儲からないガソリンスタンドが生き残りを図るための3つの視点

戦略の考え方

 儲からないガソリンスタンドによく見られる特徴は、戦略・戦術を構築する視点にヌケモレがあることです。例えば、メリットを考える際は、デメリットも考える必要があります。内部環境を考える際は、外部環境も考える必要があります。どれかが抜け落ちている視点で戦略・戦術を検討しても有効なものにはなりにくいわけです。

 ガソリンスタンドは、洗車やタイヤといったガソリン以外の商品(油外商品)を増販していかないと収益の確保は厳しい状況ですが、油外商品の販売を考える際に、単に自社が何を行うべきか、ということだけを考えていては、視点にヌケモレがあると言えるでしょう。

 自社 (Company) ・競合 (Competitor)・市場/顧客(Customer)の3つの視点から環境を分析する3C分析の活用によりヌケモレを防止することが可能となります。

 今回のコラムでは、ある相談を通じて、戦略・戦術構築の手順や考え方について見ていきます。

的を外した取組みになっていないか

 あるガソリンスタンドに勤務する店長と思しき方が発した以下のご相談に触れる機会がありました。

 「最近、油外商品の粗利が伸びず悩んでおります。接客時の言葉遣いはメンバー全員に改善させ、以前に比べ声も大きくなり、活気が出てきました。今も洗車半額の日、オイル・タイヤの日など様々なキャンペーンをやっておりますが、イマイチ数字が上がりません。接客や点検に関してはお客様の立場になって考え、話すようにしております。」

 この相談内容から伺えるのは、自社の視点からのみ販売を考えている、ということです。競合 (Competitor)がどのように取組んでいるのかを把握し、競合よりも優れた取組みを行う必要があります。

 以前よりスタッフの声が大きく活気が出てきたという趣旨の内容がありますが、競合にもっと活気があったら、自店には改善の余地があるでしょう。洗車半額の日を実施しているとのことですが、競合が洗車無料の日を実施していたら効果は限定的です。

競合の4つの戦略を把握する

 よって、競合の取組みを把握する必要がありますが、この把握するべき取組みもヌケモレのある視点で捉えていては有効な打ち手は見出しにくくなります。そこで、製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販売促進(Promotion)の4つの視点からなるマーケティングの4Pを活用することが有効でしょう。

 製品(Product)の視点では、競合が提供している油外商品の特徴を把握します。
 価格(Price)の視点では、油外商品の価格そのものの他に、割引制度の有無、その内容などを把握します。
 流通(Place)の視点では、どこで油外商品を販売しているか、という観点から、引き取りや納車のサービスがあるかどうかを確認します。
 販売促進(Promotion)の視点では、顧客を自店に引き寄せるプル戦略として何を実施しているか、プル戦略で自店に引き寄せた顧客に販売していくプッシュ戦略として何を実施しているか、を把握します。

 このように競合 (Competitor)の戦略を把握した上で、顧客(Customer)動向を把握します。これは、いくら競合より優れた戦略を構築しても、顧客に価値を提供出来なければ意味がないからです。

顧客ニーズの仮説を立てる

 まず、スタッフ全員で、顧客がなぜ油外商品を買わないのかを検討します。この際に有効なのがブレーンストーミングというアイデア出しの手法です。

 この場合、出席メンバーが順番に、顧客が油外商品を買わない理由を思いつくままに述べていきます。その際のルールとして、批判厳禁、自由奔放、質より量、結合改善があります。
 つまり、他人の発言の批判をしてはいけません。また、あり得ないと思われる理由も自由奔放に発言させます。さらに、発言は内容の質よりも何個挙げられたかという量を重視します。そして、他人の発言に自身の考えを結合し、改善させた発言を歓迎します。

 発言内容は記録をとり、それをグルーピングします。この手法で、ある程度、油外商品の販売不振理由が仮説として見えてきたら、その裏付けをとるために顧客アンケートを実施することとなります。これにより、顧客ニーズが把握出来たら、競合と比較して差別的優位性があり、顧客ニーズを満たせる取組みを行うことで、油外商品が売れる可能性を高めていきます。

 儲からないガソリンスタンドが生き残りを図るための3つの視点として、自社 (Company) ・競合 (Competitor)・市場/顧客(Customer)の視点から戦略を検討することを述べました。
 そして、競合 (Competitor)の分析の視点として、製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販売促進(Promotion)というマーケティングの4Pを、市場/顧客(Customer)の分析手法としてブレーンストーミングの活用を述べました。

 このようなヌケモレのない視点から戦略を構築し、生き残るガソリンスタンドになっていただければと思います。

油外商品販売の参考コラム

 ■ガソリンスタンドで顧客データを活用した販売時に陥りやすい罠
 ■顧客満足度をアンケートで測定する前に検討するべきこと
 ■ガソリンスタンドの顧客を理解して油外収益を向上させるコツ

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