目的、目標、手段の違い

目的、目標、手段とは

 前回のコラムまで9回にわたって、小規模事業者持続化補助金に採択されるためのコラムを書いてきました。補助金に採択されるために、事業者様は、提出する計画書作成にいそしむわけですが、最初は、補助金の獲得が経営をよくする「手段」だったのが、計画書作成にいそしむ余り、補助金の獲得が「目的」となってしまうケースを多々見受けます。

 では、「目的」「目標」「手段」の違いは何なのでしょう?

 私は、青森県青森市出身なので、お盆期間には、現在住んでいる埼玉県川越市から青森まで高速道路(東北自動車道)を使ってお墓参りに伺います。
 その距離、片道800㎞。道中は渋滞もするので、時間としては12時間ほどかかります。この話をすると、「なぜ大宮から東北新幹線で行かないのか」と聞かれますが、道中のサービスエリアでご当地グルメを堪能しながら行くのが楽しいのです。

 埼玉から東北自動車道で青森に向かうと、群馬、栃木、福島、宮城、岩手、秋田を経て、青森に到着します。それぞれのサービスエリアには、その土地でしか食べることのできないものがたくさん売られています。


 新幹線は時間が短いですし、自分が運転するわけではないので楽なのですが、グルメは、出発地で買う駅弁と車内販売のみですから、高速道路での帰省に比べると、さほど楽しむことはできません。

 よって、自家用車で一路青森へ向かうのですが、道中は長いですから、途中で車が故障してしまっては困ります。出発前日までに、自家用車の整備はしっかり済ませておきます。また、同乗する家族のために乗り物酔いの薬を準備します。朝早く出発しますから、前日は早めに就寝します。

 この場合、目的地は青森です。
 そして、東北自動車道で向かうのであれば、群馬という目標地点、栃木と言う目標地点、福島という目標地点、宮城という目標地点、岩手という目標地点、秋田という目標地点、それぞれに到達する必要があります。
 また、それぞれの目標地点に安全かつ安心に到達するために、整備をする、薬を準備する、十分な睡眠をとる、といった手段を講じることとなります。

補助金獲得が目的になってしまうと?

 補助金を獲得することは、経営を良くする手段ですが、これが目的になってしまうと、補助金を獲得しても経営が大きく変わることが少ない印象があります。なぜなら、補助金獲得がゴールになっており、そこで終わりだからです。

 補助金獲得を手段と捉えると、1年目の目標、2年目の目標、3年目の目標・・・といった形で、獲得した補助金を使って達成する目標が定まります。そして、それらの目標をクリアした先に本当に達成したい経営目的を据えることとなります。これが本当の補助金の使い方だと思います。

目的、目標、手段を混同してしまった店長

 ある店長の話です。来店客の客単価を上げるべく、従業者全員に1日100回のお客様に対する声掛けを課しました。そして、従業者が退店する際に、自己申告させていましたが、ある日こんなことがありました。
 従業者Aが退店時に、店長へ本日の声掛け数を「80回」と報告しました。店長は、100回に達していないAを叱責しました。
 次に従業者Bが退店時に、店長へ本日の声掛け数を「120回」と報告しました。店長は、100回を超えたBを賞賛しました。

 しかし、閉店時に個人別売上を確認すると、声掛け数80の従業者Aは売上が50,000円、声掛け数120の従業者Bは売上が3,000円だったことが分かりました。少ない声掛け数で大きな成果を出したAは叱責され、たくさん声掛けをしたものの大した成果を出せなかったBは賞賛されたのです。これを後で知った従業者Aは、辞表を提出しました。

 声掛け数を増やすことは売上高○○円を達成する手段であり、目標は売上高○○円です。その先には、店舗として達成したい経営目的があるはずです。これらを混同すると上記のようなことになってしまいかねません。

 短期的視点に陥ってしまうと、手段が目標や目的にすり替わってしまいやすくなります。経営者・店長として短期的視点と中長期視点のバランスを常に意識しておきたいところです。

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