表出しないクレームを認識するために飲食店がとるべき行動

経営の姿勢

金額設定に疑問の残る飲食店のメニュー

 ある飲食店をご支援する機会に恵まれました。どちらかというと高級志向の和食店です。支援前に状況を確かめておこうと顧客を装い、食事に伺いました。

 メニューを開き、飲み物のページを見ると、日本酒Aという銘柄がありました。そして冷酒のグループにも同じAという銘柄がありました。しかし、その価格設定は疑問を抱かせるものでした。

 【お飲み物】日本酒1合 辛口 銘柄A 400円
 【冷  酒】280㎖徳利 辛口 銘柄A 800円

 1合は180㎖です。よって【お飲み物】のコーナーに記載している日本酒Aは180㎖で400円、【冷酒】のコーナーに記載している日本酒Aは280㎖で800円なわけです。

 180㎖400円を基準にすれば、280㎖は622円超となるはずですし、280㎖800円を基準にすれば180㎖は514円超となるはずです。

 量に着目するならば、180㎖で400円のものを800円で売るならば360㎖となるはずですし、280㎖で800円のものを400円で売るならば140㎖で提供しなければ辻褄が合いません。

 そして、重要なことは、一事が万事であり、矛盾しているのはメニューだけではない、ということです。チラシの紙質にせよ、のぼりの内容にせよ、店舗スタッフの服装にせよ、様々な面で店舗コンセプトと辻褄が合っていないのです。

日本人はサイレントクレーマーになりやすい

 翌日、その飲食店の経営者と面談した際に、上記の点を指摘し「きっと貴店をご利用なさったお客様は疑問に思っているはずですよ」と述べたところ、その経営者からは「そうですかねぇ、今までお客様からそのようなことを言われたことはありませんけど」という発言がありました。

 仕事をする上で、私たちはサイレントクレーマーの存在を意識しておく必要性があります。以下の【参考記事】でも取り上げていますが、店舗に不満や疑問を感じても、多くの顧客はそれを言わずに立ち去ります。特に、和を尊ぶ文化のある日本人にその行動は顕著だといいます。

 サイレントクレーマーは、抱いた不満や疑問を店舗に言わないだけで、抱いたそれらが解消したわけではありませんから、家族や友人知人に話します。ひどいケースになるとネット上で話を大きくして書いたりもします。こうなると誹謗中傷の類いとなります。

 「顧客から言われないから、問題はないはず」という考え方は、サイレントクレーマーの存在を無視していると言えるでしょう。
 【参考記事】責任者がクレームを受け必要以上に振り回されてしまう残念な理由

サイレントなクレームを把握するために

 「言ってくれなきゃ分からない」と考える方もいると思いますが、顧客はその飲食店を儲けさせよう、良くしよう、とは思っていません。ですから言う必要がないのです。よって下記【参考記事】にあるように、表出していただく理由を与える必要があります。
 【参考記事】なぜ「お客様の声」が必要なのか

 また、言われなくても分かるように取り組む必要もあります。そのためには、現場のアンテナの感度を高くする必要があります。経営者は、定期的に店舗スタッフから、顧客に不快な思いをさせたり、疑問が残るような芽が出ていたりしていないか考えさせ、話を聞くとよいでしょう。

 さらに、自身のみならず、店舗スタッフにも他店での外食を行ってもらい、顧客目線を養うことも必要です。この場合、一定の金額は会社で負担し、複数の人数で飲食してもらいます。1人の視点よりも多くの視点があったほうが「気付き」は大きくなりますし、店舗スタッフが家族や友人に外食を振る舞うことができるのは、ちょっと誇らしいものです。
 なお、目的は顧客目線を養うことですから、この場合の「他店」は競合でなくても構いません。

 サイレントなクレームも数が重なれば、売上に大きな影響を及ぼします。悪い芽を早い段階で摘むために、悪い芽に気付く取り組みが重要です。

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