店舗スタッフが突然退職を申し出た際に経営者はどうするべきか

経営の姿勢

突然退職を申し出た女性スタッフ

 あるコンビニエンスストアの経営者が発した、以下の内容のご相談に触れる機会がありました。

 同店でアルバイトとして働く30代の女性パートさんから「今月いっぱいで辞めたい」とその経営者の元にLINEで連絡がありました。月末まであと20日しかありません。
 既に来月初旬までの勤務シフトも完成しており、そのシフトの期間中は出社して欲しいと伝えたところ、了承したようでしたが、後日、LINEで明日から有給休暇を取得したいと申し出がありました。
 労働基準監督署に確認したところ、彼女には21日間の有給休暇が認められるとのことです。しかし、突然一方的に、何の理由も示さずにLINEで退職を申し出てくる神経が解らない。周りのスタッフへも迷惑がかかりますし、有給休暇は認めたくありません。離職証明書も出したくありませんが、どうしたらよいでしょうか、という内容です。

判断基準を感情に委ねない

 この経営者は、おそらく突然辞められてシフトに穴が空くことに立腹され、また、ショックを受けて、有給休暇は認めたくないし、離職証明書も出したくない、と言っていると思います。
 しかし、有給休暇や離職証明書の取得は労働者の権利であり、法で保護されていますから、使用者は有給休暇を消化させ、離職証明書を発行する義務があります。法律で判断することを感情で判断してはいけない、ということです。

 確かに、突然明日から来なくなるという辞め方は、常識を欠いていると言っても良いでしょう。しかし、この経営者は、そのような辞め方をするスタッフを有給が21日も発生するほどの勤務量で働かせていました。
 有給休暇が21日取得できる条件は、勤務期間が6年半以上、週5日もしくは30時間以上勤務した場合になりますので、彼女はその店舗の主力メンバーと言えるでしょう。
 常識を欠いた辞め方をするスタッフを長年、主力メンバーとして活用してきたご自身に、そのスタッフを非難する妥当性があるのでしょうか。

被害者になってはいけない

 「まさか、このような辞め方をされるとは思わなかった」、「LINEが来るまでは、辞める素振りすら見せなかった」と、この経営者は思っているかもしれません。ですが、それは経営者が、そのスタッフに興味を持っていなかったから、その前兆が見えなかったのではないでしょうか。

 経営者は被害者の立場からご相談をしていますが、経営者に興味を示してもらわずに6年以上もの間、フルタイム勤務に近い労働をしてきたこのスタッフも被害者なのではないでしょうか。

 そもそも、害を被るから被害者なわけです。今回の件で、経営者が「被る害」は、シフトの作り直し、新規スタッフの募集・採用・育成、彼女の代わりが見つかるまでの店頭業務、といったところでしょうか。
 しかし、これらは「被る害」なのでしょうか。ロードサイド店舗の経営者における日常業務なのではないでしょうか。

 さらに、これを契機に、経営者のスタッフに対する接し方を見直す必要があるでしょう。1人1人に興味を持ち、定期的に面談を行う。何でも言える風土を作る。コミュニケーションの場を設ける。
 そのような店舗改善・改革のきっかけとなるのなら、今回の女性スタッフの退職から受けるメリットはあれども、被害など何もないのかもしれません。

 立腹される気持ちは、13年間ガソリンスタンドの店長を務めた私も痛いほど分かります。ですが、被害者になったままでは、第2第3の被害がやってきます。なぜなら、店舗としての改善・改革という進歩がないからです。店舗スタッフが突然退職を申し出た際に経営者は自身の店舗を良くするチャンスがやってきたと発想を切り替えて事に当たる必要があるのです。

スタッフの退職に関する参考コラム

 ■ガソリンスタンドで働くアルバイトの仕事がきつい本当の理由
 ■人材不足の中で生き残るガソリンスタンドが行うべき定着率の向上
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