新規事業のアイデア発想が難しい2つの理由

戦略の考え方

 「誰に」「何を」「どのように」という事業領域を明確にし、このどれかを変更することにより、新規事業のアイデア発想が可能になります。
 つまり、新規事業のアイデア発想が難しい理由は、1.事業領域が明確でないこと、2.明確になっていてもどれをどのように変更すればよいか判断できないことであると言えるでしょう。

 今回のコラムでは、ある建具店からの新規事業に関するご相談を通じて、そのアイデアをどのように発想するべきかを見ていきます。

ある建具店の事業領域

 ある建具店から、売上減少の中、何か新規事業を行わなければならないと思っているが、なかなかそのアイデアが出ない、という趣旨のご相談をいただきました。この建具店は、建具の加工、設置、販売を手掛けています。

 前述の「誰に」「何を」「どのように」の3点セットを事業領域と呼びますが、このうち「誰に」は顧客ターゲットを、「何を」は顧客ニーズを、「どのように」は差別的優位性を示すこととなります。

 ヒアリングに基づく当該建具店の現状における事業領域は、「誰に」:地域住民に、「何を」:建具を、「どのように」:長年の取引による関係性に基づいて、提供していることが分かりました。
 よって、この事業領域のどれかを変更すれば、新規事業のアイデアが発想できることとなりますが、次に事業領域のどれをどう変更すれば有効な施策となり得るかを検討します。

外部環境の変化を検討する

 おでんは寒いときに売れますし、アイスクリームは暑いときに売れるように、事業は外部環境に適応したものでなければ、その継続は困難になります。

 この建具店の外部環境を見ていった結果、地域住民の高齢化や土地価格の下落により、介護施設が増加しつつあることが分かりました。よって、この外部環境に適応するために「誰に」の部分を地域住民から介護施設に変えることが有効と判断できました。

 次に「何を」の変更を検討しましたが、既存の介護施設には既に建具は入っているわけで、新たに建具は提供できませんし、新規に建設される介護施設に建具の納入を目的とした関わりを持つことは容易ではないことが見えてきました。よって「何を」の部分は、変更する必要があることが分かります。

 そして、「どのように」の変更を検討しましたが、当該建具店は、既存の介護施設と新規に建設される介護施設とも、長年にわたる関係性は構築されていないわけで、この部分も変更する必要があることが分かります。

 つまり、外部環境の変化を検討することにより、事業領域のどれをどう変えるべきか、また、変える必要性の有無が判断できることとなります。
 そして、「何を」「どのように」を変えていくために、次に示すように内部環境を検討することとなります。

先代の散り際を現在の事業に活かす

 ヒアリングの結果、この建具店の先代社長は、80代でお亡くなりになるまで認知症を発症していなかったことが分かりました。その理由は、現在の経営陣が、先代の認知症を防止するためには手先を動かすことが重要という認識を持っており、先代にはご高齢になっても、職場に出ていただき、様々な手作業を手伝ってもらって、認知症の防止に努めていたとのことでした。

 このエピソードから、「何を」を建具ではなく、認知症を防止することへ、そして「どのように」を長年の取引による関係性ではなく、認知症防止のためのイベントの開催に基づいて、へ変更することが有効だと判断できます。

 「誰に」:地域住民に→介護施設に
 「何を」:建具を→認知症を防止することを
 「どのように」:長年の取引による関係性に基づいて→認知症防止のためのイベントの開催に基づいて

 介護施設は、入居者の満足度を高めるために様々なイベントを行います。よって、上記の事業領域に基づき、ご高齢の方でも出来る簡単な手作業を盛り込んだイベントの企画書をダイレクトメールで送付し、その後のフォローを行うことにより、受注の可能性が高まります。
 特に、自社の先代が身をもって教えてくれた、認知症防止の取組みは自社でなければ提供できません。ここに差別的優位性があります。

 新規事業のアイデアを発想することが難しい2つの理由として、1.事業領域が明確でないこと、2.明確になっていてもどれをどのように変更すればよいか判断できないことから、外部環境と内部環境の変化に着目した新規事業のアイデア発想について見てきました。事業領域と環境分析に基づいて難局打開の糸口としていただければと思います。

参考コラム

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