店長に不正を起こさせないために評価項目を見直すべき理由

経営の姿勢

店長が犯した不正の内容

 複数店舗を展開するガソリンスタンド運営会社の傘下店舗を任せられていたある店長の話です。

 ある日、この店長は店舗の清掃に使う洗剤を買うためにホームセンターを訪れました。店内で洗剤を見繕っているうちに、この店長の自宅で使っている洗剤が切れていることを思い出しました。
 そこで、自分が預かっているガソリンスタンド用の洗剤と、自宅用の洗剤を買物かごに入れ、会社の金銭で購入し、レシートをもらいました。会社の経費を自身の生活費に流用したのです。

 最初は、微々たる流用額でした。しかし、洗剤だけでなく、洗面用具や雑誌など、徐々にその額が大きくなっていき、ついには本社から、レシートの内容について問い合わせを受けることになりました。そして、経費の私的流用が発覚したこの店長は、退職を余儀なくされました。

なぜ不正が発生したのか

 この会社では、年2回のボーナス時と年1回の昇給時に、人事考課がなされます。その内容は、数値で表すことのできる業績考課とそれで表すことの出来ない情意考課で、立場が経営陣に近くなればなるほど、業績考課の割合が高く、情意考課の割合が低くなってきます。

 業績考課の項目としては、燃料油の販売量、油外収益、経費、店舗の利益、事故・トラブルの有無であり、情意考課の項目としては、積極性や責任感など仕事への取組み姿勢といったものでした。

 この評価項目で着目するべき点は、利益の前提である売上高が評価項目に入っていない、という点です。このことは、店長が燃料油の販売価格を決定できないということを意味しています。事実、この会社では燃料油の価格決定における権限は店長ではなく本社にありました。自店で取り扱う、それも主力商品の販売価格を決定できない方を店長と呼べるのでしょうか。

権限責任一致の原則

 組織構造を決定する際に適用される原則はいくつかありますが、その中に「権限責任一致の原則」というものがあります。
 これは、経営者が部下に責任を負わせる場合は、同等の権限も与えなければならない、というものです。店舗の全責任を与えるのであれば、それ相応の権限も与えなければならない、ということです。

 ところが、責任が大きく、権限が少ない店長が非常に多く、これが度を過ぎると「名ばかり管理職」となるわけです。そのようなアンバランスな状態では、「権限が少ないからこれくらい良いだろう」という考えの下、上記の店長のような不正が起こりがちになります。

 そして、この不正は一旦やってしまうと、徐々にエスカレートしてきます。廃校になった校舎の窓ガラスにある日、ちょっとしたヒビが入ると、あちこちのガラスへ一気にヒビが入る、と言われます。

 店長に不正を起こさせないために評価項目を見直すべき理由は、責任を果たすことに必要な権限を与え、権限の少なさから出る甘えを断つため、と言えるのではないでしょうか。

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