ガソリンスタンドで顧客の信頼を失う販売トークとは

戦略の考え方

 「エンジンオイルが汚れているので交換した方がいいですよ」
 ガソリンスタンドでよく聞くこの台詞は、顧客の信頼を失う可能性が高い販売トークだと言えるでしょう。

 その理由は、交換するべき理由が正しくないからです。エンジンオイルは汚れたら交換しなければならないのではなく、劣化してエンジンに負担がかかるようになったら交換しなければならないという、交換するべき正しい理由を顧客に訴求する必要があります。

 顧客の信頼を得るには、信頼を失わないようにすることが大前提です。今回のコラムでは、ガソリンスタンドで、なぜ信頼を失うような販売トークがまかり通っているのかを見ていきます。

交換したばかりのエンジンオイルを点検されて

 顧客の無知につけ込んで押し売り的な商売をしていると、いずれ顧客に見抜かれます。

 Yahoo!知恵袋にこんな書き込みがありました。この書き込みをした方は、あるカー用品の量販店でエンジンオイル交換をしてもらいました。その作業は、待合室とピットを隔てる窓から眺めていたので、エンジンオイルを交換したことは確認できています。
 その後、100mほど離れたガソリンスタンドで給油をしましたが、店舗スタッフが、エンジンルームを無料で点検しますと言ってきたので、点検を依頼しました。点検後の報告で「エンジンオイルが汚れています。直ぐ交換しないと…」と言われた、という話です。

 この書き込みで店舗スタッフは、顧客の許可を得て点検していますが、別の書き込みでは、顧客が給油後にトイレに行ったのを見計らって、無断で点検をして、上記の販売トークを発したケースもあったとのことです。こちらの書き込みをした方は、前日に他店でエンジンオイル交換をしていました。

 なぜこのような販売トークがまかり通ってしまうのでしょうか。

その店の販売トークは組織文化である

 私が、ガソリンスタンドの運営会社に勤務して店長を務めていた頃、ある経営コンサルタントと知り合う機会がありました。その方はガソリンスタンド専門のコンサルタントでしたが、彼は「人『が』販売するのではなく、人『で』販売することが重要」というポリシーの元、人材育成の必要性をよく説いておられました。

 この考えに対して、私は以下の質問をしたことがあります。
 「ガソリンスタンドで働くスタッフの多くはアルバイトであり、いずれ辞めてしまう。彼らをどんなに育てても、いずれ辞めてしまうのでは意味がないのではないか」

 これに対する答えは、以下の内容でした。
 「人を育てるということは、人を育てる文化を培うことである。育てた人が辞めても、育てた文化はその店に残り続ける」

 ガソリンスタンドのスタッフが、エンジンオイルが汚れているから交換した方が良いと言うのは、代々その販売トークが受け継がれてきたからです。顧客の無知につけ込む文化は残り続けるわけです。よって、その販売トークは組織文化を表しているとも言えるでしょう。

 ガソリンスタンドの経営者・管理職としては、悪しき組織文化は変えていかなければなりませんが、どのように変えていくべきなのでしょうか。

現場の最前線を確認する

 新しいエンジンオイルは、透き通った飴色をしています。ですが、古いエンジンオイルを抜いて新しいオイルを入れ、エンジンをかけた途端、エンジンオイルはエンジン内の「煤(すす)」により汚れます。エンジン内の洗浄作用が強い高級オイルであれば、より早く汚れます。

 ですが、エンジンオイルとしての能力が劣化したわけではありません。よって、エンジンオイルを触って、その粘度(ぬるぬる度合い)が小さくなっているか否かで交換を判断することとなります。
 そして、知識・経験が浅く、粘度の判断がつかないようであれば、いつ頃交換したかを聞くのが手っ取り早く、汚れで交換の必要性を訴求させてはいけません。

 そんなの当たり前だ、というガソリンスタンドの経営者・管理職がいるかもしれませんが、現場のアルバイトスタッフは、そのことを知った上で販売に当たっているでしょうか。「知っているはず」と「知っている」は別ですし、「知っている」と「やっている」も別の話です。

 「現場」「現物」「現実」を意味する3現主義という言葉があります。組織文化を変えるには、現場でどのような現実が起こっているのかを確認する必要があります。その上で、具体的な行動を変える仕組みを作り、とってほしい行動を強化させます。そのためには、研修・勉強会や現場での実地指導が有効でしょう。

 ガソリンスタンドで顧客の信頼を失う販売トークとは、自身の無知を棚に上げ、顧客の無知につけ込み、正しくない理由を根拠に販売しようというトークです。このトークを変えるには、経営者・管理職が現場を把握し、組織文化を変えていく必要があると言えるでしょう。

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