部下を罵倒する経営者のガソリンスタンドが儲からない理由

経営の姿勢

 「四の五の言わずに、とっとと売れ!」「売らなきゃクビだぞ、クビ!」「やる気あんのか?」

 複数のガソリンスタンドを展開する、ある企業の経営者は、店長会議の場で、業績の悪い店長をこのような言葉で罵倒していました。店長達はこれを恐れて業績を出そうとしますが、なかなか思うように売れず、また罵倒されるということが繰り返されていました。その後、人材はどんどん退職していき、この経営者は粉飾決算に手を染め、会社を追われることとなりました。

 私は21年間で7つのガソリンスタンド運営会社を渡り歩きましたが、この業界は精神論が幅を利かせる業界だという印象を持っています。よって、冒頭のような厳しい言葉が発せられがちですが、それが自社の首を絞めることに気が付く必要があります。

 今回のコラムでは、冒頭のような言葉で部下を罵倒する経営者のガソリンスタンドが儲からない理由を通じて、生き残るガソリンスタンドの条件を見ていきます。

ある耳鼻科医院の張り紙

 ある耳鼻科の医師が自院に以下の趣旨の張り紙をしました。

 「小さな子供さんが受診した時に耳垢をとったり、鼻水を吸引したりします。この際に子供さんは嫌がりますが、『(イヤな思いをさせて)ごめんね』『イヤだったね』と言うお母さんがいます。治療は病気を良くするための行為ですので、是非『がんばったね』『早くよくなろうね』と声掛けをしてください。『ごめんね』『いやだったね』だと、こちらも悪いことをしているようで悲しくなります。」

 「がんばったね」「早くよくなろうね」とポジティブな言葉を受けた子供は、治療を前向きにとらえる可能性が高まります。反面「ごめんね」「いやだったね」とネガティブな言葉を受けた子供は治療に後ろ向きになる可能性が高まります。このように言葉は使い方ひとつで相手の意識や行動に様々な影響を及ぼします。次に、これに関連した実験を見ていきます。

ある大学での実験

 ある大学で以下の実験が行われました。

 大学生をいくつかのチームに分け、各チームに単語群を与え、それから短い文章を作ってもらいます。そのうち、あるチームにだけは「しわ」「杖」「白髪」「腰痛」など高齢者をイメージさせる単語を混ぜました。

 その後、この大学生メンバー全員に、別の場所へ歩いて移動してもらいました。その結果、高齢者をイメージさせる単語を混ぜたチームのメンバーは、他の大学生よりも歩く速度が遅かったという結果が出ました(ニューヨーク大学 ジョン・バルブの実験)。

 このことは、人間は自分が触れた言葉に行動が影響されることを意味しています。そして、私たちが日々触れる言葉の中で、一番触れているのは、自身が発した言葉です。よって、優しい言葉を使えば優しい人になりますし、乱暴な言葉を使えば乱暴な人になるということです。

経営者の言葉は重い

 これまで見てきたように、言葉はその使い方によって、相手の思いも自分の行動も変える力を持っています。特に、経営者の言葉は会社のリーダーとして重みをもっています。その経営者が部下を罵倒するような乱暴な言葉を使っていると、部下は委縮し、不満を抱えながら仕事をしますし、何より経営者自身が乱暴な人になっていきます。

 魚は頭から腐ると言いますが、組織のトップが乱暴だといずれ全社的に乱暴になっていきます。それは、顧客に不満足を与え、結果として客離れが進むことになり、儲けを失うこととなります。これが、部下を罵倒する経営者のガソリンスタンドが儲からない理由となります。

 まずは、将来のビジョンを描きましょう。そして、そのビジョンを達成するような経営者像を描き、そのような経営者が使う言葉を使いましょう。感情に任せて、罵倒しても状況は悪化すれども良くはならないのです。

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