何故その経営者は架空在庫により売上原価を操作したのか

経営の姿勢

仕入と在庫と売上原価

 多くのガソリンスタンドには、車を洗う洗車機が設置されています。そして、洗車機を稼働させると、洗剤なりワックスなりが消費されることとなります。多くの店舗では、これを売上原価として計上します。

 月初めに、洗剤・ワックスが10ℓ在庫されていたとします。その月に洗剤・ワックスを40ℓ仕入れ、1回も洗車機が稼働しなかったとしたら月末には、月初めの10ℓと仕入れた40ℓの合計50ℓが在庫されていなければなりません。
 しかし、棚卸をしたところ30ℓの在庫だった場合、20ℓが消費されたこととなるため、売上原価として20ℓ分の金額が計上されます。

 このことは、棚卸の在庫を多く計上すれば、つまり架空在庫により、売上原価を少なく計上できることを意味しています。

辞めて良かったと言われる会社

 ある親会社に勤務する部長クラスの社員が、経営者として子会社のガソリンスタンド運営会社に赴任していました。そして、親会社に自社の業績を好調に見せるために、長年、この手法で粉飾決算を行っていました。しかし、この粉飾決算を親会社に見抜かれ、同社を退職し、他社へ転職することになってしまいました。

 当事者である彼が転職して数年後、久しぶりにお会いする機会がありました。経営者ではなく、中間管理職として働く彼と数年ぶりに会って驚いたのが、その顔色の良さでした。ガソリンスタンド運営会社の経営者だった頃は、顔色が赤黒く、どこか不健康な印象があったのですが、その立場を追われ、他社の中間管理職として働いている現在は、健康的な顔色になっていました。

 不正をしてでも会社に認められたい、というプレッシャーから解放され、今は蕎麦打ちという趣味を楽しみながら仕事をしていると明るく笑う彼は、ガソリンスタンドの経営者時代よりも充実している印象を受けました。

 彼の「あの会社を辞めて良かった」という言葉を聞きながら、退職者に「辞めて良かった」と言われる会社に現在勤務する人々は、現在どういう心持ちで働いているのだろうと複雑な気持ちになりました。

不正が発生した場合の対応

 コンプライアンスの重要性が高まる昨今、粉飾決算を行うことは由々しき事態です。その理由は様々あると思いますが、真の問題は2つあると思います。

 1つ目の問題は、不正を働いた者の問題、つまり、なぜ不正をしてでも会社から認められたいと思ったのか、という点です。
 2つ目の問題は、不正を働かせた側の問題、つまり、なぜ不正をしてでも会社から認められたいと思わせたのか、という点です。
 ざっくり切り分けると、1つ目の問題は個人の問題、2つ目の問題は組織の問題であり、この2つ目の問題を解決しない限り、組織としての成長が見込めないのではないでしょうか。

 よって、不正が発覚したら、当事者の処分に留まらず、企業は今後何を改め、どのような行動をとるのかをステークホルダーに明確に示す必要があるでしょう。端から見た限りでは、上記の事例に登場する会社にはそれがありませんでした。そのせいかどうかは分かりませんが、その子会社は、今はありません。

参考記事

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