童謡「サッちゃん」から生き残るガソリンスタンドを考える

経営の姿勢

言葉の定義

 「三上さん、電子書籍を出版しましょう。電子書籍の『れんだ』はマーケティングに有効なんですよ」弊社と契約しているコンサルタントから、かつてこのようなアドバイスをいただきました。

 「『れんだ』って何ですか」と聞いたところ、「連打」つまり、何冊も続けざまに出版することを指しているのだそうです。つまり「れんだ」という言葉の定義を私が聞かなかったら、私はこのアドバイスの意味が分からなかったということになります。

 よって、話の中で重要なキーワードは定義付けが必要になり、それが、コミュニケーションに大きな役割を果たしますが、ガソリンスタンド業界では、独特な定義付けをされた呼び名があります。

「ガソリンスタンド」と「サービスステーション」

 ガソリンスタンド業界では、自店のことを「サービスステーション」略して「SS(エスエス)」と呼ぶ方が多いです。これは、使っている人が意識しているかどうかはさておき「当店はガソリンを提供している店ではなく、サービスを提供している店なんですよ」という意味が込められています。

 よって、新人スタッフは店長や管理職から「自店のことをガソリンスタンドと呼んではいけない、SSと呼びなさい」と指導されますが、この場合、「ガソリンスタンド」という言葉の定義は「ガソリンを提供する店」、「サービスステーション」という言葉の定義は「サービスを提供する店」ということになります。

 ところが、一般の消費者は「ガソリンスタンドに行ってガソリン入れてくる」とは言いますが「サービスステーションに行ってガソリン入れてくる」とは言わないはずです。世間一般での呼称と業界の呼称が違うわけです。

受け入れられてこそ意味を持つ「言葉の定義」

 つまり一般消費者は、ガソリンスタンドを「サービスを提供する店」とは見なしていない、ということです。にも関わらず、業界では自店のことを「サービスステーション」略して「SS(エスエス)」と呼びます。

 どんなに言葉の定義をしても、相手に受け入れられなければその言葉は意味を持ちません。「トマトとは白い生クリームに覆われた円形の洋菓子のことである」と定義付けをしたところで誰も受け入れないということです。トマトはトマト、ケーキはケーキ、ガソリンスタンドはガソリンスタンドです。

呼び名だけでは中身は変わらない

 「サッちゃん」という童謡があります。「サチコ」という幼女は自分のことを「サッちゃん」と呼びますが、それは年端がいかないから、という歌です。これを上記の話に置き換えてみます。

 「SSはね ガソリンスタンドっていうんだ ほんとはね だけどちっちゃいから自分のことSSって呼ぶんだよ おかしいな SS」

 「ちっちゃい」は「未熟」と読み替えることが可能です。呼び方については、人それぞれ色々な考え方があって良いと思います。ですが、呼び方よりも重要なことに気が付かなければ「未熟」と言われてしまうのではないでしょうか。

サービスマーケティングに目を向ける

 本当に真の意味でサービスステーションとなって、厳しい情勢の中、生き残っていくならば、物販業ではなく、サービス業としてのマーケティングに基づく取組みが重要です。

 この、サービスマーケティングは、高い顧客満足は従業員と顧客との関係性がポイントとなり、高い顧客満足を提供できる従業員は、企業との間で高い従業員満足を得ている、という考え方です。

 そして、従業員満足は、標準化、能力開発、モチベーションから構成されます。詳しくは以下のコラムを参考にして下さい。
 ガソリンスタンドが従業員満足の向上に取り組むべき理由とは

 今回のコラムでは、「連打」という言葉の定義から、ガソリンスタンドとサービスステーションの定義、そして、呼び名よりも重要なこととしてサービスマーケティングを取り上げました。本質を見失わず、生き残る店舗になるヒントとなれば幸甚です。

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