

 メルマガ会員様には、リアル店舗の現場経験20年以上、コンサルティング歴10年以上【通算30年以上のノウハウ】を凝縮した【未公開のコラム】や、当サイトに掲載したコラムの【解説動画URL】を優先的に配信しています。
登録はこちらから
↓↓↓

お探しのページが見つかりません。

電子書籍のご案内

 1年で70人のアルバイトに辞められたガソリンスタンド店長が人材に全く困らなくなった理由:育成編~人材が育つ職場と人材に見放される職場の境界線~
2020年3月15日発行 定価1,055円

タイトルとURLをコピーしました