ガソリンスタンド経営者に捧げるタイヤ販売のセールストーク

人材育成

 ガソリンスタンドではガソリンや軽油といった燃料油の需要が縮小しており、客数が減少傾向となっています。売上は客数と客単価のかけ算で算出されますので、売上を維持しようとするなら、客単価の向上を図る必要があります。

 そこで、エンジンオイルやタイヤなど燃料油以外の商品(油外商品)を販売するわけですが、かつてガソリンスタンドにおける油外商品の販売は、詐欺まがいのことを行う店舗もありました。そのため、現在でも押し売りと言われる場合があります。

 今回のコラムでは、この押し売りのイメージを和らげるセールストークをお伝えします。なお、これを経営者が知っておくと人材育成にも役立つため、コラムのタイトルを「経営者に捧げる」としています。

タイヤ販売の例

 まずはガソリンスタンドで、スタッフが顧客にタイヤ交換をお勧めする際のやり取りを見ていきましょう。

 スタッフ「タイヤは前回どちらで交換されましたか」
 顧客「覚えていない」
 スタッフ「当店には整備士が2名いましてその者が交換作業をします。価格もタイヤ専門店より安いです。今、価格表を持ってきますね。」
 顧客「急ぐからまた今度でいいよ」

 こんな風にあっさり断られてしまいましたが、これを以下のようにしたらどうでしょう。

 スタッフ「タイヤは前回どちらで交換されましたか」
 顧客「覚えていない」
 スタッフ「そうですよね、いちいち覚えてられないですよね」
 顧客「うん」
 スタッフ「お客様のタイヤはそろそろ交換時期ですが、交換するお店は決めていないんですよね」
 顧客「うん」
 スタッフ「当店には整備士が2名いましてその者が交換作業をします。価格も大手量販店より安いです。価格表を持ってきましょうか。」
 顧客「うん」

 必ずしもこうはいかないとは思いますが、前例よりは売れる可能性は高そうです。ポイントは「そうですよね、いちいち覚えていられないですよね」と顧客の話を受け止め、認めている点です。では、経営者と店長のやり取りでこの手法を用いた場合を見ていきます。

経営者と店長の例

 経営者が現場を預かる店長を案じて、面談の機会を設けたとします。その際のやり取りを見ていきます。

 経営者「最近、スタッフは揃っているの?」
 店長「いえ、どうしても人手不足で」
 経営者「じゃ、定着率向上のためにスタッフのモチベーションを上げる取組みを考えてみようか」
 店長「はい…」

 店長の納得感は高くなさそうです。定着率向上のための施策は数あれども、そもそもなぜモチベーションについて考えなければならないのかが不明です。そこで、以下のようにしたらどうでしょう。

 経営者「最近、スタッフは揃っているの?」
 店長「いえ、どうしても人手不足で」
 経営者「それは辛いね。疲れちゃうね」
 店長「まぁ…」
 経営者「人手が不足すると結局店長が長時間労働せざるを得なくなるもんね」
 店長「はい」
 経営者「従業員満足って、標準化、能力開発、モチベーションから構成されてるって知ってた?」
 店長「あ、そうなんすか」
 経営者「君の店で改善の余地があるのは、この3つのうちどれかな」
 店長「モチベーションですかね」
 経営者「モチベーションを上げる取組みを考えてみようか」
 店長「わかりました。」

 先ほどよりは店長の納得度は高そうですが、前述のスタッフと顧客のやり取り同様、相手を受け入れた「それは辛いね。疲れちゃうね」がポイントになっています。

円滑なコミュニケーションとは

 組織は単なる人材の集合体ではありません。経営学者のチェスター・バーナードによると、共通目的、貢献意欲、コミュニケーションが揃って初めて組織となります。今回はこの組織の3要素のうち、コミュニケーションを取り上げました。

 良好なコミュニケーションは総じて「共感」が醸成されています。相手の発言を受け「わかるー」と返すことが、相手にとっては受け止めてもらえたと感じることになります。人材育成に課題を抱えるガソリンスタンドの経営者は、是非実行すると同時に、店長にも教えてあげてください。

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