ショッピングセンターが近くに出店しても負けない3つのポイント

戦略の考え方

 商店主にとって、近隣にショッピングセンターが新規にオープンするという事態は、当然避けたいわけです。宮崎県宮崎市中心部の商店主で構成される「まちづくり協議会」の元会長もショッピングセンターの出店に反対し続けましたが、最終的には出店が認められることとなってしまいました。

 弊社がご支援している、婦人服メインの雑貨店のそばにも2008年に国内有数規模のショッピングセンターがオープンしました。これにより、多くの顧客が流出することとなりましたが、その後の取組みにより、右肩下がりの売上が下げ止まり、前年の売上高を超えるようになりました。今回のコラムでは、この事例を通じ、ショッピングセンターが近くに出店しても負けないポイントを見ていきます。

ショッピングセンターが近くに出店しても負けないポイント1:新規顧客を開拓する

 同店は、ショッピングセンターのオープンにより、顧客が流出し、残ったのは主に古くから同店を利用する高齢の顧客層となりました。ですが、この顧客層も体力面や健康面でいずれは来店できなくなるのは自明の理でした。

 そこで、来店を待つのではなく、来店したくてもできない顧客層に対して、売りに行くことにしました。ターゲットは介護施設の入居者です。また、人手不足の中、その介護施設で勤務する職員の買い物時間を短縮するために、予め注文を承り、出張販売当日にお届けするサービスや、地域住民にこの出張販売の告知をすることにより、当該介護施設の見込み客を得ていくという提案もすることとしました。

 このようにして、来店する顧客だけでなく、来店できない顧客への対応を考え、それに付随するニーズに応えていくことにより、新規顧客の開拓を実施しました。ただし、自店の力だけでは限界がありますので、次に示す取り組みを同時に進行させていきました。

ショッピングセンターが近くに出店しても負けないポイント2:行政の支援策を活用する

 行政の中小企業支援策のひとつに「経営革新計画の承認制度」があります。これは、新規事業の計画を都道府県が審査し、一定の完成度が認められれば、都道府県知事の承認が受けられるというものです。

 同店は、介護施設への出張販売をテーマに経営革新計画を作成し、県知事から承認を受けました。そして、計画の内容を1枚の紙にまとめ、承認書のコピーとともに新聞社10社にFAXを打ちました。ある新聞社がこれに目を留め、新聞記事にした結果、大きな広告効果を得ることができました。

 さらには、販売促進費の3分の2、原則上限50万円を補助する小規模事業者持続化補助金を活用して、次の取組みを行いました。

ショッピングセンターが近くに出店しても負けないポイント3:本質的な課題から目を逸らさない

 介護施設への出張販売は新聞に取り上げられるようになって、俄然忙しくなりました。ですが、同店の本質的な課題は、店頭の活性化です。よって、出張販売で得た収益でポイントカードシステムを導入し、上得意客の氏名、住所、電話番号の他、購買履歴を把握することにしました。

 一般に、店舗の売上の8割は2割の上得意客によってもたらされると言われます。この2割の顧客が誰であるかをポイントカードシステムで把握した同店は、小規模事業者持続化補助金を使って、ダイレクトメールを発送しました。

 これにより、上得意客の来店が促進され、同店の売上高は12年ぶりに前年を超えました。現在ご高齢の上得意客が介護施設に入居しても、同店の出張販売で買い物ができます。そして、上得意客が入れ替わっても、定期的なダイレクトメールの送信で流出を防ぎ、来店頻度を高めることが可能となりました。

 今回のコラムでは、ショッピングセンターが近くに出店しても負けないポイントとして、1.新規顧客を開拓する、2.行政の支援策を活用する、3.本質的な課題から目を逸らさない、を挙げました。近隣にショッピングセンターが進出して苦戦している事業者の参考になれば幸いです。

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