ガソリンスタンドの人材育成において社員価格がもたらす弊害

経営の姿勢

スタッフだけが受けられる割引

 多くの小売業同様、ガソリンスタンドで働くスタッフは、その店舗で扱う商品を割引価格で購入することが可能です。ガソリンであれば、5円~10円程度の割引、油外商品においては原価にわずかな利益だけを乗せた価格で購入することができる店舗がほとんどではないでしょうか。

 ガソリンスタンドの運営会社が、福利厚生の一環として実施しているこの社員価格制度ですが、スタッフは安く購入でき、店舗としてはタイヤなど販売数量を稼いでリベートを狙いたい商品については、販売数量を稼げるメリットがあります。

視野が広がらない

 ガソリンスタンドに限らず、多種多様な店舗を見ることは、視野を広げ、それによる新たな視点や刺激を得ることが出来たり、アイデアを想起させたりさせます。

 私は、埼玉県川越市のガソリンスタンドに勤務していた頃に、地域一番店と呼ばれた近所のガソリンスタンドで給油をして、その接客の迫力に圧倒されたことがあります。
 その店舗を調べたところ、何店舗かチェーン展開している会社が運営する店舗のひとつであり、その会社は、月間のガソリン販売量が日本で初めて1,000㎘を超えたという店舗も傘下に持っていました。
 そのような店が近所にある、という意識が自店の運営に喝を入れてくれました。

 社員価格という割引制度は、商品の割引を得るために自社で買物をする、ということになります。自店で働くスタッフが自店で買物をするその行為に、視野の広がりは期待できません。

福利厚生と人材育成を両立する

 例えば、ガソリンの販売価格が140円だとして、そこで働くスタッフは、社員価格としてガソリンを店頭価格より10円/ℓ安い130円で給油出来るとします。
 この場合、スタッフは自分の車へ、自店で給油するのではなく、他店で給油し、領収書を持ってきていただき、社員価格である130円/ℓとの差額を支払うというのはどうでしょう。
 経費処理は、そのスタッフに差額分の領収書を書いてもらえば良いでしょう。

 洗車にせよ、エンジンオイルやタイヤ交換にせよ、同様の制度とすることにより、スタッフは他店でそれらを購入し、他店の接客や作業手順に触れることが可能となります。その感想をミーティングなどで共有することにより、個人だけでなく店舗として視野が広がり、新たな取組みのアイデアが生まれたり、販売意欲が向上したりする可能性が高まります。

 なお、この取組みは、スタッフが自店で買わないことになりますから、タイヤなど販売数量を稼いでリベートを狙いたい商品については、販売数量を稼げるというメリットが喪失されます。ですが、新たな取組みのアイデアや販売意欲の向上というメリットは、販売が促進されますので、帳消しになるのではないでしょうか。

 また、それが実現されるように、店長やそれに準ずる管理職は、他店で購入した感想を積極的にスタッフから引き出す必要があります。そのようにしなければ、他店をあえて利用する意味も薄れてきます。

 ガソリンスタンドの人材育成において社員価格がもたらす弊害のひとつとして、スタッフの視野が狭まり、現状の意識や取組みから脱却できない、ということが言えると思いますがいかがでしょうか。

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