経営における判断材料の揃え方

抜け漏れ防止の対策

 あるアパレル関係のロードサイド店の話です。今後、多店舗展開を促進するべく、新たな倉庫を借りるべきか否かという点を検討しており、弊社がご相談を受けました。

 その時点では、倉庫を持つメリットとして以下が挙げられるということでした。

 ・各店舗への物流が低コストかつ迅速になる。
 ・きめ細かい在庫管理が可能となる。

 これに対して、倉庫を持つデメリットとして以下が挙げられるということでした。

 ・倉庫の賃借料の他に維持費がかかる。
 ・追加で車両を導入する必要がある。

 このケースでは、倉庫を「持つメリットとデメリット」を洗い出し、意思決定をしようとしています。一見、メリットとデメリットの両面から検討しており、意思決定の材料として抜け漏れがないように見えますが、実は、適正ではない意思決定になる可能性が高いのです。なぜなら、倉庫を「持たないメリットとデメリット」を洗い出していないためなのです。

 この倉庫を「持たないメリットとデメリット」も洗い出すことにより、抜け漏れのない視点から、意思決定の材料を洗い出すことができます。ただし、洗い出したら、その品質も検証する必要があります。

 例えば、ロードサイド店が新聞に折込チラシを入れるべきかどうか、検討するとします。この場合は「折込チラシを入れるメリットとデメリット」「折込チラシを入れないメリットとデメリット」を洗い出します。

 これらを洗い出したら、「折込チラシを入れるメリット」と「折込チラシを入れないデメリット」、「折込チラシを入れないメリット」と「折込チラシを入れるデメリット」それぞれが表裏の関係になっているかどうか、検証します。

 当初の判断材料では、それぞれが完全に表裏になっていないので、再度検証する必要があります。それらを検証し、その意思決定の材料について品質を確認することにより、適正な意思決定ができる可能性がより高まります。

MECEの切り口

 意思決定で大切なことは、意思決定に使う「正しい材料をしっかり揃える」ことです。ここでいう「しっかり」とは抜け漏れなく、ダブりなくという意味で、この思考パターンを「MECE(ミッシーもしくはミーシー:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略)」と言います。
 
 例えば、顧客を「子ども/学生/社会人/主婦/高齢者」と切り分けた場合に、それで全ての顧客を網羅しているかというと、「無職の30代男性」はどれに分類されるのかがはっきりせず、抜け漏れ・ダブりがあると言えるでしょう。
 そこで、顧客を「男性/女性」といった切り口や「10代以下/20代~30代/40代~60代/70代以上」といった切り口で分類すれば抜け漏れ・ダブりはないと言えるでしょう。

 このように、完全に切り分けることのできるMECEの他に、完全に抜け漏れ・ダブりがないとは言い切れないが、抜け漏れ・ダブりがないと見なすMECEもあります。

 例えば、「好ましい/好ましくない」、「外部環境/内部環境」、「過去/現在/未来」、「質/量」、「事実/解釈」といったものです。
 また、マーケティングを検討する際に使われる4P、すなわち「Product:製品/Price:価格/Place:チャネル/Promotion:販売促進」や、環境分析をする際に使われる3C、すなわち「Customer:市場/Competitor:競合/Company:自社」というものもあります。

 偏った観点からの判断材料だけを揃えて、それに基づく意思決定をすることは、誤った意思決定になる可能性が高くなるのは当然のことです。偏りのない判断材料を揃えるにはこのMECEの切り口が有効であると言えるでしょう。

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