ガソリンスタンド事業者が人材不足を回避するための退職防止策

経営の姿勢

仕事のミスが退職を呼ぶ

 あるガソリンスタンドで働く大学生のアルバイトさんが発した「心が折れました。辞めたいです」というメッセージに触れる機会がありました。その背景にあったのは以下のような状況でした。

 ガソリンスタンドは、車両の燃料としてガソリンと軽油を販売しており、車両によって使用するべき燃料が違います。そのアルバイトさんは、ガソリン車に軽油を給油してしまいました。

 そのままスタンドを退店された顧客の車両が路上で止まってしまった一報を受け、先輩がレッカー車を手配し、スタンドまでその車両を移動しました。燃料の抜き替えを行ったところ、一応事なきを得たものの、その対応に費やした時間は6時間に及びました。
 場合によっては廃車になる可能性もあり、数百万円の負担がスタンド側にかかってくる可能性もあったとのこと。

 そのようなミスをした自分が許せない。2年もスタンドでバイトをしていて、過去には2千円分と金額指定の受注をしたにもかかかわらず、満タンにしてしまい、差額を自腹で払ったこともあり、稼ぎに来ているのに支出が多いことも辞めたいと思わせた要因のひとつであったようです。

正確な情報を与える

 この話から、アルバイトさんが誤った認識を持っていることが伺えます。まず、誤給油でエンジンが破損することはあっても、廃車になる可能性は低く、最悪でもエンジンの載せ替えで済むことを認識させておくべきでしょう。
 エンジンの状況や整備業者にもよりますが、エンジンの載せ替えをしても数十万円で済む話です。誤給油を原因として、廃車にしなければならないケースは相当のレアケースと言えるでしょう。
 問題は、何故そのアルバイトさんがそのような認識を持ったのか、ということです。先輩社員などが誤った情報を吹き込んだのではないでしょうか。

 さらに、金額指定の注文に対して満タン給油をしてしまった場合に差額を負担させるのは、法律違反の可能性が高いことも認識しておく必要があります。スタンド側がミスをさせないような取り組みをしっかり行っていなかった可能性があるためです。

ミスしないようにするのが店舗の責任でもある

 一般的に、ミスをして周囲に迷惑をかければ、人は落ち込むものです。落ち込むとモチベーションも下がり、仕事の効率が悪化するでしょうし、今回のアルバイトさんのように退職を考える方も出るでしょう。結果として、人材不足に陥る可能性が高まります。

 誤給油を防止するためには、声出しや指差し呼称で確認を怠ることの無いようにしなければなりません。また、給油時に外す燃料タンクのキャップの匂いを嗅ぐと、ガソリンと軽油では明らかに匂いが違います。その匂いにより使用する燃料を確認することも必要でしょう。

 そのような指導を徹底せずして、ミスをしたアルバイトさん一人に全責任を被せるようなガソリンスタンドからは、人材が離れていくでしょう。
 退職代行業者という仕事があります。退職したいけれど本人が会社側へなかなか言い出せない場合に、本人から委任状をとって、法に則った形で退職手続きを代行する、というものです。労働力人口が減少する中、このような業者が出てくること自体、人材不足に陥る可能性が高まっていると言えるでしょう。

 ただでさえ、人材不足に喘ぐ事業者が多い中、ガソリンスタンド事業者が人材不足を回避するための退職防止策として挙げられるのは、人材に仕事上のミスを起こさせないために、指導・管理を徹底することと考えます。つまり、人材を大事にする職場に人材が定着する、と言えるでしょう。
 
 ところが、現場の店長が会社に大事にされた経験がないと、人材を大事にする方策が分かりません。人材不足に喘ぐガソリンスタンド事業者は、現場の店長を大事にしているか、顧みる必要があるでしょう。

人材不足に関する参考コラム

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