経営革新計画の承認を取得した飲食店の事例⑥

経営革新計画

 経営革新計画の承認制度は、新規事業の計画(経営革新計画)を都道府県に審査していただき、一定レベルの計画であると認められると、都道府県知事の名前が入った承認書がいただけます。弊社ではこれを補助金応募やマスコミ対策で活用することをお勧めしています。

 今回のコラムは、その経営革新計画の承認を取得した居酒屋の事例です。女将さんとパートタイマー数名で運営するこぢんまりとしたその店舗は、新型コロナウイルスの影響で客足が落ちてしまいました。そこで、何とか業績を回復させたいという想いで経営革新計画の作成に取り組むこととし、弊社がそのご支援を行った結果、承認取得に至りました。

 以下は経営革新計画の構成ですが、今回のコラムでは下図赤枠部分「新規事業の内容」を記載するにあたり、新規事業を立案する際の手法について述べていきます。

1.新規事業の立案方法

 ここまでのコラムで見てきた自店の内部・外部環境や、ビジョン、それを達成するための課題を踏まえて新規事業を立案するわけですが、なかなか新規事業のアイデアが浮かばないケースが多いのも事実です。

 弊社では、いくつかの手法で新規事業の立案をサポートしていますが、今回は「成長ベクトル」の活用という手法を述べていきます。

 これは、米国の経営学者であるイゴール・アンゾフが、企業が成長するための方向性を示す戦略モデルとして提唱したものです。縦軸に製品・サービスを、横軸に対象とする顧客層をとり、それぞれを既存・新規に切り分けた上で組み合わせると下図のように4つの戦略があるとするものです。

(1)既存事業を検討する

 新規事業を立案する際にまず、現在自店はどのような「A:市場浸透戦略」を採用しているのかを検討します。つまり、現在、どのような顧客に何を提供しているかを検討します。

 多様な顧客が来店しているのであれば、同店がターゲットとしている主要顧客は誰なのか、また、多様なメニューを提供しているのであれば、それを通じてどのような価値を提供しているのかを検討します。

 既存事業と違うから新規事業なわけですから、既存事業が不明のままでは、新規事業の手がかりが見つからないということになります。ここに市場浸透戦略を明確にする意義があります。

 とはいうものの、この部分が明確になっていないケースは少なくなく、これを明確にしただけで業績が向上したという事例もあります。そして、この市場浸透戦略を踏まえて新規事業を検討していきます。

(2)新製品・新サービスを検討する

 もし、現在ご来店下さっている既存の顧客層に、新規の製品・サービスを提供していくとしたら、どのような製品・サービスが考えられるのかを検討します。これが「B:新製品開発戦略」へ進む方向です。

 飲食店であれば新メニューの開発が考えられますが、他店が安易に追随できるメニューであれば新規事業としての有効性は高くありません。よって、安易に追随できない新メニューや、新サービスの方向で検討されることをお勧めしています。

 同店の場合は、代表者の出身地である●●県の郷土料理という新メニューを提供する方向で一度は落ち着きかけましたが、それだけでは差別的優位性が高くないことから、介護系サービスの提供も行うこととしました。

(3)新規顧客を検討する

 もし、新規の顧客に現在提供している既存の製品・サービスを提供していくとしたら、どのような顧客が想定できるのかを検討します。これが「C:新市場開拓戦略」へ進む方向です。

 これまでファミリー層をターゲットにしてきた飲食店がお一人様需要を開拓するといったケースや、これまで女性をターゲットにしてきたエステサロンが男性市場を開拓するといったケースが、当戦略の事例として分かりやすいケースと言えるでしょう。

 なお、「成長ベクトル」の「D:多角化戦略」は既存事業と関連のない事業です。いきなり多角化戦略を検討するのではなく、まずは新製品開発・新市場開拓戦略で新規事業の立案を図り、その延長線上で多角化戦略を見出すことができれば採用する、といったスタンスで良いのではないでしょうか。

 このようにして、新規事業を立案しましたが、当項目よりも前の項目の書き方については以下のリンクを参考にして下さい。次回は立案した新規事業を計画書にどのように記載したかを見ていきます。

 経営革新計画の承認を取得した飲食店の事例⑤

 経営革新計画の承認を取得した飲食店の事例④

 経営革新計画の承認を取得した飲食店の事例③

 経営革新計画の承認を取得した飲食店の事例②

 経営革新計画の承認を取得した飲食店の事例①

2.経営革新計画の承認取得をサポートします

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