ガソリンスタンドスタッフ退職防止方法

　あるガソリンスタンドのスタッフは、入社後しばらくしてから、洗車やエンジンオイルなどガソリン以外の商品（油外商品）を販売するように言われました。ですが、販売力に自信がないので退職しようか思案している、という悩みに触れる機会がありました。

　私がガソリンスタンドの現場に21年間身を置いた経験に基づいて言えるのは、ガソリンスタンドは人材の定着率が高くないこと、そして、スタッフのホントのホントの本音である退職理由の№1は油外商品を売りたくない、ということです。

　そこで今回のコラムでは、油外販売をしながらスタッフの退職を防ぐという都合のいい？方法を検討していきたいと思います。

ガソリンスタンドスタッフの退職を防止する方法1：店長の能力開発に取組む

　なぜ、スタッフが油外商品を売りたくないかというと、声を掛けても売れないからです。ですから、前述の退職理由である「油外商品を売りたくない」という表現をさらに正確にするなら「徒労に終わる仕事をしたくない」という表現になるでしょう。

　よって、退職を防止するには、成果を出させることです。ここで経営者が部下の店長に対して「売らないと店がなくなるぞ」などと脅迫したり、「四の五の言わずにとにかく売れ！」と精神論に走ったりすると、店長は現場でスタッフに同じことをして、販売ではなく退職が促進されます。

　そうならないためには、まずは経営者が店長の部下育成に関する能力開発をして、学ぶことは面白いということや、自分の能力は伸びるということに気付いていただく必要があります。この際に有効なのは、トレーニングやティーチングといった押し込み型教育ではなく、コーチングといった引き出し型教育の手法を伝えていくことです。

　なお、コーチングに関しては以下のコラムを参考にしてください。これらを店長に伝えるだけで変化が表れる可能性が高まります。コラムの内容を咀嚼し、あくまでも経営者の言葉で伝えていってください。
　ロードサイド店舗の店長が身に着けたいコーチングの基本スキル
　研修やセミナーを受講して成果を出す店長に見られる2つの特徴

ガソリンスタンドスタッフの退職を防止する方法2：店長にスタッフの能力開発をさせる

　店長の能力開発としてコーチングを伝えていくだけでなく、その後にスタッフの育成に関する店長の取組みをフォローしていく必要があります。

　現場スタッフを育成するためにどのような取組みを行っているのか、その際に困っていることは何か、その困りごとを解決するために経営者として出来ることは何か、など傾聴と質問を繰り返してフォローしていく必要があります。

　一般的に経営者は「聞く」ことよりも「話す」ことに熱心な印象があります。そして、耳だけを使う「聞く」よりも体も心も使う「聴く」の方が、店長の育成に「効く」こととなりますので意識したいところです。

　この「聴く」に関しては以下のコラムを参考にしてください。
　売上が厳しい店舗の店長はなぜ部下の話を傾聴できないのか
　傾聴力とリーダーシップ

ガソリンスタンドスタッフの退職を防止する方法3：スタッフにスタッフの能力開発をさせる

　私がガソリンスタンドの店長だった頃、ある経営コンサルタントに以下の質問をしたことがあります。

　「アルバイトスタッフの能力開発をしても、学生のスタッフはいずれ就職で辞めてしまい、また新規のスタッフに一から能力開発をしなければいけません。アルバイトスタッフの能力開発に意味があるのでしょうか？」

　この際の答えは「能力開発の目的は、能力開発の文化を作ること」でした。つまり、スタッフの能力開発に注力することにより、その職場には能力開発に注力する文化が醸成され、それはスタッフが入れ替わろうとも受け継がれ、結果として人は育ちやすくなる、ということです。

　よって、店長はスタッフの能力開発に努めるとともに、先輩スタッフに対して、後輩スタッフの能力開発を実施させる必要があります。あるガソリンスタンドでは、新人スタッフのOJT（On-the-Job Training：職場で仕事をさせながら行う能力開発）で先輩のアルバイトスタッフにトレーナーを務めさせたことにより、教える方も教わる方も能力開発が促進され、大きな成果を挙げました。

　今回のコラムでは、ガソリンスタンドスタッフの退職を防止する方法として、1．店長の能力開発に取組む、2．店長にスタッフの能力開発をさせる、3．スタッフにスタッフの能力開発をさせる、を挙げました。

　事業が小規模であればあるほど、人材という経営資源が大きな影響力を持ちますので根気強く能力開発に努めていきましょう。