顧客の信頼をさらに損なうエンジンルーム点検5つの方法

経営の姿勢

 乗用車には運転席・助手席から前方へ伸びるボンネットがあり、これを開けるとエンジンルームを見ることができます。

 「エンジンルームは宝の山」ガソリンスタンド業界でよく使われる言葉です。エンジンルーム内には、ガソリン以外の商品である油外商品が数多くあります。具体的には、オイルやバッテリー、ウォッシャー液、ブレーキ液、ファンベルトなど挙げていくとキリがありません。

 そして、これら油外商品が全て完璧な状態になっている車両は決して多くありません。そこで、ガソリンスタンドでは、エンジンルームの点検をして、足りないものや交換が必要なものを見つけ、販売しようとします。

 点検自体は好ましいものですが、点検という名の粗探しをして押し売りをするガソリンスタンドが増加してきたことから、ガソリンスタンドが実施する点検に応じなくなるユーザーが増加しました。

 そして、当コラムで紹介する手法で何とかエンジンルームを点検しようとして、さらに顧客の信頼を損ねたガソリンスタンドが数多くあります。では、どのような手法をとって信頼をさらに損ねたのか、そして今後、エンジンルームを点検して油外商品を販売していくにはどのようにするべきかを見ていきたいと思います。

顧客の信頼を損なうエンジンルーム点検の方法1:フロアマットを洗う

 スタッフが給油中の時間を利用して、運転席足元のフロアマットを清掃するサービスを申し出ます。そして、フロアマットを取り出すために顧客に運転席から降りていただきます。

 そしてスタッフは、フロアマットを取り出す際にボンネットを開けるレバーを引きます。ボンネットの前では別のスタッフが待ち構えており、ボンネットを開けてエンジンルームを点検する、という方法です。

顧客の信頼を損なうエンジンルーム点検の方法2:前方へ回ってしまう

 給油中の顧客に「エンジンルームの点検をしますので、ボンネット開けて下さい」と声を掛けながら、スタッフは車両前方のボンネット部分へ移動して、開けるのを待ち構えます。ボンネットを開けて当然、といった雰囲気が醸成され、顧客はボンネットを開けざるを得なくなる方法です。

顧客の信頼を損なうエンジンルーム点検の方法3:車両を預かる

 スタッフは顧客から洗車を受注し、車両を預り、洗い終えた後に、ボディに残った水滴を拭き取ります。その際にボンネットを開けて、エンジンルームを点検する方法です。顧客は車を預けてしまっている以上、何も言えないケースがほとんどです。

 なお、この際に待合室でボンネットを開けたことを見ていた一部の物怖じしない顧客が、待合室から出てきて「点検しなくていい」と言うことを防止するために、待合室から見えないところで水滴を拭き取る作業を行って、ボンネットを開け、点検をするケースもあります。

顧客の信頼を損なうエンジンルーム点検の方法4:車を離れた時を狙う

 フルサービスのガソリンスタンドであれば給油中に、セルフサービスのガソリンスタンドであれば給油後に、顧客はトイレを借りたり、店内の自動販売機でジュースを買ったりするために車両を離れることがあります。この際に、スタッフが車両のボンネットを開けて点検をする方法です。

顧客の信頼を損なうエンジンルーム点検の方法5:無料でウォッシャー液を補充する

 給油中にスタッフが「無料でワイパーの水、ウォッシャー液を補充していますので、ボンネットを開けて下さい」と声を掛けて、ボンネットを開けてもらいます。この際にウォッシャー液の補充作業に留まらず、点検作業もして、不足しているものや交換が必要なものを勧める方法です。

 ここまで見てきた方法は、全てとは言いませんが、多くのガソリンスタンドが実施してきているはずです。ポイントは、これらの方法をとることは、顧客と店舗に信頼関係が構築されていれば、何の問題もない、ということです。それがないから「ずるい」「商道徳に反している」と言われます。

 今回のコラムでは、顧客の信頼を損なうエンジンルーム点検の方法として、1.マットを洗う、2.前方へ回ってしまう、3.車両を預かる、4.車を離れた時を狙う、5.無料でウォッシャー液を補充する、を挙げました。信頼がなければ出来ない方法を、信頼がないのに行うから、さらに信頼を失ってしまいます。

 綺麗事としての「お客様の安全のための点検」は、顧客に見抜かれています。まずは、顧客との関係性作りから取り組む必要があると言えるでしょう。

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