ガソリンスタンドが油外商品の選択と集中ができない3つの理由

経営の姿勢

 ガソリンの利益が不安定な状況で、ガソリンスタンドが生き残るには、洗車、車検、レンタカーなどガソリン以外の商品、つまり油外商品の販売が必要ですが、油外商品も多岐に渡ります。しかし、何を軸に展開すればいいのか正直迷ってます。

 あるガソリンスタンドで働く方が抱く、このような趣旨のご相談に触れる機会がありました。油外商品は、大きく有形物と無形物(サービス)に分かれます。有形物は、エンジンオイルやパーツなどがあり、さらにエンジンオイルもパーツも様々なものがあります。無形物(サービス)は、洗車、各種作業などがあり、さらに洗車も各種作業も様々なものがあります。

 私の経験上、油外商品の販売で大きな業績を挙げているガソリンスタンドは、油外商品の選択と集中を行っているケースが非常に多い印象があります。油外商品の全種類を大量に売って利益を確保していくのは無理があり、無理を通そうとすると押し売りとなって、消費者は嫌悪感を抱くこととなります。

 こんな当たり前のことはガソリンスタンドの経営者も分かっているはずですが、多くのガソリンスタンドが収益に苦しんでいるところを見ると、油外商品の選択と集中が出来ていないことが見て取れます。そこで今回のコラムでは、油外商品の選択と集中ができない理由を検証することにより、収益向上策を考えてみます。

1.ガソリンスタンドが油外商品の選択と集中ができない理由

ガソリンスタンドが油外商品の選択と集中ができない理由(1)各商品の販売予算があるから

 ある複数のガソリンスタンドを運営していた企業では、本社直轄の5人の販売統括担当を置いていました。各担当は、オイル、洗車、車検、タイヤ、バッテリーの販売管理を担当し、傘下のガソリンスタンドで自分が担当する商品の業績が悪いとフォローする、という体制をとっていました。

 もっともフォローといっても、電話で喝を入れるというものです。なぜならこれら担当者は現場の店長だったり、エリアマネージャーだったりなど複数の役割を担っていたため、全店に対して手厚いフォローは出来なかったからです。

 ですが、現場を預かる店長にしてみると1日に5人の担当から電話がかかってくることもあります。1人の担当と30分話をしても150分、2時間半は電話対応に追われてしまい、店長は仕事どころでは無くなってしまい、結果として効果を上げることが出来なくなってしまいました。

 よって、本社と店長の協議のもと、各店舗の油外商品全体の販売予算を決めたら、各商品の販売予算の振り分けは店長に任せ、何に選択と集中をするのか、明確にさせることをお勧めします。それにより、店舗の販売方針が明確になり、主体性を持って店長は戦略を検討することが可能となります。

 その戦略が拙速なものだったり、効果が疑われるものにならないよう、予算組みの段階で本社は支援することが重要なのではないでしょうか。

ガソリンスタンドが油外商品の選択と集中ができない理由(2)選択と集中の基準がないから

 油外商品の選択と集中が必要と言われても、どのようにして油外商品を選択するべきか分からない場合もあるはずです。私がこれまで見てきた中では、以下の基準で選択したケースがありました。

 1.店長が売りたいものを選択する
 2.利益率が一番高いものを選択する
 3.店舗で最も販売力の高いスタッフが得意なものを選択する
 4.需要の多いもの(売上の大きいもの)を選択する
 5.人手を煩わせなくて済むもの(自動交換機で作業できるATFなど)を選択する

 上記1つの基準を用いても良いですし、複数の基準を組み合わせても良いでしょう。要は、その店舗にとって一番売りやすいものを選択し、それのみに絞って販売すれば効果は出やすい、ということです。

ガソリンスタンドが油外商品の選択と集中ができない理由(3)カーライフ全般の面倒を見ようとするから

 カーライフ全般の面倒を見ることで、幅広く油外商品を販売することが可能となります。ですが、その取組みは、総合病院を目指していると言え、結果としてその店舗の専門性やウリを失っているとは言えないでしょうか。

 総合病院に対して専門医院があります。それは、内科や外科、耳鼻科など各専門領域があり、それに絞った事業展開をしています。これにより、ある一定領域での№1を目指し、患者を確保していきます。ガソリンスタンドも、タイヤの専門医、洗車の専門医など、販売する商品を選択し、専門性を高めることで、その領域ではトップになることが生き残りの道と言えるでしょう。

 一般的に、日本で一番高い山(富士山)や一番大きい湖(琵琶湖)はすぐに名前が出てきても、二番目に高い山(長野県南アルプスの北岳)、二番目に大きい湖(茨城県の霞ヶ浦)の名前は出てこないものです。その領域で一番になれば、消費者の認知も高まり、カー用品店やディーラーから顧客を奪うことも可能と言えます。

 本日のコラムでは、ガソリンスタンドが油外商品の選択と集中ができない3つの理由として、(1)各商品の販売予算があるから、(2)選択と集中の基準がないから、(3)カーライフ全般の面倒を見ようとするから、を挙げました。

 なお、店長自身が油外商品の選択と集中を申し出ることは多くありませんので、本社主導で選択と集中を進めていくことにより、効果の出る可能性が高まります。

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