ガソリンスタンドの現場で起こる不正を防ぐコミュニケーションとは?

コラム

■ダイハツの不正行為の原因とは?

 ダイハツ工業は、車両の安全性や環境性を検査する試験で、不正な方法やデータを使っていたことを、2013年12月20日に公表しました。不正があったのは、64種類の車と3種類のエンジンで、合計174件でした。

 第三者委は開発期間を守ることが目的となり、最終工程である認証試験にしわ寄せが来て極度なプレッシャーがかかっていたと指摘。組織的な不正ではなく現場レベルが判断したとしつつ、「責められるべきは不正行為を行った現場ではなく経営幹部だ」と認定しました。

■ガソリンスタンドで起こる不正の典型例

 ガソリンスタンドは、タイヤや洗車などガソリン以外の商品である油外商品を販売して、客単価を向上させようとします。ですが、現場を預かる店長が経営陣から受ける、業績向上のプレッシャーに耐え切れず、架空売上・架空在庫の計上といった不正をするケースがあります。

 架空売上による不正とは、実際には存在しない売上を計上することで、売上高を水増しすることです。これは、監査時に売上高と現金在高が一致していないことから露呈するケースが多いと言えます。

 また、架空在庫による不正とは、実際には存在しない在庫を計上することで、利益を水増しすることです。架空在庫を計上すると、計算上は売上原価の減少につながるからですが、こちらも監査時に帳簿上の在庫と実在庫が一致していないことから露呈するケースが多いと言えます。

 これらは、「いずれ帳尻を合わせれば良い」という店長の判断に基づくケースがほとんどです。しかし、いつまでも帳尻を合わせることができず、結果として、どうしようもなくなるほどに架空の金額が大きくなってしまいます。

■不正の影響

 このような不正が現場で実施されることにより、以下の影響が考えられます。

  • 企業の信頼失墜
    架空売上や架空在庫は、企業の財務状況を偽る行為であり、発覚した場合、企業の信頼は大きく失墜します。借入を実施した金融機関、補助金や助成金を交付した行政などからの信用を失い、経営に大きな支障をきたす可能性があります。
  • 損害賠償責任
    架空売上や架空在庫は、投資家や債権者を欺く行為であり、損害賠償責任を負う可能性があります。また、税務署から追徴課税を受ける可能性もあります。
  • 法的責任
    架空売上や架空在庫は、粉飾決算などの犯罪行為に該当する可能性があり、刑事罰や罰金刑を受ける可能性があります。

 そこで、経営者としては、現場の不正を防ぎつつ、まっとうな方法で業績向上に取り組むモチベーションを高める必要があります。この場合に、以下の研究が参考になります。

■社内コミュニケーションと不正の関係について

 元東京大学教授で経営学者の松本雅彦氏は、日本の大手企業の従業員約1,500人を対象に、2002年から2004年までの3年間にわたって、社内コミュニケーションや評価の公平感、労働意欲などに関するアンケート調査を行いました。

 その結果、社内コミュニケーションの円滑化は、労働意欲の向上に寄与することが分かりました。このことは、社内コミュニケーションが停滞するとモチベーションが減退するということでもあり、結果として不正が発生しやすくなると言えます。

 これを踏まえて、今回の記事では、経営者が部下である現場の店長のレベルに応じて、とるべき行動を説明します。これは、アメリカのP.ハーシーとK.ブランチャードが提唱した「SL(Situational Leadership)理論」に基づいています。この理論を知ることで、経営陣と現場のコミュニケーションの円滑化を通じ、不正防止が期待できます。

 なお当記事の筆者は、ガソリンスタンドの現場に詳しいため、ガソリンスタンドを事例に述べますが、他の業種でも十分に活用可能ですので、最後までお付き合いください。

■店長のレベルと経営者の接し方

 SL理論では、経営者は、店長のレベルに応じて、支援的行動と指示的行動の量を変えて接することが効果的であるとしています。店長のレベルと経営陣の行動を組み合わせたSL理論の概念は、下図になります。

 上図を踏まえ、経営者がとるべき店長の習熟度に応じた具体的な行動を見ていきます。

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