ガソリンスタンドスタッフが油外商品購入の即決を迫るデメリット

戦略の考え方

タイヤの購入を即決させる

 複数のガソリンスタンドを運営する、ある企業の経営陣が、タイヤ販売の際にその場で購入を決めていただく、即決販売という方針を打ち出しました。

 一般的に、タイヤ4本を新品に交換すると数万円の出費を伴います。それなりの出費ですから、やはり顧客は購入を検討する時間が必要だろう、という考えから、価格表や見積書を渡して、「ご検討お願いします」と顧客を帰してしまうが、このことが結果として、顧客を逃しているのではないか。このような考えから、タイヤの即決販売を全店で推し進めることとしました。

 その上で、タイヤ販売が低調な店舗には経営陣から毎日のように電話が来るようになり、なぜ売れないのか、即決販売はやっているのか、など店長が様々な追求を受けるようになりました。

 結果として、この企業のタイヤ販売は大きく伸びることもなく、経営陣の管理に嫌気がさした店長クラスの退職も相次いでしまいました。

セリング志向とマーケティング志向

 即決販売という考え方は、セリング志向に基づく考え方であり、マーケティング志向に基づく考え方の対極にあります。
 セリング志向の焦点は、売り込み方、今日の糧、戦術、です。これに対して、マーケティング志向の焦点は、売れる仕組み、明日の糧、戦略、です。

 セリング志向が危ういのは、売り込み方という技術論に走りがちになることであり、ともすると、口から出任せのセールストーク、特に「このまま走るとタイヤが破裂しますよ」などといった過剰な脅し文句による販売がなされてしまうことです。

 さらに、今日の糧を得ることがセリング志向では重視しますので、顧客との関係性などは考慮せず、今売れればそれでいい、といった場当たり的な対応に陥りがちです。

クーリング・オフ制度の対象外であるからこそ

 法律に定められた消費者を守る特別な制度として、クーリング・オフ制度があります。これは、消費者が訪問販売などの不意打ち的なアプローチで購買契約したり、マルチ商法などの複雑でリスクが高い取引で契約したりした場合に、頭を冷やし冷静に考える機会を与える制度であり、一定期間であれば無条件で、一方的に契約を解除できる制度です。

 この制度は、ガソリンスタンドの店頭販売には適用されないからこそ、顧客が「騙された」と感じさせない商売の仕方が重要となります。前述のように、即決販売の推奨は、場当たり的な対応ですから、顧客がタイヤ交換をして、帰宅後に何となく「騙された」と感じる可能性が高まります。
 ですが、クーリング・オフ制度も使えないわけで、泣き寝入りをし、結果として客離れが進む可能性もあります。

 ガソリンスタンドスタッフが油外商品購入の即決を迫るデメリットは、場当たり的な対応により、顧客不満足度が増大する可能性が高まる、という点が挙げられると考えます。

 では、どのようにして油外商品を販売していけば良いのでしょうか。

お勧めした後のアフターフォロー

 ダイレクトメールの送付など、商品を買って下さった顧客に対するアフターフォローというものは、よく見かけます。
 これに対して、商品販売のアプローチはしたものの、その場では買っていただけなかった顧客に対するアフターフォローは、あまり見かけません。

 これを行うには、誰が、いつ、誰に、どんなアプローチをしたのか、という情報を共有するという組織的対応、つまり、マーケティング志向の焦点である「戦略」が必要となります。

 ガソリンスタンドは顧客が車で来店するケースがほとんどなので、ナンバープレートの情報とアプローチした情報を紐付けることにより、アプローチ後のアフターフォローが可能となります。詳しくは以下のコラムをご参考にして下さい。
 【参考コラム】儲かるロードサイド店の顧客管理

顧客管理に関する参考コラム

 ■食品を扱うロードサイド店舗が補助金でPOSレジを導入するべき
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 ■儲かるガソリンスタンドが給油口にステッカーを貼らない理由

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