客数の減少に悩むガソリンスタンドの経営者がとるべき戦略

減り続ける商圏人口

 ある地方で事業展開をするガソリンスタンドの経営者から、「客数の減少が止まらず、ガソリンの減販に悩んでいます。なにか上手く増販に繋がることはありませんか」という質問がありました。

 この手の質問は意外と多いのですが、商圏人口が減少する中、販売量を拡大しようとするのであれば、商圏を拡大して商圏人口を維持する必要があります。ですが、商圏が広くなるということは、遠方の顧客への対応が必要になってくるということですから、例えば遠方へ配達をしたり、遠方まで告知活動をしたりなど、限られた店舗スタッフの負担は相応に大きくなってきます。

 また、商圏を広げた結果、競合も増える可能性もあり、どの店舗で買っても品質に差異のないガソリンのような商品は、差別的優位性を構築するために、価格競争に陥りがちになります。

ある新聞店の取組み

 商圏人口の減少に苦しむ業界の1つに新聞販売店があります。人口減少で新聞の定期購読契約の解約が増加し、さらにインターネットでニュース情報などが取得できることも、購読者数の減少に拍車をかけています。

 そのような状況の中、弊社がご支援している新聞販売店は、既存顧客に対して、便利屋サービスや家電販売事業を展開し、客単価を向上させ、売上を確保しています。この取組みのポイントは、新聞を定期購読する客数を無理に増やそうとしていない、ということです。人口減は抗えない流れですから、客数ではなく客単価を向上させるという考え方です。
 
 もっとも、客数の減少を放っておいてはいずれ、ジリ貧になりますから、新聞以外の事業を別途立ち上げて、展開していることも申し添えておきます。

アンゾフの成長ベクトル

 冒頭のガソリンスタンドも、客数より客単価を向上させる方向性が必要なのかもしれません。つまり、既存顧客の数はそのままで、商品単価や買上点数を向上させていくという方向性です。

 下図は、アメリカの経営学者イゴール・アンゾフが提唱したアンゾフの成長ベクトルです。

 縦軸に市場(顧客)を、横軸に製品・サービスをとり、それぞれを既存・新規に切り分けた上で組み合わせると4つの象限が現れます。以下、各象限の説明です。

 1.市場浸透戦略:既存の製品・サービスを、既存の顧客に提供していく戦略
 2.新市場開拓戦略:既存の製品・サービスを、新規の顧客に提供していく戦略
 3.新製品開発戦略:新規の製品・サービスを、既存の顧客に提供していく戦略
 4.多角化戦略:新規の製品・サービスを、新規の顧客に提供していく戦略

 ガソリンスタンド業界では、ガソリンや軽油といった油以外の商品を油外商品と呼びますが、この油外商品は、車に関連した油外商品と、それに関連しない油外商品があります。多くのガソリンスタンド事業者は、車に関連した油外商品だけを売ろうと考えますが、買上点数を増加させ、客単価の向上を仕組むためには、車に関連しない油外商品にも目を向けていく必要があるのではないでしょうか。

 マクドナルドやドトールなどを併設したガソリンスタンドを目にすることもありますが、この取組みは、車に関連しない油外商品の販売に関する取組みです。客数の減少に悩むガソリンスタンドの経営者がとるべき戦略は、既存の顧客に対して、車に関連しない油外商品を含め、あらゆる油外商品を販売していく、上記アンゾフの成長ベクトルでいうところの新製品開発戦略、と言えるのではないでしょうか。
 なお、アンゾフは「新製品開発戦略」と名付けましたが、小売業においては「新商品投入戦略」と呼び変えても良いでしょう。

客単価向上に関する参考コラム

 ■買上点数の増加による客単価向上策
 ■多くの客数が見込めない店舗の客単価向上策
 ■顧客心理を活用した販売による客単価向上策

メルマガ会員様募集中

 メルマガ会員様には、リアル店舗の現場経験20年以上、コンサルティング歴10年以上【通算30年以上のノウハウ】を凝縮した【未公開のコラム】や、当サイトに掲載したコラムの【解説動画URL】を優先的に配信しています。
登録はこちらから
↓↓↓

お探しのページが見つかりません。

電子書籍のご案内

 1年で70人のアルバイトに辞められたガソリンスタンド店長が人材に全く困らなくなった理由:育成編~人材が育つ職場と人材に見放される職場の境界線~
2020年3月15日発行 定価1,055円

タイトルとURLをコピーしました